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【ATMO EUROPE 2021】ノルウェー、エジェクター搭載の簡易型CO2システムを開発

2021年、9月28日〜29日にオンラインで開催された「ATMOsphere Europe Summit 2021(ATMO EUROPE 2021)」にて、ノルウェー科学技術大学(NTNU)教授、アーミン・ハフナー氏がNTNUとノルウェーの研究機関SINTEFが協同し、マルチエジェクターと低圧レシーバーを搭載したトランスクリティカル(TC)CO2スーパーブースターシステムのテストに成功した。

あらゆる機器の中で最高の性能を発揮すると自信

CO2冷凍技術の先駆者であるハフナー氏は、「Technology Trends」セッションにて、同システムは非常にシンプルな設計で、トレーニングが容易なため広く導入できると説明。NTNUとSINTEFは、簡素化されたエジェクタシステムを様々な負荷条件でテストし、今後はプロジェクトとしてこのコンセプトを実現に努める予定だ。

 

NTNU、SINTEFの開発されたブースターシステムでは、高圧制御弁の代わりにマルチエジェクターが使用されてる。エジェクタの中間接続部は吸引ポートとして機能し、中温の蒸発器から気液混合物を受け取り、高圧力で液体レシーバーへ分配される仕組みだ。周囲の温度が低い場合、エジェクターは使用せずに、高圧の流体を直接膨張装置へ分配し、吸込口には蒸発器からの流体が受動的に入り込む。

 

「つまり、非常にシンプルなアクティブ/パッシブモードのエジェクターなのです」(ハフナー氏)

 

このブースターシステムは、パラレルコンプレッションを使ったものも含めて「他のどんなシステムよりも優れた性能を発揮することができる」と、ハフナー氏は自信をのぞかせる。

 

CO2システムは、設計者が良い仕事をすれば世界のあらゆる場所で高エネルギー効率を発揮します。私はこれまで、CO2に切り替えたことを後悔しているエンドユーザーには、一人も会ったことがありません。

ノルウェー科学技術大学(NTNU) 教授 アーミン・ハフナー氏

HFCを上回る性能

続いて、ハフナー氏はイタリア・Enex社の業務用・産業用CO2ヒートポンプ/チラーに搭載されているエジェクターの、別の用途についても説明を行った。それによると、同社のエジェクターはコンプレッサーの吸引力を高めてエネルギー効率を向上させ、ヒートポンプで90℃の水温を実現しているという。

 

「これは非常にスマートなエジェクターの実装例です」(ハフナー氏)

 

開発されたEnex社のヒートポンプ/チラーは、既存のHFCチラーをも凌駕するポテンシャルを有するとハフナー氏は話す。特に、可燃性冷媒を使用することが困難な都心のホテル周辺の環境では、不燃性の未来型ソリューションを提供することができると語り、Enex社の製品は、今後さらに多くの市場に投入されることを期待していると話した。

 

デンマーク・Fenagy社のCO2ヒートポンプも、地域暖房用として導入されている有望な技術であるとハフナー氏は言う。スカンジナビアの気温帯(-20~20℃)に合わせて設計されたこのヒートポンプは、1台で最大1.8MWの能力を有する。今後、ハフナー氏はこの種のヒートポンプが、既存の地域暖房システムに熱を供給するため導入されることが増えるだろうそ話、別のメーカーが海水の熱を利用した最大50MWの地域暖房システムを開発している事例を紹介した。

 

CO2冷凍機の産業用途への導入に貢献しているのは、Bitzer社の「CKHE7」、Dorin社の「CD600」等の100m3/h級の大型コンプレッサーだとハフナーは指摘。これらのコンプレッサーにより、容量1.0MW以上のシステムをそれなりの数のコンプレッサーで構築することが可能になっているという。

最大4種類の自然冷媒ソリューションがすでに選択可能

ハフナー氏は、現状すべてのHVAC&Rアプリケーションには、5つの主要な自然冷媒(CO2、炭化水素、アンモニア、水、空気)の中から最低2種類、最大4種類の自然冷媒ソリューションがあると言う。

 

現在使用されている合成フッ素含有冷媒を自然冷媒に置き換えることに、技術的な障壁はありません。プロジェクトや製品に最適な冷媒を選択する際には、その可能性に注目し、見極めることが重要なのです。エンドユーザーがこの可能性を知れば、99%が自然な代替品を選択することでしょう。

ハフナー氏

 

ハフナー氏は講演にて、HFO-1234yfが「一部のHFCおよびHFO冷媒を含むパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)」 の一種であるトリフルオロ酢酸(TFA)に変化し、飲料水へのTFAの沈着につながるため、使用量の増加に伴う健康と環境への懸念を定期。

 

冷凍分野は、安全性、食糧供給、人間の快適性を損なうことなく、生物圏でのPFAS蓄積の原因となっているHFCの完全な廃止を先導する可能性を秘めていると警告した。

参考

Norwegian Researchers Develop Simplified Ejector-Based CO2 System

原著者:マイケル・ギャリー

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