ドイツ国際協力公社(GIZ)は、温室効果ガス(GHG)排出量削減の可能性や技術的な観点から、プロパン(R290)を使用した窓用エアコンへの移行を強く主張する。その先駆けとして、同団体は2021年7月16日開催のウェビナーにおいて、R290エアコン(AC)のプロトタイプの初期テスト結果を発表する予定だ。
R290ACの利点を強調
GIZのグリーン・クーリング・プロジェクト「GIZ Proklima」のアジア・ポートフォリオ担当であるフィリップ・ムンジンガー氏は、shecco運営の「HYDROCARBONS21」にて、窓用エアコンにR290を使用するケースは、十分に有用であると述べる。
その言葉を裏付けるように、「GIZ Proklima」はフィリピンエネルギー省Lighting and Appliances Testing Laboratoryと共同で、R290窓用ACのプロトタイプのテスト運用を開始した。さらに「GIZ Proklima」は、今後20年間に窓用ACから予想されるベースラインのGHG排出量と、R22やR410AからR290への急速な移行による、世界的なGHG緩和の可能性のモデル化を開始している。
さらに、スプリット型ACと比べ、窓用ACはシンプルな設計である点も、機器入れ替えに大きな利点だとムンジンガー氏は説明する。
7月16日のイベントでは、ムンジンガー氏は数名の専門家と講演し、初期の市場調査とプロトタイプテストの結果を発表する予定だ。同イベントは、モントリオール議定書の第43回締約国オープンエンドワーキンググループ(OEWG)の会合と並行して行われる。
一部市場で好調を見せる窓用AC
日本冷凍空調工業会(JRAIA)が2019年6月に発表した「世界の地域別エアコン需要」によると、ルームエアコン(RAC)の世界市場において、窓用ACの占める割合はスプリット型ACよりも小さく、2018年に販売されたエアコンの約13%(約1,300万台)であるという。
一方で、フィリピン、米国、サウジアラビア、香港など一部地域では、RAC総販売台数のうち、窓ACが過半数のシェアを占める。

出典:日本冷凍空調工業会 日本冷凍空調工業会(JRAIA)、「世界の地域別エアコン需要」2019年6月
JRAIAのデータによると、この傾向は過去数年間一貫しており、今後も続くと予想されている。「スプリット型ACエアコンに比べ、窓用ACのエネルギー効率は一般的に低いとされます。にもかかわらず、後者の世界的需要は、今後10年にわたって横ばいの傾向です」(ムンジンガー氏)
フィリピンでは、いまだにフロン類を使用した窓用ACが市場の大半を占めており、大量のフロン漏洩・排出につながっていると、GIZの照明器具試験部門チーフ、イサガニ・ソリアーノ氏は語る。
「エネルギー省の照明器具試験所では、R290等を窓用ACの新冷媒として有望で、気候変動にも影響を受けにくいものであると捉え、この分野点について研究開発を行うことを決定しました」(ソリアーノ氏)
7月16日のオンラインイベントでは、ムンジンガー氏、ソリアーノ氏に加え、米国エネルギー省オークリッジ国立研究所の研究員であるボー・シェン氏が、高効率のR290窓用ACに関する最新の研究成果を紹介する。また、ドイツの環境コンサルタント会社HEAT GmbH社のアイリーン・パプスト氏とダニエル・コルボーン氏も参加し、R290使用によるGHG削減の可能性と安全性について議論する予定だ。
参考
Strong Environmental, Technical Arguments Seen for R290 Window ACs