【特別対談】ATSジャパン、CO2チラーで半導体市場にさらなる風吹かせる

ATSジャパン株式会社のCO2チラー「GX」シリーズ

業界初のCO2半導体チラーを開発し、大きな話題を呼んだATSジャパン株式会社。2019年、『アクセレレート・ジャパン』ではその記念すべき最初の製品である「GX-20」の開発について取材し、あれから約2年が経過した。同社の開発部マネージャー苅谷 知行氏に、欧州市場で反響を呼ぶ次世代チラーの状況と、発売を迎える新機種の開発ストーリーを聞いた。

累計70台突破。新機種2台も欧州へ

アクセレレート・ジャパン(以下、AJ):

2019年に取材した際、ちょうど「GX-20」をドイツの企業で試験運転していたと思います。その後の状況はいかがでしたか?

 

苅谷氏:

「GX-20」は無事に試験運転もクリアし、量産機として販売を進めています。現時点(2021年10月)で累計販売台数は70ユニット。それとは別に、製造・納品予定のオーダーが85ユニットあります。

 

納入先はほぼすべて欧州市場です。運転状況は非常に良好で、試験運転から数えてもトラブルなく稼働し続けています。イニシャルコストの面で日本市場では苦戦していますが、今年に入り、メーカー様1社からご相談を受け納品させて頂いたところです。

 

そして、私達は新たに2種類のユニットを市場へ投入する準備を進めています。一つは「GX-100」で、かねてよりエンドユーザー様からご相談があったよりハイパワー機種のニーズを満たすため、2馬力だった「GX-20」から10馬力へと開発を進めました。

 

ちょうど10月に半導体装置業界の「SEMI安全審査」を終え、11月より欧州市場へとリリースされます。「GX-20」の時と同様、パナソニック株式会社アプライアンス社様が提供するコンプレッサーを搭載することにより、開発が実現しました。

 

もう一つの新機種「GX2020」も、10月にSEMI安全審査を進め、11月以降にリリースを予定しています。こちらは「GX-20」の2馬力モジュールが2つ入っているデュアルチラーです。小型かつ2ループのブラインを利用したいという声に合わせ、フットプリントを極力抑えつつ、エンドユーザー様のニーズに応えられる設計を目指しました。

 

チラーと接続する装置とのパフォーマンスチェックも、11月には終了する予定です。2機種とも、2022年3、4月には量産体制に入れると考えています。

「GX-2020」

開発を支えた日本のメーカー

AJ

合計3機種となったCO2チラーですが、開発で印象に残っていることはありますか?

 

苅谷氏:

日本の部品メーカー様の優秀さに何度も助けられ、また、ものづくりに対する姿勢に都度魅力を感じました。

 

半導体チラーは、コストのかかるクリーンルームに設置されることが一般的で、お客様より十分な設置スペースを頂ける訳ではありません。「GX-2020」及び「GX-100」でフットプリントを意識したのも、小型であることが必須という業界の事情がありました。

 

小フットプリント対応に伴う“部品小型化”の壁を乗り越えるにあたり、部品能力を上げながらの小型化は、容易なことではありません。しかし我々を支えてくれるサプライヤー各社様はそれぞれの課題を克服し、素早く我々の要求に対応してくれました。

 

コンプレッサーという心臓部は、引き続きパナソニック様にサポート頂きました。またバルブ関連の部品は日電工業株式会社様、特殊オイルセパレーターは日冷工業株式会社様が、非常に素晴らしい画期的な製品を開発して下さいました。このサプライヤー各社様なしでは「ATS CO2チラー」シリーズは完成しなかったでしょう。感謝の念に堪えません。

HFCチラーとの明らかなアドバンテージ

AJ

従来のHFCチラーと比較して、CO2チラーはどんな点にアドバンテージがありますか?

 

苅谷氏:

当然ですが、GWPが低く環境に配慮された設計です。省エネ面も優れており、私達が以前まで提供していた第2世代機「MX-20」(R-507A使用)と比較して、約20%の省エネも実現しています。欧州ではFガス規制によって、仮に日本製のHFCチラーを使用する際に、日本国内での製造過程とは別に現地(欧州)で別途冷媒を購入して充填し直し、再度検査が必要です。このコストが非常に高額という課題を抱えています。

 

加えて、お客様によっては自主的に搭載圧縮機の大小に関わらずフロン機全て、年4回の冷媒の漏えい検査を実施しており、更なる運転管理費を負担されております。それに引き換え、CO2チラーであれば購入後の手間が全くなく、すぐに電源をつなぎ、そのまま使用できます。この点が、欧州市場で喜ばれています。

 

従来のHFCチラーからの入れ替え需要に合わせ、デザインにも気を配りました。実際に前世代機「MX-20」と比較して、GX-20は約8%の省サイズ化を実現しています。これにより、HFCチラーを設置していたスペースに、そのままCO2チラーを設置可能としました。

 

省スペース、省エネ設計に対して、冷却能力も据え置きでなければなりません。「GX-20」は-20℃~+70℃の温度帯に対応しています。こうしたハードルを一つずつクリアして、ここまでくることができました。

「GX」シリーズ各機種の性能比較

欧州市場のCO2化へ

AJ

新機種も続々と欧州市場への投入が待っています。今後の戦略はありますか?

 

苅谷氏:

欧州市場で今も稼働し続けている、フロンチラーとの入れ替えです。

 

ICチップの材料に、「ウェハ」という半導体物質の結晶で形成された円形の薄い板があります。ウェハは径が大きいほど、1枚から生産できるチップの枚数が多くなります。1990年代初頭では200m径のウェハが使われ、2000年代から300mmのウェハが多く使われるようになりました。

 

現在、欧州市場においても200mmウェハ用半導体製造装置も現役で使用されており、その製造で必須の半導体チラーもまた、20年前の製品が現役で使用されています。これらの機器の冷媒は、ほぼすべてがR404A、R507Aです。老朽化に伴い、冷媒漏えいのリスクも無視できません。

 

こうしたフロンチラーの数は、誰も把握していないでしょう。それでも、10、15万台が市場で稼働していると推測できます。ATSJ Green teamが開発した3機種のCO2チラーは、200mm、300mmどちらのウェハにも対応できるシステム構成を有しています。まずは欧州市場のチラーのCO2化を、私達の製品で進めていくことが今後の目標です。

ドイツサービス代理店 Green Team
Green T

AJ:

欧州市場のCO2化にあたり、課題はありますか?

 

苅谷氏:

開発においては特に問題はありません。Green teamと名を掲げたCO2チラー開発チームは、それぞれの想いで直向きに自然冷媒化に取り組み、製品化を実現してくれますので安心して新機種を市場へリリースすることができます。

 

この先のCO2チラー入替作業においても、現地サービス代理店とは20年近く時間を共にしておりますし、かなり細かな技術コミュニケーションも頻繁にしております。また自然冷媒に対する意識や、現地の情報もいち早くキャッチできる環境が整っております。信頼十分な仲間に囲まれているので不安の要素がありません。

 

AJ

日本市場のCO2化はどう見ていますか?

 

苅谷氏:

私達も作戦を練っているところですが、やはり課題はコストです。だからこそ、補助金の存在が重要ではないでしょうか。大手企業様にも働きかけ、政府に働きかけることが最善手だと今は考えます。

 

AJ

なるほど。ありがとうございます。今後の展開も楽しみです。

 

苅谷氏:

実は現在、新たに進めているプロジェクトもあります。その発表も、ぜひ楽しみにお待ちください。