2019年2月12日〜2月14日の3日間、千葉県・幕張メッセにてスーパーマーケット・トレードショー2020(主催: 一般社団法人新日本スーパーマーケット協会)が開催された。国内外の小売業・卸・商社・中食・外食から2,326社・団体が参加し、合計3,577のブースでそれぞれの製品・サービスを披露した。新型コロナウイルスの影響も心配されたが、3日間で合計80,428名の来場者を記録。本誌が注目する小売店・食品倉庫等をターゲットとするエリアでは、前年にも増して多くの自然冷媒ソリューションが見られた。なかでも注目したのが、炭化水素冷媒の飛躍である。
AHT社のショーケースを参考出展 ダイキン
ダイキン工業株式会社のブースでは、昨年も展示した冷凍ストッカーの大容量タイプを新たに展示。これまでの150L、200L、300L、400L、550Lの5クラスから、さらに600L、750Lクラスの2種類をラインナップとして加えた。いずれも最大-23℃まで冷凍可能で、400Lクラスまではイソブタン(R600a)、500L以上はプロパン(R290)を採用。現状の充填量規制に合わせ、すべてのラインナップが150g以下の充填量に対応している。
「納入先は温泉旅館や飲食のバックヤードが中心です。その他には農家や離島の個人ユーザー様など、食料の大量かつ長期保存を求める層にも受け入れられています」と、低温事業部 営業部 冷設システムグループの有井 哲二氏は語る。7種類のラインナップからの拡充は、展示会でのエンドユーザーからの声を反映させていきたいという。
「現状、想定できるものではスリムな家庭用冷蔵庫に近いタイプなどが、追加ラインナップの可能性として想定できます」。サイズのニーズには極力応えていきたい一方で、-18℃以上など温度帯が上がると、食品の長期保存に悪影響があることも見逃せない。サイズと温度帯の両立を大前提に、今後技術開発を進めていく予定である。
今回、ダイキンのブースではもう1 つ特筆すべき展示が見られた。AHT社が展開する多段ショーケース「VENTO GREEN(ベントグリーン)」である。同機種はプロパンを採用。VENTOシリーズは累計約68,000台(2020年2月時点)納品されているが、うち23,000台を「VENTO GREEN」が占める。なお納入先は、ほとんどが欧州市場である。空冷式、水冷式両方に対応しているが、欧州では水冷式かつブラインを採用したウォーターループシステムでの運用も多い。

ダイキンが2018年11月にAHT社の買収を発表して以来、同社製品を大々的に出展したのは今回が初めてだ。あくまで参考出展という形だが、プロパンショーケースの欧州市場以外での可能性を図ることが目的の1つだという。AHT社のショーケースはオーストリア、アメリカ、ブラジル、中国に大きな生産拠点を持つ。多段ショーケースを生産しているのは、販売先の中心地であるオーストリアとアメリカ。
「今回の出展を機に、アジア市場での可能性を模索していきます。エンドユーザー様からの声も集めつつ、好意的な反応が多ければ、中国拠点での製造を打診することも視野に入れる必要があるでしょう」。有井氏によれば、来場者からの反応は良好であるという。ダイキンの2020年度は、設置もしやすい内蔵型の自然冷媒ショーケースの可能性を探る1年となることだろう。
プロパンのコンデンシングユニットを参考出展 三菱電機
本展示会では、来場者の反応を見るために炭化水素ショーケースを「参考出展」する事業者が多く見られた。三菱電機株式会社も、その一社である。同社はプロパン内蔵の多段ショーケースを参考出品。それに加えて、プロパンのインバータコンデンシングユニットを搭載したリーチインショーケースも参考出展した。

展示されたショーケースはR410aを使用しているが、ショーケース上部にプロパンの圧縮機ユニットを搭載することで、そのまま運転することができるという。基本的な外形はHFCと変えず、制御部も同じままでプロパンを採用できるのが、大きなメリットである。展示された圧縮機であれば、多段ショーケースなら4尺、平型ショーケースなら6尺までは対応できると同社は試算する。
ラインナップ拡充のカギを握るのは、IECの国際規格とリスク管理とのバランスだ。可燃性冷媒の充填量が150gから500gに引き上げられたとはいえ、公益社団法人日本冷凍空調学会が進めるリスクアセスメントの動向や、実際に現場で使用するための環境整備も必要となる。既存の充填量150g以下でどこまでの製品をカバーできるか確かめる必要もあるという。2020年度からカタログに掲載して販売するという方法は取らず、技術開発と認知度向上を並行して行いながら、安全性を担保していく予定だ。
最適な充填量も探りながらノンフロン拡充へ サンデン

サンデン・リテールシステム株式会社のブースでは、2つの炭化水素ショーケースが参考出展されていた。1つはイソブタンの卓上ケース、もう1 つはプロパンの飲料ケースである。いずれも内蔵型であり、コンビニエンスストアなど室外機を置けない店舗にも対応できる形となっている。コールドチェーン事業部 商品企画部の石井 希一氏によれば、飲料ケースなど多段ショーケースに関しては、充填量の最適化も含め調整を進めているとのことだ。
「今回展示したショーケースは約3尺のサイズですが、これまでの規制範囲内である150g以下でも冷えるのか、逆にそれ以上の充填帳が必要かも、現在テストを進めています。安全性とコストが両方担保できる最適な充填量で、市場へ投入していきたいところです」。IECにて決定された充填量引き上げに対して、国内の規制や法整備が出揃うタイミングを測りつつ、ノンフロンショーケースのラインナップをそろえていきたいところだ。