米カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業、Gradient社はR290を使用した従来のシステムに比べて温室効果ガスの排出を75%削減する家庭用ヒートポンプの開発発表。2022年の夏までにアメリカ国内で販売を開始する予定だ。
冷媒はR290を想定
Gradient社 のヒートポンプは、窓への設置を想定して設計されており、内側・外側両面のコンポーネントが、窓底面に横たわる形で接続される。同社によれば、このユニットは容易に設置できる設計が特徴で、従来の窓用エアコン(AC)のように視界を遮ることもないという。
Gradient社が冷媒として注目しているのは、R290だ。CEOのヴィンス・ロマネン氏は、R290は非常に効率的で、環境に優しいソリューションになると考える。製品発売に向けて、UL(Underwriters Laboratories)など規格団体と協力して規格変更を進めている。
米国内では、UL 60335-2-40規格で定められているエアコンやヒートポンプへのR290の充填量制限は、LFL(低燃焼性限界)の3倍の約114gである。これは、世界的な規格であるIEC 60335-2-40で規定されている約1kg(非常に広い部屋の中の室内機器の倍)よりはるかに少ない(IEC規格の改訂版は、2021年末~2022年初頭に発表される予定)
Gradient社で使用する冷媒充填量については、現在も社内で調整が進められている。ロマネン氏は、熱交換器の設計、システム設計、容量などの要素に依存すると回答した。
CO2排出量75%削減を目指す
Gradient社 は、新製品は現行のシステムとの比較で、直接・間接的なCO2排出量を75%削減することを目指す。より環境に優しい冷媒を使用し、エネルギー効率向上、化石燃料による暖房から電気ヒートポンプによる暖房に置き換えることといった各種の取り組みに立脚した数字だ。
私たちの最終的な目標は、完全に脱炭素化された冷暖房システムです。そのためには、より環境に優しい冷媒の使用を推進し、より寒い地域での暖房能力を高め、グリッドの自然エネルギーとうまく連携できるように、システムにデマンドレスポンスを組み込むことが必要です。
Gradient社 CEO ヴィンス・ロマネン氏
サンフランシスコの民間研究開発研究所であるOtherlabの支援を受けたGradient社は、2017年の設立以来、900万米ドル以上の政府助成金と、1,300万米ドル以上のベンチャー資金を確保している。同社は、米国内にとどまらず、さらに広大な地域へ市場を拡大する計画を立てている。
参考
U.S. Startup Plans to Launch Climate-Friendly Window Heat Pump, With Eye on R290
原著者:マイケル・ギャリー
ATMOsphereネットワーク
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