2021年5月25〜27日、ドイツ環境庁(UBA)、ドイツ国際協力機構(GIZ)、ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全省(BMU)の主催で開催された「Green Cooling Summit」。その政策パネルディスカッションにて、EUの政策立案者とNGOの双方で、EUのFガス規制に基づくHFCのより積極的な段階的削減と自然冷媒への置き換えが必要であるという意見の合意が見られた。
政府関係者、NGO共にF-ガス規制の強化に同意
現在、EUのF-Gas規制は欧州委員会(EC)がステークホルダーからの意見を踏まえ、見直しの検討が続けられている。ECの気候行動総局(DG CLIMA)の政策アナリストであるアルノ・カシュル氏は、気候に優しく安価で効率的な優れたソリューションがすでに存在しているなか、「時代遅れ」の冷媒をいつまでも使い続けることはできないと言及。
興味深いことに、同氏の意見はロンドンのNGOである環境調査エージェンシー(EIA)の気候変動対策キャンペーンリーダー、クレア・ペリー氏の意見と合致する場面がいくつも見られた。ペリー氏は、現在のF-Gas規制で冷蔵冷凍分野に求められるGWP上限値150は、十分に低い値ではないと指摘。世界的な気候変動に影響を与えるため、GWP上限を5や10にすることも検討する必要があるという考えを示している。
また国際連合工業開発機関(UNIDO)モントリオール議定書課 課長、オーレ・ニールセン氏は、HFC撤廃には野心的な規制の履行が必要と主張する。同氏はFガスから自然冷媒への移行で大きな影響がある可能性がありながら、現在その動きが活発ではない分野として、空調(特に住宅用空調)を挙げている。カシュル氏と同じく政府機関の代表であるニールセン氏もまた、冷媒漏えいを防げないのであれば、自然環境への影響が未知数の化学物質(HFO)を使用するべきではないと言及した。
GIZのプログラムマネージャーであるベルンハルド・シーゲル氏は、この考えをさらに推し進め、化学冷媒の製造者および供給者は、その製品に責任を持つとともに、それらがもたらす環境コストを管理すべきだと話す。同時に、シーゲル氏はR290といった可燃性冷媒を含み、自然冷媒に関するいくつかの議論は、論理と科学に基づいていないという。例えば自動車の空調用に炭化水素を使用することに対して、可燃性を理由に反対することは、すでに可燃性の燃料を積んでいる場合には非論理的であると同氏は語った。