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北米

Walmart社、株主総会で早急なHFC対策を迫られる

米アーカンソー州に本社を置く多国籍小売企業、Walmart社は2021年6月2日に株主総会を開催。同会にて、同社から排出される冷媒、特にHFCの削減計画を加速させることを求める議案に賛成した投資家が、5.5%と大きな割合を占めた。この投票結果は、環境調査庁(EIA)のブログでも報告された。

今後の削減計画に対する圧力となる投票結果

EIAと米国の非政府組織Green Americaは、ロードアイランド州の会計責任者であるセス・マガジナー氏が提出したこの提案に賛成するよう、株主に要請する準備書面を発行していた。冷媒とその気候変動への影響に関する議案を、Walmart社の株主が投票するのは今回が初めてのことである。

 

EIAによると、来年の株主総会で再度審議されるためには、初年度の決議が5%の支持を満たす必要がある。ゆえに、今回の「5.5%」の投票結果は、非常に大きな結果と言える。EIAは、今回の結果はWalmart社に対して、大きな圧力をかけることとなると説明。なお、本投票に合わせ、Walmart社は投資家に、決議案に反対票を投じるようアドバイスしていた事実を付け加えた。

 

本決議案における提案内容は、以下の通りである。

 

株主はWalmart社に対し、合理的なコストで専有情報を省いた報告書を発行し、同社事業から排出される冷媒を削減する計画の規模やペース、厳格さを高めること。それにより、気候変動への影響をどのように抑制するか、またその計画を説明するよう要請する。

 

2020年9月、ウォルマートは2040年までに「低負荷冷媒」に移行することを発表したが、そのスケジュールはEIAをはじめとするステークホルダーから、厳しく指摘されていた。

 

Green Americaの気候キャンペーン・ディレクター、ベス・ポーター氏は、この株主投票は、Walmart社の掲げる2040年までの目標が、世界および国内の政策とかけ離れていることを懸念する投資家の数が増えていることを示す結果だとする。

 

「本決議は来年の再提案に向けて十分な支持を得ており、それまでの間、投資家や消費者はWalmart社に対し、より迅速なスケジュールでHFC排出量を削減するよう圧力をかけ続けるでしょう」(ポーター氏)

 

さらに、EIAのシニア・ポリシー・アナリスト、クリスティーナ・スター氏は続ける。

 

「今回の投票は、投資家がウォルマートに対し、同社の最大の直接的な気候変動排出源に対処するよう求める上で、極めて重要なステップとなります。意味のある気候変動対策に関心を持つ投資家が増えれば増えるほど、Walmart社のようなスーパーマーケットに対して、冷媒漏えいに対処し、汚染度の高いHFCの使用を早急に止めるよう圧力をかけることとなるでしょう」(スター氏)

 

今回の株主投票に対して、Walmart社からのコメントは得られなかった。

50万台の自動車に匹敵

EIAによると、Walmart社は年間300万トン以上のHFCを排出している。これは、50万台以上の自動車が走行する際に排出する量に匹敵する。Walmart社のHFC漏えいは、同社の直接的な温室効果ガス排出量の48%を占めている。

 

ワシントンD.C.に米国事務所を置くEIAは、45店舗(うち、ウォルマートが運営する20店舗)の調査に基づき、2月に冷媒漏えいの報告書を発行。報告書によると、EIAは60%の店舗で冷媒漏れを検出した。

 

Walmart社の株主を説得するため、EIAはそのHFCの漏れによる財務上の影響を示すデータを提示。米国の新たな規制により、欧州のようにHFCの価格が高騰したと仮定すると、冷媒漏えいでWalmart社は1店舗あたり年間14,000ドル、冷凍システムの20年の寿命で280,000ドルの損失を被る可能性があると試算。Walmart社の米国内全店舗を合計すると、年間6,700万ドルにのぼる。

 

今回の株主投票は、ウォルマートのHFC気候超汚染物質の段階的削減に関する2040年の目標が、世界および国内の政策にそぐわないことを懸念する投資家が増えていることを示唆する結果となりました。
Green America 気候キャンペーン・ディレクター ベス・ポーター氏
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参考

Vote by Shareholders Puts Pressure on Walmart to Act Faster on HFCs