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産業用冷凍機はCO2とアンモニアどちらに軍配があがるか

コンプレッサーの大型化、数々のエネルギー効率向上技術の開発により、CO2技術はここ数年で産業用冷凍機に大きく進出してきた。一方で、同分野は従来アンモニアの領域と考えられてきた。

 

Isentra社のマネージングディレクター、ダニエル・クラーク氏は、CO2は産業用冷凍機においてアンモニアよりもいくつかの重要な利点があると考え、トランスクリティカル(TC)CO2システムは、HFCシステムよりもはるかに深く従来のアンモニアの領域に重なっていくと予測する。

アンモニアの優れた点、課題点

イギリスを拠点とするIsentra社 は、CO2ヒートポンプや冷凍装置の製造を担っている。LinkedInに掲載された記事内で、クラーク氏はアンモニア冷凍を強く支持し、将来的にアンモニアソリューションを構築することは否定しないと語る。その上で、アンモニア最大の課題は毒性と可燃性にあると指摘。

 

イギリスでは、アンモニアシステムはDSEAR(Dangerous Substances & Explosive Atmosphere Regulations)に準拠しなければならない。DSEARをはじめとする世界中の同様の規制に準拠しなければならないということは、アンモニア設備の初期コスト、ライフサイクルコストに大きな影響を与えるとクラーク氏は主張。

 

また、アンモニアシステムの運用責任は、エンドユーザーに安全衛生システムと手順の管理という「負担」を強いることになるとも話す。

 

また、低充填アンモニアシステムについて、クラーク氏は優れた設計であれば非常に高い効率を発揮するだろうと考える一方で、低充填アンモニアチラーは、特に寒冷な北部地域において、TCCO2システムのエネルギー効率には勝てないだろうと推測している。

 

TCCO2システムは、HFCシステムよりもはるかに深く従来のアンモニア領域にオーバーラップするソリューションだと言えるでしょう。

Isentra社 マネージングディレクター ダニエル・クラーク氏

CO2は覇権を握れるか

では、CO2は今後の産業用アプリケーションの最良の選択肢なのかという問いに対して、クラーク氏はそこまで単純な話ではないと語る。完璧な冷媒というものは、現状存在しないからだ。CO2の最大の弱点は、高い外気温での冷却能力である。CO2システムが25℃前後の環境下で臨界点を超えてしまうと、能力が大きく低下する。

 

このCO2冷凍効率の低下を改善するために、近年多くの研究開発が行われている。クラーク氏が最も信頼しているのは、低圧レシーバーから出るフラッシュガスの圧縮率を下げる、パラレルコンプレッションのソリューションだと話す。

 

「TCCO2は、HFC冷媒が産業用冷凍機器の小規模な分野で使用されていたスペースにうまく収まり、小規模なアンモニアシステムが使用されていた中規模のアプリケーションでより多く使用されるようになるでしょう。よりシンプルで効率的な直接冷却を維持しながら高充填のアプリケーションを実現するための選択肢として、ますます一般的な市場展開となると予想できます」(クラーク氏)

 

一方で、少なくとも当面は、CO2システムの臨界点を超える部分はレシプロピストンコンプレッサーに、システム選択肢は限定されるとクラーク氏は言う。

 

スクリュー・コンプレッサーや多気筒レシプロ・コンプレッサーが提供する膨大な掃気量と組み合わせることで、アンモニアが究極の能力を発揮する。そのため、アンモニアは産業用冷凍分野の高容量領域で優位に立つことができるのは、しばらく先の話になるだろう。現段階において、CO2とアンモニアの両方に改善の余地があるとクラーク氏は結論づける。

参考

Will CO2 or Ammonia Win the Battle for Industrial Refrigeration?

原著者:タイン・スタウスホルム

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