環境省、2021年の環境戦略

環境省

2020年は多くの業界関係者にとって、大きな路線転換を求められる1年となっただろう。そのきっかけとなった新型コロナウイルスは、2021年にも猛威を振るう。メーカー、エンドユーザーはこの苦境の中も、堅実かつ挑戦的な事業計画を立て、自然冷媒機器の開発・導入に踏み切っている状況である。

 

国内において、関係者等の不断の努力を支えているのが、環境省による「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」である。『アクセレート・ジャパン』は、同事業を支える環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長の豊住 朝子氏に、2020年の所感および2021年の戦略を聞いた。

2020年度は事業対象期間の延長をしつつ、2021年度へ向け周知徹底へ

アクセレート・ジャパン:
2020年における補助金事業の執行は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、申請側、審査側ともに非常に混乱が大きい中だったと思います。この1年の所感や意見をお聞かせください。

 

豊住氏:
同年の補助金交付事業は、例年よりも執行率が低い状況にあります。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたためと考えられます。経済・社会活動に大きな影響があったことから、申請時点もしくは申請後に設備投資の見直しを余儀なくされ、結果として実施を見送られた事業者も少なくなかったと考えています。

 

その一方で、このような状況においても、機器の更新時期に該当し、あるいは需要の変化を受けて、自然冷媒機器への転換を決断される事業者は着実にいらっしゃいます。

 

混乱の中でも、しっかりとニーズに応えられるよう、特に、やむを得ない事業計画の変更にも対応できるように、交付事業の実施にあたっては、丁寧な対応を心がけています。

 

アクセレート・ジャパン:
政府が閣議決定した予算案では、本事業の予算は前年と同水準ということで、業界関係者からも前向きに受け取られたかと思います。

 

豊住氏:
2021年度の政府予算案において、「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」は2020年度予算額と同額の73億円が盛り込まれました。

 

2019年いっぱいでHCFCの生産・輸入が終了し、また同年からHFCの生産・消費量の削減が開始されており、今後は益々、自然冷媒機器へ移行する機運が高まっていくでしょう。

 

5か年を予定している本事業も後半に入りますので、より多くの事業者に活用いただき、脱フロンと、温室効果ガスの一層の削減につなげていただきたいと考えています。

 

また、今年度は前述のとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、自然冷媒機器の導入を見送られる事例もあるようですが、この先を見据えれば、省エネ型自然冷媒機器の需要は着実にあると考えています。そこで、昨今の事情を鑑み、本年1月12日からの第5次公募では、補助事業の対象期間を「同年9月末までに完了する事業」まで範囲を拡大し、柔軟に事業が執行できるよう措置しています。

 

省エネ型自然冷媒型機器の導入を検討されている事業者の皆様には、この機会に是非ご活用いただきたいと考えています。

来年度以降の廃棄時フロン回収率改善に向けて

アクセレート・ジャパン:
フロン排出抑制法は2020年に改正法が施行され、直接罰の導入などフロンにおける「出口戦略」の強化が図られました。改正法の周知など、環境省での活動はどのように進んでいますか?

 

豊住氏:
2020年4月1日に施行されたフロン排出抑制法は、第一種特定機器の廃棄時における回収に焦点をおいて規制を強化しました。この改正について周知するため、昨年は都道府県への通知や関係者向けのチラシの作成・配布を行いました。

 

しかしながら、新型コロナウイルス感染防止対策の影響により、改正法の周知徹底のための説明会が当初予定どおりに開催できなかったため、現在オンラインでの対応を進めています。

 

また、特に今般の法改正で新たに義務が課されることとなった解体業者や廃棄物・リサイクル業者の方々に、しっかりと法の趣旨が届いているかどうか、その認知度を把握するための調査を行っています。その結果を踏まえて、より効果的な周知活動を進めていきます。

 

アクセレート・ジャパン:
コロナ禍で思うようなご活動が難しい中、改正法により廃棄時フロン類の回収率に現時点で変化は見られますか?

 

豊住氏:
改正フロン排出抑制法の効果は、来年度実施する2020年度実績の調査にて明らかとなりますが、改正法の効果が着実に表れることを期待しています。前年の2019年度実績については、昨年末に「フロン排出抑制法に基づく業務用冷凍空調機器からのフロン類充填量及び回収量等の集計結果について」として公表しましたが、残念ながら回収率はこれまでと変わらない水準(約38%)にとどまりました。

 

今年度は残りわずかではありますが、改正法の趣旨を踏まえて着実に廃棄時回収が進むよう、また来年度以降の回収率向上にも繋がっていくように、改正法の周知徹底に努めていきます。

国内のカーボン・ニュートラル、世界のフルオロカーボン・イニシアティブを主導する

アクセレート・ジャパン:
菅総理大臣は2020年、2050年までにCO2の排出実質ゼロを打ち出し、小泉環境相もCO2排出の価格付けに言及するなど、政府全体でCO2対策に取り組む姿勢を発表されております。環境省の2021年における目標や、それに向けた対策をお聞かせください。

 

豊住氏:
昨年10月、菅総理大臣より「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言され、環境省は小泉大臣の号令の下、これまで以上に気候変動対策を通じた経済と環境の好循環の実現に向けて、全力で取り組んでいます。

 

昨年12月に公表した「2019年度の温室効果ガス排出量(速報値)について」では、温室効果ガス排出量は全体として1990年以降で最小を更新したものの、HFCについては残念ながら前年比で340万t-CO2増加し、1990年以来最大を更新しました。

 
 
HFCの状況はCO2とは異なるものの、地球温暖化対策の観点から、フロン類のより一層の排出削減が求められます。

 

フロン対策室では、2050年カーボンニュートラルに向けた絵を描きながら、まずは改正法の趣旨を踏まえ、フロン類の排出抑制に向け、関係省庁や都道府県と協力して法の着実な執行を確保して参ります。併せて前述の「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」により、フロンを使わない自然冷媒への転換を後押ししていきます。

 

さらに国際的な取組として、2019年のCOP25において日本の主導で立ち上げたフルオロカーボン・イニシアティブを引き続き推進していきます。2021年は国際機関や賛同国との連携を一層進め、活動をより効果的なものとしたいと考えていますので、今後とも、関係者の皆様の御協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏
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