日本熱源システムは自然冷媒冷凍機の製造を社業の柱としていて、CO2冷凍機とアンモニア冷凍機を取り揃えています。
CO2冷凍機は当初、スイスや北欧など夏でも涼しい国でしか省エネ性が成り立たないと考えられていましたが、弊社では2012年に外気温度が40℃を超える日本の夏でも省エネ運転となるCO2冷凍機を目指して開発を開始し、2016年に製品名「スーパーグリーン」として実用化に漕ぎ着けました。
猛暑の地域でも安定した冷却が出来る上、省エネが達成できることから評判を呼び、九州から北海道まで導入実績が広がり累計350台を納入してきました。
C型(0℃)F型(-25℃)のコンデンシングユニットを基本に、ブラインチラーなどに機種を広げています。用途は冷凍冷蔵倉庫から、冷凍食品工場の凍結ライン、マーガリンやアイスクリームの製造ライン、ビール工場の炭酸ガス捕集用、工場空調用に広がっています。1台あたりの冷却能力も年々大きくなり、今では冷却能力260kWまでの製品を揃えています。
一方アンモニア冷凍機は、1台あたりの冷却能力400kW~2,000kWの大型機を想定しており、提携するドイツGEA社のアンモニアチラー「ブルーアストラム」を提案しています。日本政府が2020年に、「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、化学工場や食品工場などから急激に引き合いが増えています。

化学工場では低温プロセス冷却用に30〜40年経過したR22の冷凍機が現在も稼動していて、多くは更新時期を迎えています。コロナ禍前、化学会社は中国や東南アジアに生産拠点を移し、国内の生産拠点の存廃を検討していましたが、コロナ禍で海外拠点とのネットワークの脆弱性が浮き彫りになり、改めて国内の生産拠点の継続を決め設備の更新が始まっています。
そうした際、HFCのR404Aの冷凍機ではなく、アンモニア冷凍機を導入するケースが増えています。
以前、アンモニア冷媒はお客様から拒否反応が強かったのですが、国内での実績や安全性、省エネ性を説明することで、急速に受け入れの機運が高まりつつあります。低温域ということもあり、HFOのターボ冷凍機と競合することも少なく、カーボンニュートラル=自然冷媒という流れが日本でも徐々に出来つつあるようです。
しかし、ヨーロッパに比べると日本はまだまだ遅れていると言わざるを得ません。世界最大の冷凍機の展示会・ドイツ・ニュルンベルクで開かれる「チルベンタ」を訪れると、自然冷媒冷凍機が90%以上を占める印象であり、自然冷媒が当然という雰囲気です。それに比べると、まだ日本では環境意識の高いお客様が率先して、自然冷媒冷凍機に挑戦して下さっている段階のようにみえます。
CO2であれアンモニアであれ、技術的に問題が無いばかりか、高い省エネ性によるランニングコストの低減というメリットをもたらすにもかかわらず、依然市場からは懐疑的な声が聞かれるのは残念な限りです。
今後一層、環境性と省エネ性の効果を説明していく必要性を感じています。弊社では個々の冷凍機に遠隔監視装置を取り付けて運転データを収集し、具体的な省エネ効果を提示していく方針です。それによって、お客様の自然冷媒冷凍機への理解が深まり、より選択しやすくなるはずだと考えています。
今年10月には、4年ぶりとなる「チルベンタ」が開催されます。コロナ禍やウクライナ情勢など不安定な要素があるものの、出来れば多くの日本のお客様をドイツに案内したいと計画しています。
また滋賀工場では、冷凍機の増産体制に対応すべく新棟の建設を進めており、今年秋には完成する予定です。完成式典には多くのお客様をお招きして、自然冷媒冷凍機という世界最先端の流れを共有したいと、今から期待に胸を膨らませています。
参考(2022年特別号『アクセレレート・ジャパン』)
ATMOsphereネットワーク
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