2020年2月12日〜2月14日の3日間、千葉県・幕張メッセにてスーパーマーケット・トレードショー2020(主催: 一般社団法人新日本スーパーマーケット協会)が開催された。国内外の小売業・卸・商社・中食・外食から2,326社・団体が参加し、合計3,577のブースでそれぞれの製品・サービスを披露した。新型コロナウイルスの影響も心配されたが、3日間で合計80,428名の来場者を記録。本誌が注目する小売店・食品倉庫等をターゲットとするエリアでは、前年にも増して多くの自然冷媒ソリューションが見られた。なかでも注目したのが、炭化水素冷媒の飛躍である。
文: 佐藤 智朗、岡部 玲奈
ウォーターループの利便性をさらに広めたい 日本熱源システム
日本熱源システム株式会社は、昨年同様に冷凍機メーカー、Freorの提案するウォーターループシステムと、同社のプロパン内蔵ショーケース「JUPITER(ジュピター)」「PLUTON(プルトン)」「ERIDA(エリーダ)」など各種モデルを展示。代表取締役社長の原田克彦氏は、来場者の反応から昨年と比べ、プロパン冷媒に対する抵抗はなくなっていると感じる。
「他社でも内蔵ショーケースの展示が増えていることで、私達も訴求しやすくなった気がします」。プロパン内蔵システムという利便性を提案しつつ、ウォーターループシステムを採用することで店内の排熱利用を有効活用しやすくなり、さらなる省エネにつながることを訴えていきたいという。暑寒など地域特性に関わらず、水道配管の要領で利用できる簡便性も、ウォーターループの利点だ。

技術的には難しいシステムではないが、一方でウォーターループシステムの一般への浸透度は、決して高くはない。日本熱源システムとしては、展示会を通じてさらに認知度を高めていきたいところだ。展示ブースに訪れるのは、小売店などエンドユーザーだけではない。本誌が原田氏を訪問した際には、設備会社の関係者が同氏の説明を受けているところだった。
「メーカーである私達の力だけでは、納品数を増やすことはできません。各地域で店舗設計・設営工事にあたる事業者の方々にも、このシステムを知ってもらうことは非常に重要です」。メーカー、設備会社、エンドユーザーの三方良しが、システム普及の大前提だと原田氏は考えている。2020年度を通じて周知徹底とともに、着実に納入実績を作っていくことが日本熱源システムの方針だ。すでに複数社から、本格的な導入に向けての相談を受けていると原田氏は話してくれた。
炭化水素、CO2ショーケースをさらに拡大 パナソニック
パナソニック株式会社アプライアンス社およびパナソニック産機システムズ株式会社の出店エリアでは、例年どおり屋外一体型のCO2冷凍機が出迎えてくれた。さらにブースでは、CO2内蔵型の平型冷凍ショーケースと、初の出展となる炭化水素の内蔵型ショーケースを展示。炭化水素のショーケースは、卓上型にはイソブタンを、縦型ショーケースにはプロパンをそれぞれ採用している。
「開発の方向性として、内蔵型・別置型それぞれに考慮すべき点はあります。しかしいまのところ、小型ショーケースは炭化水素のラインナップを広げていく予定です」と、アプライアンス社 冷凍機システム統括部長の大西 学氏は説明する。ちなみに内蔵型のショーケース、オープンショーケースに関しては、現状「3尺」をCO2と炭化水素のどちらを採用するかの境界線として捉えているという。「現状の充填量規制も加味すると、炭化水素ショーケースは、消費電力1,100W程度のサイズが限界ではないでしょうか」

内蔵型のショーケース開発を進めているのは、省エネや設置条件以外に、安全性の確保という点でもメリットがあるという。内蔵型は1台にコンプレッサーとエバポレーターなど、各部品がすべて含まれている。故障時の対応も、パナソニック一社でまかなうことが可能だ。充填量を意識して、内蔵型でできる冷却能力の上限を目指して開発し、水冷式によるウォーターループシステムなどトータルソリューションにどう対応していくか。
この2つが、パナソニックのショーケース開発のチャレンジになるだろうと大西氏は話した。またブース内では、本誌でも紹介した株式会社東急百貨店に納入した、ハマ冷機工業株式会社と共同で開発した水冷式のCO2冷蔵ショーケースも展示。地下に販売エリアがあり、冷却塔や配管長など、環境負荷の高い設備条件で、安全性の高い運転を実現する。