Volkswagenの子会社であるドイツの自動車メーカー、AUDIは長時間運転時における高効率の車内空調用に、CO2ヒートポンプをオプションとして提供する電気自動車を販売すると、2021年4月14日に発表した。
新型車のスタンダードとしてのCO2
4月14日に発表された「Q4 e-tron」と「Q4 Sportback e-tron」は、AUDIの小型電気SUVであり、電気自動車・ガソリン車でHFO-1234yfの代替としてCO2システムを採用した、最初の自動車のひとつでもある。
CO2ヒートポンプは、車内の高電圧電気部品や外気からの排熱を利用して、車内の温度をコントロール。特に冬場発生する「空調による航続距離の低下」を低減でき、ロングドライブでの効率向上に大きく貢献するとAUDIは紹介している。
2019年にsheccoがNTNU(ノルウェー科学技術大学)のアルミン・ハフナー教授に対して行った取材で、氏は「電気自動車用のヒートポンプでは、熱力学的特性を持つCO2が他の冷媒より優れていると考えられています。自動車部門が長距離走行を可能にするために代替エネルギーを使用したパワートレインに注力するためには、エネルギー効率の高い暖房コンセプトが必要です」と語っている。
将来的にはほとんどの新型車が燃料の燃焼に依存しなくなるため、余剰熱源は非常に限定される。安全かつ高効率の運転を可能にするため、部品を冷却・加熱に対するエネルギー管理の技術の高度下が、より重要となるだろう。
ドイツの自動車メーカーでCO2導入進む
「Q4 e-tron」は、AUDIが提供する「myAudi」アプリを使用し、スマートフォンから乗車前の車内環境を調整できる(室内温度、シート、エクステリアミラー、リアウィンドウの加温も可能)。同機能はパワーグリッドで充電せずに機能するが、その場合、車の走行距離は短くなる点に注意が必要だ。
「Q4 e-tron」は125kW、150kW、220kWと3種類の駆動方式で構成され、すべてのモデルがゼロエミッションを実現。充電時間は約10分で、理想的な条件下で約130kmの走行が可能である。後輪駆動の「Q4 40 e-tron」では、最大520kmの航続距離を実現している。ドイツでは41,900ユーロ(約5,450,000 円)から販売され、電気自動車(EV)などの購入時の新車購入補助金「環境ボーナス(Umweltbonus)」制度等の活用により、9,000ユーロ(約1,171,000円)の補助金を受けられる。
昨年12月、Volkswagenは電気自動車の暖房・空調にCO2ヒートポンプを搭載することを開始するという、自動車メーカーとして初めての試みに挑んだ。「『ID.3』『ID.4』のような新しいID(インテリジェント・デザイン)の全モデルに、CO2空調、ヒートポンプが搭載されています」と、同社のコミュニケーション・技術・イノベーション部門の責任者であるクリスチャン・ブールマン氏は述べる。今年4月15日には、「ID.4 EV」がAutotraderの「10 Best Electric Cars for 2021」に選出された。
同じくドイツの自動車メーカーであるDaimlerは、R1234yfの代替として、2017年からメルセデス・ベンツのガソリン車の一部モデルにCO2エアコンを搭載。これには、「S 400 Coupé」など汎用キャリアのSクラスの全バリエーション(Sedan、Coupé、Cabriolet)と「S 560」「S 400 d」が含まれる。またEクラスにおいても、サーモトロニック装備の一部としてCO2空調システムが一部のバリエーションに搭載されている。