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北欧諸国、自然冷媒をHFOより優先

デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フェロー諸島などの北欧諸国は、冷凍・空調・ヒートポンプ(RACHP)にHFOではなく自然冷媒を使用することを、公共調達のデフォルトオプションとして推進している。

自然冷媒を選ぶ理由

フィンランド環境研究所(SYKE)が主催したウェビナー「Green Public Procurement (GPP) of RACHP products – Nordic criteria(北欧におけるRACHPのグリーン公共調達基準)」で伝えられたメッセージの一つだ。同ウェビナーは、2021年10月23日に開催されたウィーン条約第12回締約国会議と、モントリオール議定書第33回締約国会議の合同会議のサイドイベントとして開催された。

 

北欧諸国は、2020年7月に冷媒に関する調達方針をまとめた報告書を、「Nordic criteria for Green Public Procurement (GPP) for alternatives to high GWP HFCs in RAC products. 」と題した文書にて発表している。報告書は25の製品カテゴリーについて、入札文書に直接挿入できるグリーン調達基準を策定した。その全体的な結論は「自然冷媒はほとんどのRAC製品に同等のコストで適用可能であり、GPPの選択基準として使用できる」というものであった。

 

報告書は、デンマークの独立系コンサルタント会社、Provice社のオーナーであるトマス-サンダー・ポールセン氏や、デンマーク技術研究所のプロジェクトマネージャー兼シニアコンサルタント、ペル-ヘンリク・ペーダーソン氏など、公共調達やF-ガスの専門家が行ったグリーン調達プロジェクトの成果である。彼らは、北欧化学物質・環境・健康ワーキンググループの下部組織である北欧オゾン・Fガスグループの支援を受けている。

 

フィンランド環境研究所のプロジェクトマネージャーであるタピオ・リーニカイネン氏は、ウェビナーの中で次のように述べる。「公共投資は通常、国のGDPの15〜30%を占めており、市場を革新と持続可能性に向かわせる大きな機会となっています。公的機関の巨大な購買力を、地球温暖化の緩和に利用しない手はありません」

 

更に、リーニカイネン氏はRACHP分野の調達を評価する際、地球温暖化係数、自然冷媒、エネルギー効率、機器の材料に含まれる化学物質のリスクが出発点となり、最終的な基準がヨーロッパやその他の国々で採用されることを期待していると述べた。

 

その上で、北欧諸国はこれらの基準をもとに、HFOより自然冷媒を優先的に選択した。最近の研究では、HFOとトリフルオロ酢酸(TFA)、パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)、R23の関連性も指摘されており、それらが自然冷媒を支持する理由の一つとなっている。

 

今回の宣言はデンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの欧州5カ国が7月15日に発表した、TFAと一部のHFCおよびHFO冷媒を含むPFASの規制に関する共同提案を、2022年7月までにREACH規則に基づいて欧州化学品庁(ECHA)に提出するという意向も反映されている。

広範な分析

グリーン調達プロジェクトチームは、結論を出す前に入札プロセス、エコラベル、EUエコデザイン指令の関連規定、RACHPセクターの市場と技術の評価など、さまざまな分析を実施。ポールセン氏は、RACHPは自然冷媒をベースとしており、エネルギー効率が高く、コストも同等であることが判明したとウェビナーで語る。これにより、RACHP分野でグリーン公共調達基準を設定することが容易となり、自然冷媒を有力な選択肢とすることができたという。

 

ウェビナーでは、スウェーデン環境庁の代表者が、冷媒の公共調達のためのグリーン基準に関する作業が進行中であることを参加者に伝えた。この基準は、「Nordic Green Public Procurement criteria(北欧グリーン公共調達基準)」を参考にしたものになる予定だ。同様に、ニュージーランドの代表者は、ウェリントンが温室効果ガス排出削減戦略の中で、GWPの高い冷媒をターゲットにするつもりであることを発表した。

 

自然冷媒をベースとした製品は、いずれもエネルギー効率が高く、コストもHFC製品と同等であることが判明しています。

Provice社 トマス-サンダー・ポールセン氏

 

参考

Nordic Nations Favor NatRefs Over HFOs in Procurement
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

 

原著者:トマス・トレビザン

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