物流倉庫議連総会、緊急決議採択

物流倉庫議連総会、緊急決議採択

2022年5月18日、自民党の物流倉庫振興推進議員連盟は永田町の同党本部にて、総会を開催。日本倉庫協会、日本冷蔵倉庫協会が2023年度予算編成・税制改正や規制緩和に関する要望書を提出したのに対して、緊急決議を採択した。

倉庫の課題に対する要望を提出

緊急決議で採択されたのは、主に物流倉庫の機械化および自動化、カーボンニュートラルに向けた施策推進、電力の安定供給・価格安定への尽力、災害時での倉庫機能強化によるサプライチェーン強化といった内容だ。

 

このうち、冷蔵倉庫協会からは池見 賢会長より、冷蔵倉庫における省エネ自然冷媒機器導入補助事業の継続・予算増額が提案された。

 

環境省の「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」は2つある事業のうち、「再エネ電力活用推進のための冷凍冷蔵機器におけるエネルギー管理システム対応化調査検討委託事業」が2019年度を以って事業を満了。残る「先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器の導入補助」は、2022年度が最終年度となる。

 

産業用分野・業務用分野の自然冷媒機器導入を牽引する同補助事業の行方は、多くの事業者が注目する。

 

物流倉庫議連総会では、この他に原油価格上昇への対応や倉庫建築基準の見直し、物流DXの推進、自動化機器設備の導入支援、電力料金増加に対する支援などが要望・提案された。

 【ATMO JP 2021】日本冷蔵倉庫協会、自然冷媒使用率が5年で倍増【エンドユーザーケーススタディ】

一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏(写真は「ATMOsphere Japan 2020」のもの)

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会は、環境省の補助事業により着実に進む、会員企業の自然冷媒化の詳細なデータを発表してくれた。

R22の大幅減、自然冷媒使用率は倍増

日本冷蔵倉庫協会は、冷蔵倉庫業者が各地で組織する46地区協会を正会員とする中央団体である。冷蔵倉庫の適正運営を確保するため、冷蔵倉庫の機能維持・向上、経営基盤の安定・レベルアップを支援し、事業を高度化させ国民への食料・食品の安定供給への貢献を目指す。

 

652社、1,189事業所、所管容積27,911,860m3となる会員に対して、日本冷蔵倉庫協会の環境安全委員会は「節電等電気使用に係る実態の把握」「冷媒問題への対応の推進」「地球温暖化への対応の推進」という3柱で各種取組を実施。

 

特に冷媒問題に関しては、国土交通省及び環境省方針に基づき、自然冷媒の普及促進に努めてきた。冷媒に関する啓蒙のため、各ブロックにて「冷媒フロン類取扱知見者講習」を開催。また環境省の「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」を積極活用し、省エネ型自然冷媒機器の導入を促進してきた。

 

委員会はこれらの活動を、各冷蔵倉庫の使用冷媒や管理の現状を年次調査「冷媒調査」としてまとめている。同協会の環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏は発表にて、最新2019年度(2020年度調査)のデータを発表した。

 

冷媒の使用状況の推移だが、2011年度には使用率が80.9%あったHCFC(R22)が、2019年度には53.1%(前年度比5.1ポイント減)に。代わりに自然冷媒の使用率は15.0%から36.7%(前年度比4.9ポイント増)と、いずれの数値も過去最高(過去最低)を記録した。

 

そのうえで、小金丸氏は2021年度調査(数字は2020年度)は、R22の使用率は50%を切ると予想。自然冷媒の使用率はこの5年で倍増(2014年度は18.8%)しており、小金丸氏はその要因に環境省の補助事業が大いに作用していることを挙げた。

  

R22の減少ペースは、今後の新たなソリューションの提案によりさらに加速するチャンスがあるとかんがえております。同様に、HFCも前室用のソリューションが増えていることを考えると、さらなる使用率減少が期待できるでしょう。
 
いずれにせよ、政府による補助事業の継続が大きな鍵を握ると思います。
一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏
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アンモニア/CO2の台頭、CO2への期待

つづけて、小金丸氏は自然冷媒の内訳も公開。2012年度はアンモニア直膨が73.6%と圧倒的な使用率だったが、2015年度にはアンモニア/CO2が台頭。2019年度は同ソリューションが67.0%と最多で、アンモニア直膨は29.4%に低下している。さらに、まだまだ数字は低いものの、CO2単独冷媒のシステムも、2018年度の1.3%から2019年度には3.3%と、2倍以上に増えている。

 

中小規模の設備・施設にもCO2単独冷媒は採用しやすい。特に従来のR22分散型設備を採用していた倉庫は、CO2の空冷式システムが非常に置き換えやすいため、今後の増加率は、非常に注目すべきと小金丸氏は述べた。

 

電力使用量の原単位(kWh/設備t)についても、日本冷蔵倉庫協会は1990年度の179.5kWh/設備tを基準値に、2020年度には15%削減の153kWh/設備t、30年度には20%削減の144kWh/設備tを設定。2020年度目標は2015年度で達成水準をクリアしたが、そこから数値は横ばい傾向にあった。

 

その要因として、小金丸市は近年、荷捌き場を冷却する倉庫が増えたため、その容積が増えた分電力量の増加が起きていると説明。そのうえで、今後は荷捌き場にも対応した自然冷媒機器の設置が進むことで、随時電力使用量も減少すると考えている。

 

私達の会員には、脆弱な財政基盤のなかで倉庫を運営する企業も多いため、環境省の補助事業は非常にありがたい存在です。事業開始以降、毎年約50事業所程度が採択されているなど、設備更新の大きな後押しとなっています。
 
それほど効果の大きい事業だからこそ、この5年で自然冷媒の使用率が倍増しました。今後も事業を継続していただくことで、今後5年後、さらにその使用率は倍増すると期待しています。

 

参考

【ATMOsphere Japan 2021】一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会発表資料

着々と進む、倉庫のノンフロン化【ATMOsphere Japan 2020 レポート Part13】

一般社団法人日本冷蔵倉庫協会は「安全と地球環境問題および資源エネルギー問題への取組みの推進」を基本姿勢の一つに掲げ、11月27日には協会関係者、メーカー各社を招いた「最新省エネ冷凍機器技術セミナーと相談会」を開催。冷蔵倉庫関係各社に、自然冷媒市場の現状と未来を共有した。

 

協会が独自に行っている調査によると、2010年には80% 以上あったR22の使用率は、2018年には58.2%にまで減少している。自然冷媒も、2012年に17.4%だったのが2018年で31.8%にまで増加した。「2014年から、R22は年3.7%のペースで減少しています。このペースが続くと、2035 年にはR22 使用率がゼロになる試算です」と、環境安全委員会副委員長の小金丸 滋勝氏は説明する。

 

自然冷媒の内訳はアンモニア/CO2が約60%、アンモニアが34%、残りがCO2直膨であり、アンモニア/CO2の普及が目立つ。電力使用の原単位の推移も、2020 年は153kWh/設備tを目標としていたが、2018年度で148.8kWh/ 設備t とハイペースで進む。

 

一方で、今後ノンフロン普及を左右する中小企業の財政基盤の脆さについても、金丸氏は指摘した。「補助金が重要であるという認識は、今後も続くことでしょう。同時に、メーカー各社にはコストダウンをぜひ、進めていただきたいと思います」

一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏

自然冷媒の「知」を共有 「最新省エネ冷凍機器技術セミナーと相談会」開催

2019年11月27日、一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境・安全委員会主催の「最新省エネ冷凍機器技術セミナーと相談会」が開催された。同会には協会関係者をはじめ、国内のメーカー各社、エンドユーザーから約100名が集まり、自然冷媒機器の開発事情や導入実例を発表。今後の自然冷媒市場の活性化のため、それぞれの知を共有する場となった。

 

文: 佐藤 智朗、岡部 玲奈

独自戦略で進む国内メーカーの技術開発

日本冷蔵倉庫協会 環境・安全委員長の松田 浩氏は、開会の挨拶にて昨今の地球温暖化問題の現状に触れ、社会インフラの一翼を担う業界の責任について言及。2020年をもって生産終了となるR22をはじめ、フロン類からの脱却、自然冷媒への移行が最重要の課題であることを改めて訴えた。松田氏は続けて、「その志を同じくして、本日お集まりいただきました皆様に、改めてお礼申し上げます」と、感謝の意を伝えた。

 

一番手となった冷媒動向セッションでは、自然冷媒技術を提供する各種メーカーが将来的な需要も加味した、それぞれの技術開発動向、および自社製品の特長について発表。パナソニック株式会社アプライアンス社、日本熱源システム株式会社、長谷川鉄工株式会社、三菱電機株式会社、三菱重工冷熱株式会社の計5社が登壇した。

 

パナソニック株式会社アプライアンス社は、コールドチェーン事業部の島田 賀久氏が登壇。排熱利用に伴う付加価値付与、そして食品工場にも対応できるような大容量化システムの開発。それに合わせた遠隔監視などの、効率的な機器運用にも力を入れている現状を説明した。日本熱源システム株式会社は、CO2営業部の片岡 昌氏が登壇し、同社のCO2単独冷凍機「スーパーグリーン」について、新たにラインナップとして加わった102kWの冷凍能力を持つF3タイプも紹介された。同シリーズは全国的に納入実績を着々と伸ばし、2019年6月時点で164台に達している。猛暑に対する散水システムなどの対策により、空冷式の同ユニットは夏場でも十分な省エネ効率を実現した。

 

長谷川鉄工株式会社は、事業本部営業部の佐伯 善弘氏が、自社内の自然冷媒およびHFOによる、低GWP冷凍機の展開事例や、省エネ効率をさらに加速させる2つのアプリケーション「DEMS」と「Yuricargo」に言及した。三菱重工冷熱株式会社からは、エンジニアリング事業本部の小篠 正慶氏が、同社のCO2コンデンシングユニット「C-Puzzle」を紹介。F級、C級どちらも1台でまかなえる柔軟性の高さや、メンテナンスの労力を極力抑えることのできるスクロータリーシステムの優位性について解説した。三菱電機株式会社は、冷機システム製作所 営業部の平尾 泰良氏が登壇。機械の更新や二重投資の負担を軽減するために、同社が考える低GWP冷媒の選択の方向性を紹介した。

倉庫全体が冷媒動向を注視すべき

日本冷蔵倉庫協会 技術部長 田村 裕氏

市場動向セッションでは、日本冷蔵倉庫業界の技術部長 田村 裕氏が、独自の試算を元にした国内の冷蔵倉庫業界における自然冷媒動向を発表。2018年度に入り、自然冷媒の使用率が30%を突破。2014年、政府による補助金事業が始まったのを契機に、徐々に自然冷媒使用率は増えているものの、現在のペースが続いた場合、R22の使用率が0%になるのは2035年になるという見通しを提示した。

日本でもフロン排出抑制法の改正や生産量低下によって、今後HFCをはじめとしたフロン類の確保は難しくなる。メーカーはもちろん、エンドユーザーとなる倉庫業界全体でも、冷媒動向をつぶさに観察し、正しい選択をする必要があることを田村氏は強調した。また、同会では本誌を発行するshecco Japan株式会社からも、本誌編集長の岡部 玲奈が登壇。オンライン、オフラインを通じて行なっている社全体の自然冷媒の啓蒙活動を紹介し、IEC(国際電気標準会議)による炭化水素の規制緩和や、ヨーロッパのFガス規制やFガス税によるフロンの価格高騰、日本の大容量システムの需要などに触れた。

 

省エネ性、環境配慮安全性の全てに好影響

エンドユーザーパネルでは、協和冷蔵株式会社、株式会社フリゴ、浜松委托倉庫株式会社らエンドユーザーが、それぞれ自社における自然冷媒機器の導入事例を発表した。

 

協和冷蔵は、本社広島物流センターの森近 彰氏が登壇。本社物流センターは、合計14,770tの収容能力を持つ。そのうち、昭和56年2月に竣工したF級5,226tについて、株式会社前川製作所のアンモニア/CO2冷凍機「NewTon」へ切り替えを実施した。また平成24 年に完成した広島流通加工センターについても、F級にて前川製作所の「NewTon」を採用。平成29年に増設した同センターのC級倉庫についても、「NewTon」を設置している。既設・新設両方で積極的に自然冷媒機器を採用した結果、流通加工センターの年間消費電力量が、設備tあたりで85kW~88kWと、非常に優れた省エネ性を発揮している。
 

フリゴは、同社の会長で日本冷蔵倉庫協会の副会長を務める西願 廣行氏が登壇。これまで同社では、和歌山第一物流センターの設備更新、北港物流センターの新設、和歌山第二物流センターの設備更新の3事例で、環境省の補助事業を活用し自然冷媒機器を導入した。なお、機器は長谷川鉄工のアンモニア直膨とアンモニア/CO2機器を採用している。CO2削減効果は、補助金申請時には280.8CO2tと想定していたが、2018 年度実績では430.7CO2tと、大幅な改善を実現した。この他に、アンモニア保有量は全体で88.8%(2,100kg → 235kg)削減、月間使用電力量も、メーカーによる運転最適化の結果、26.7%削減(2019年10月と2018年10月で対比)を実現するなど、自然冷媒機器導入が環境配慮・経営改善で大きく貢献した。
 

最後に登壇した浜松委托倉庫の事例紹介をしたのは、不動産部次長の須山 貴司氏。同社は1995年よりR22冷媒を採用した冷凍機を使用しており、屋上にクーリングタワーを設置し、水冷却を用いていた。その老朽化に伴う設備更新に対して、日本熱源システムのCO2冷凍機「スーパーグリーン」のF2タイプを2台採用。2018年8月単月での削減は、R22冷凍機と比較して前年比11.1%、2019年は前年比17.4%と大幅な省エネ効果を得られている。年間を通じても、フロン機と比較して約30% の削減が見込めると、須山氏は説明する。水冷式から空冷式へ移行したことで、水道料金の削減にも貢献。2019年10月の記録的豪雨では2日間にわたり停電に見舞われたが、安全弁が作動したことで冷媒の漏洩は少量であった。期せずして、機器の安全性を証明する結果にもなったという。

エンドユーザーパネルディスカッション

冷蔵倉庫業界は事業活動を続けるにあたり、冷凍設備への大型投資を避けて通ることができない。だからこそ、事業者の垣根を越えた協会が主導して、自然冷媒に関する知識・ノウハウを共有する場を設けることには、大きな意味があるだろう。数々の事例や製品ライナップを目の当たりにして、今後さらに自然冷媒機器導入が加速することを願ってやまない。

 

今回の発表では、複数の登壇者から開発・導入の際、本誌が提供する情報が大きく役立ったという声を頂戴した。今後も彼らのような声が増え続けるよう、自然冷媒に対して後押しとなるべき啓蒙活動を継続していきたい。

『アクセレレート・ジャパン』26号より

CO2冷凍機の導入を決めた基準と哲学 河合製氷の福岡第2物流センター

2018年6月20日、福岡県でCO2物流センターの施設訪問ツアーが開催された。本ツアーではCO2単独冷媒冷凍機を導入した、芳雄製氷冷蔵と河合製氷冷蔵の物流センター2カ所を訪問し、実機の稼働状況を直に見学。まだまだ件数の少ないCO2冷凍機導入の実態は、エンドユーザーにとって有意義な情報だ。本誌編集部もこのツアーに参加。計10台のCO2冷凍機を新設物流センターに設置した、河合製氷冷蔵の代表取締役社長 河合 喜文氏に、今回のCO2冷凍機を導入するに至った背景や今後の展望について取材した。

 

文: 佐藤 智朗、岡部 玲奈

空冷式・セパレート型の冷凍機を選ぶ理由

一般社団法人日本冷蔵倉庫協会の会員を対象に開催された、施設訪問ツアーで見学することとなったのは、6月1日に竣工した河合製氷冷蔵の福岡第2物流センター(福岡糟屋郡)である。敷地面積16,475.41㎡、冷蔵庫規模は約22,500tのセンターには、日本熱源システムのCO2単独冷媒冷凍機が10 台(F級8台、C級2台)設置されている。センターは低温室で5度、SF級倉庫では-40度の温度帯で運用されている。観測市観測史上最高の猛暑を記録した今夏、福岡県でも外気温が33度を超えるなどの暑さに見舞われることがあったが、その中であっても冷凍機はスペック通りの冷却性能を発揮している。

河合製氷は2018年時点で4拠点の物流センターを有しているが、1995年竣工の第2拠点、古賀物流センター以降、同社が竣工・管理する拠点に設置している冷凍機には全て空冷式を採用する。「水冷式の方が熱交換率は高く、冷凍冷蔵倉庫では水冷式への支持が今も根強いと聞きます。しかし災害時に断水してしまうと、復旧に大きな時間がかかります。また冷却水が循環する過程で濃縮されることにより、配管にスケールが発生するなどメンテナンスもする必要があります。加えて省エネ性能も加味すると、同社では『空冷式・セパレート』という方式が、冷凍機を選択する上での基準となっているのです」

国内外の入念な視察を通じて導入を決意

CO2に大きく舵を切ったきっかけは、福岡県冷蔵倉庫協会で冷凍機メーカーの説明会を開催した際にメーカーである日本熱源システムを招き、CO2冷凍機の特徴や各種機能の性能を聴く機会を設けたことにあったという。CO2単独冷媒冷凍機は、同社が欲する規模に合致したものだった。一方で、当時まだまだ実績が少ない冷凍機の運用に、不安も多かった。そこで昨年秋に取締役会長で兄である河合 弘吉氏が日本熱源システム代表取締役社長の原田克彦氏と共に、ヨーロッパへ飛んで現地メーカーの様子を視察した。

 

「現地ヨーロッパの部品メーカーの取り組みや、組み立てメーカーの実績と、現状の日本熱源システムの取組を比較してこれなら大丈夫だという安心を得ました」。河合氏は海外の情報収集を通じて、確かな手応えを掴んだ。また同社は、2016年12月に竣工し、国内で初めて冷凍冷蔵倉庫にCO2システムを導入した東北水産(青森県八戸市)の冷凍倉庫と、同じくCO2システムを2017年2月に導入した島倉水産もそれぞれ見学。安定した稼働を続ける2カ所の工場を見学したことで、冷却性能を実感した同社は、ついにCO2システムの導入を決意。

Güntner製CO2ユニットクーラー

産業用冷凍機の冷媒の選択肢としてはまだまだアンモニアが主流だが、CO2を選択した背景を河合氏は次のように説明する。「アンモニア自体の性質は、非常に優れているとは思います。しかしアンモニア、アンモニア/CO2の冷凍機は水冷式のみであり、弊社の掲げる基準に当てはまりませんでした。またアンモニアには、漏洩リスクなどの危険性も付きまといます。こうした背景に加えて、ヨーロッパや青森の視察を通じて原田社長のCO2冷凍機の熱意に感銘を受けたことも決め手となり、最終的にCO2を選択しました」

継続的な設備導入体制のために必要なこと

フロンから自然冷媒への切り替えが現実的になる中で、多くのエンドユーザーが抱えるのは運用実績が少ないことに対する不安である。そういった意味で、河合製氷冷蔵の大規模な福岡第2物流センターへのCO2冷凍機導入の業界からの注目度は非常に高い。同社では現在、既設の物流センターでは主にR22冷媒の冷凍機を使用している。運用年数に応じて順次設備の更新が進められるわけだが、今回のCO2冷凍機の消費電力量などのデータが良好であれば、切り替えのスケジュールを早める可能性もありうると、河合氏は期待を寄せている。すでに自動制御による効率的な運転による省エネ性は、肌で実感しているという。

CO2冷凍機で冷やされた倉庫内観

日本国内でも徐々に増えつつあるCO2大型冷凍機は、その存在感が大きくなる一方で、納入実例はまだまだ少ないのが実情である。「現行のCO2冷凍機の性能には満足していますが、メンテナンスやサービス体制は、今後さらに拡充していくべき分野かと思います。オーダーメイドで大規模な設備を製造してきた日本熱源システムは、滋賀の工場で本設備を大量生産できる体制を整えているところと聞きました。私たちもこれからCO2冷凍機を採用する立場として、共に成長していかねばと感じています」と、河合氏は意気込みを語った。

 

合わせて同氏は、訪問ツアーなどを通じて、同業他社やメーカー、これから自然冷媒の設備導入を検討することとなる日本冷蔵倉庫協会メンバーを巻き込み、情報交換と議論が交わされることの重要性も口にした。また、フロンから自然冷媒へ移行するには、政府の働きがけも欠かせないと河合氏は言う。「補助金による継続的な導入支援は、今後も続けて欲しいところです。私たちの業界は、古くからアンモニアを冷媒に使用していました。しかし毒性・可燃性への懸念から、政策としてフロンが推奨されることに。そして今、その方針がまた自然冷媒へと変わりました。まさに180度の方針転換がなされている現状に対して、責任を持ってこの動きをサポートして欲しいと思っています」 

 

『アクセレレート・ジャパン』21号より

参考記事

東北水産と島倉水産取材記事

空冷式CO2冷凍機の持つ潜在能力 芳雄製氷が冷蔵倉庫業界で広げる新たなソリューション

2018年6月20日、一般社団法人日本冷蔵倉庫協会の会員を対象として、福岡県にてCO2物流センターの施設訪問ツアーが開催された。訪問先企業の1つである穂波第二センターを2018年4月から開業したのが、小金丸滋勝氏が代表取締役社長を務める芳雄製氷冷蔵である。新技術への投資という大きな一歩を踏み入れた小金丸氏の心中と、社内外で精力的に進める取り組みを取材した。

 

文: 佐藤 智朗、岡部 玲奈

2ヶ月間の運転で実感した省エネ効果の片鱗

福岡県飯塚市にある芳雄製氷冷蔵株式会社(本社:福岡県)の穂波第二センターは、-25℃に冷えた4,700㎥(1,880設備トン)の冷蔵庫が設置されているほか、1,050㎡の低温室と750㎡の荷捌き室が用意されている。

 

中小企業が多いという事情を抱える冷蔵倉庫業界では、コストと利便性という点からR22が使用冷媒の中心的存在であり、2016年の調査ではその使用率は67.6%になることを、小金丸氏は2018年2月に東京・品川にて開催された自然冷媒国際会議「ATMOsphereJapan 2018」のエンドユーザーパネルでも紹介している。

実際、同社でも穂波第二センター以外に2 施設の冷蔵倉庫を保有しているが、そこで使われている冷媒のほぼ100%がR22であることから、今回のCO2冷凍機導入が大きな方向転換であることが窺えるだろう。現在穂波第二センターでは、日本熱源システム株式会社(本社:東京)のCO2単独冷媒機器「スーパーグリーン」を3 台、それぞれ冷蔵庫、低温室、荷捌き室にて1台ずつ稼働させている。

 

同センターでは2018 年4月に冷蔵庫の運転を開始させた。その運転効率を尋ねたところ、電気使用量の平均が1設備トン当り年間換算で約80kwhであると明かした。冷凍冷蔵倉庫業界の電気使用量平均が150kwh前後である点から比較しても、約50%という大幅な省エネ効果を発揮しているという結果になったと、小金丸氏は語った。

CO2冷媒に寄せる強いこだわり

芳雄製氷冷蔵株式会社 代表取締役社長 小金丸 滋勝氏

小金丸氏がCO2直膨式のシステムを知ったのは、今から約10年前の2007年のことだったという。「当時、パナソニックが-25℃対応のCO2ユニットを開発していることを知りました。しかし、大型の冷蔵倉庫に使用できるようになるにはまだまだ先の話という認識だったのです」と、小金丸氏は当時のことを語る。しかし、2016年に開催された一般社団法人日本冷蔵倉庫協会の総会にて、日本熱源システムが冷蔵倉庫でも運転可能な冷凍能力を有するCO2ユニットを開発したというニュースを耳にした同氏は、早速メーカーへコンタクトを取った。

 

「技術的な話を詳細に聞いた結果、それは十分に利用できるレベルに達していると判断しました。そこで、私達はオープンを計画していた穂波第二センターに、このシステムを導入することを決定しました」

 

小金丸氏に自然冷媒機器使用への懸念について尋ねると、「日本熱源システムから話を聞いた段階で、直感的にこれはいけると感じていました」と、強い確信があったという。アンモニア直膨式やアンモニア/CO2機器が冷蔵倉庫業界の中心機器であった現状に対して、CO2直膨式という選択をした小金丸氏。そこには、同氏の強いこだわりを感じさせる。

 

過去、同社の工場でアンモニア設備を運転管理した経験もある小金丸氏にとって、アンモニアの取り扱いは常に危険と隣り合わせであったという。今よりも安全基準が曖昧だった当時、液もれがきっかけでやけどを負うなど、軽微な怪我に繋がることもあった。こうした経験を持つ小金丸氏が、従業員の安全を慮ってアンモニア冷媒を選択肢から除外し、毒性のないCO2へ舵を切ったというのは、ごく自然な流れだったという。

 

「CO2×空冷式」こそ最善の選択

CO2直膨式システムの中でも特に、「スーパーグリーン」の導入に至ったのには、いくつかの決め
手があった。1つ目は「圧力」の問題である。従来のCO2機器は気液循環型で、約8MPaの高圧で冷媒液を循環させるため、気体と液体の混合物をクーラーへ送り冷却するシステムを取っていたのである。それに対して同機の場合は、臨界点以下である約3.5MPaにまで圧力を下げて供給できるため、運転効率が改善されCOPが大幅に改善されるだろうと小金丸氏は感じていた。

倉庫内で稼働するGüntner 製CO2 ユニットクーラー

運転・メンテナンスの面で比べても、同機種の圧力はR410AなどのHFC冷媒より3割ほど高い程度に抑えられる点も大きかったという。2つ目は、同機で使用されているヨーロッパの部品メーカーが担保している「高品質な部品」だ。小金丸氏は日本熱源システムの代表取締役社長である原田 克彦氏と共に、提携先であるドイツのメーカーを実際に現地視察している。

 

訪問企業はドイツを中心に、世界でも最も有力な大型冷凍機メーカーの1 つであるGEA グループのBockやGüntnerなど。各社の生産現場を目の当たりにした小金丸氏は、「これまで、私は日本の技術が最高と盲信していました。しかし、ヨーロッパはあらゆる面で先を走っていたのです」と明かした。「繊細さや細やかな製造技術が日本の売りではありますが、ヨーロッパの製品は効率を重視しつつ、それでいて肝心な部分は壊れないような精緻さも持ち合わせていました。元々CO2ユニットの導入に前向きだったものの、この視察でその思いはさらに強固なものとなりました」

 

最後に、同機が「空冷式」であったことが大きな決め手であったと小金丸氏は言う。冷蔵倉庫業界において、「空冷よりも水冷式」という認識を持っている事業者は非常に多い。しかし、小金丸氏は災害時のインフラ復旧とメンテナンスという2つの側面から、水冷式にはデメリットが多いと指摘する。

CO2 で冷やされた穂波第二センター内部

「震災や津波などの災害時に、インフラ復旧で最も時間を必要とするのが水とガスです。電気の復旧は意外と早い。万が一の事態が起きても、なるべく運転再開の目処が立ちやすい空冷式の方が使い勝手がいいのです。また水冷式の場合、ポンプやコンデンサが汚れやすいという問題を抱えています。空冷式であれば、コンデンサの洗浄は室外機を洗うだけで、3年に1度ほどの割合で専門業者に委託すれば事足りるので、メンテナンスコストから見ても空冷の方が優れているのです」

 

加えて、地域性で考えても空冷式にはメリットがある。「私は最も空冷式の使い勝手が優れている地域は沖縄であると思っています。ウェットバルブの高い地域は、空冷技術を採用して顕熱でコンデンスする方が高効率を実現できると思います」

自らが営業マンとなって検体を増やしていきたい

芳雄製氷は環境省による2017年度の自然冷媒機器導入補助金制度「脱フロン社会構築に向けた業務用冷凍空調機器省エネ化推進事業」を活用し、CO2機器導入を実現した。「中小零細の企業が大半を占める冷蔵倉庫業界は、ある意味で脆弱な業界と言えます。その中で工場の設備・機械を入れ替えるというのは、非常に大きな投資になってしまいます。だからこそ、導入費用の半額を負担してくれる補助金はとてもありがたい存在です」と、小金丸氏は語る。

施設訪問ツアーの様子とCO2冷凍機

日本冷蔵倉庫協会は、別組織である「低温物流の未来を考える会」にて、政府関係者と交流し、補助金の増額や延長措置、また税制優遇といった様々な陳情を出しながら、自然冷媒への切り替えの流れを止めないようにしている。行政サイドのみならず、業界関係者への啓蒙も欠かさない。「今回の見学ツアーでは、CO2物流センターを見るために、冷蔵倉庫業青年経営者協議会と冷蔵倉庫業経営者協議会の2つの団体から60名ほどが参加しています。個別に見学したいと言う企業もあり、導入を検討している関係者が増えてきたのを強く感じます。未だCO2直膨式に関して実際に冷えるのかなど、懐疑的なイメージを抱いている方も多いですが、センターをご覧になれば、疑心暗鬼も解消され安心する方は多いことでしょう」と、小金丸氏は自信をのぞかせる。

 

CO2機器の導入実績が増えることは、環境保全の他にどのような好影響を芳雄製氷にもたらすのだろうか。この質問に対して小金丸氏は、検体個数が増えることで、様々な有益な情報がデータベースとなって蓄積されることだと答えてくれた。「研究段階での数値と実際に稼働させての数値では、どうしても差異が生じます。導入例が増えて実際の運転データを収集できれば、トラブル時やメンテナンス時でも効率的に機器を運用することができるでしょう。導入例が増えれば増えるほど、私達にとっても大きなメリットとなるのです。私は新しい技術が好きで、開発陣に対してフィードバックできることに大きな喜びを感じます。業界関係者にCO2ユニットを進めるモチベーションも、この思いに起因しているのでしょう」

 

納入件数がまだ少ない今こそ、データベース作りに着手し、今後の傾向・予測が立つ状態を構築するチャンスなのだと、小金丸氏は述べた。インバーターやバルブのコントロールが秀逸で、狙い以上の高効率な運転を実現できていると、小金丸氏は同機器を高く評価する。芳雄製氷は今後さらに運転データを蓄積しながら、初のCO2単独冷媒機器に生じる小さな課題に対処しつつ、さらなるCOP向上に繋がるようメーカーへ提案していく考えだ。そのユーザーとしては珍しい技術への積極的な姿勢が、冷蔵倉庫業界の自然冷媒機器採用増加の起爆剤となることを期待しつつ、同社の動向を見守りたい。

 

『アクセレレート・ジャパン』20号より

参考記事:

ATMOsphere Japan2018 開催レポートより