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多彩さが光る日本熱源システムの新ラインナップ

2019年9月に、日刊工業新聞主催の「第22 回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」にて、日本熱源システム株式会社の空冷式CO2単独冷媒冷凍機「スーパーグリーン」が、優秀賞を受賞した。さらに同機は、12月発表の「2019年度省エネ大賞」でも中小企業庁長官賞を受賞するという快挙を達成。納入先も順調に拡大しているなど、2019年は同社にとって、大きな飛躍の1年となった。それでも同社は、マーケットおよび機器開発で常に前進を続ける。代表取締役社長の原田 克彦氏に、受賞への思いや最新の動向を訊ねた。
 

文: 岡部 玲奈、佐藤 智朗

受賞によって証明された方向性の正しさ

2019年12月23日に発表された「2019年度省エネ大賞」(主催: 一般財団法人省エネルギーセンター)は、国内の産業、業務、運輸各部門における優れた省エネに関する取り組みや、先進的で高効率な省エネ型製品を表彰する制度である。日本熱源システムは同賞において、製品・ビジネスモデル部門の中小企業庁長官賞を受賞した。CO2冷媒採用による環境負荷低減だけでなく、R22冷媒冷凍機と比較して約24%の省エネ効果、猛暑時における冷却能力低下を防いだユニット設計など、多角的な観点から高い評価を受けた形である。
 

同賞の応募が開始されたのは、2019年6月のこと。書類審査による一次審査、発表審査、現地確認からなる二次審査を経て、ようやく今回の受賞までたどり着いた。同年9月26日に受賞した「第22回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」優秀賞も含め、「地球にいいね!」を合言葉に開発を続けてきた同社の、省エネ性と環境性の両立を目指した技術開発の取り組みの正しさが、証明されたとも言えるだろう。2012年より開発が始まった「スーパーグリーン」が目に見える形で支持を集めていることに、原田氏も喜びを口にする。

導入事例で示す高い市場対応力

日本熱源システムは、もう1つの華々しい舞台の用意を進めていた。それは自社の生産拠点である滋賀工場にて、昨年12月6日に開催された製品発表会だ。発表会では、大きく4 種類の新製品がお披露目となった。CO2冷凍機「スーパーグリーン」の新機種で、102kWの冷却能力をもつF3タイプと、5度から-30度までのブラインに対応した「ブラインチラー」、CO2の吐出側の高温をブラインや温水で回収できる「排熱回収型」、最後は44kW~220kW まで、7種類にラインナップが拡大されたフリーザー用の「食品冷却・凍結対応モデル」だ。

排熱回収タイプCO2冷凍機

「スーパーグリーン」の大型化は、市場のニーズに合わせて開発された。大型化に対応し設置台数が減れば、機器・工事費用の負担も抑えることができる。大型化への需要増は、今後ますます強くなるだろうと原田氏は考える。国分グループ本社株式会社の超大型物流倉庫、関西総合センターにも、同機が24台設置。

 

ブラインチラーも引き合いが多く、製氷工場や冷凍冷蔵倉庫、物流センター、食品工場のフリーザーなど、納入事例は幅広くなっている。現在も、2020年2月に完了を予定しているプロジェクトが複数進行中だ。非常に盛況の中に終わった製品発表会だが、開催を決めたのはわずか1カ月半前のことだったという。

 

「2019年の下半期に入り、エンドユーザーやサブコンなど、各方面からの問い合わせが急増しました。倉庫業界では特に、2020年から主力冷媒の1つであるR22の国内生産が廃止されることもあり、自然冷媒への関心が高まっていることが窺えました」と、原田氏は経緯を話す。当初は約60名の参加者を集めた、技術発表会を想定していた。しかし、実際に集まったのは約250名。想像以上の反響に、原田氏も驚いたという。参加者の中には、マレーシア、フィリピン、台湾、シンガポールなど東南アジアからも訪問者があった。

 

ショーケースの分野でも、日本熱源システムの活躍は目覚ましいものがある。メトロキャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社に3店舗で合計200台のプロパン内蔵型ショーケースを納入したのは、大きな実績となった。それに加えて、原田氏は販売代理店を務めるリトアニア共和国のショーケースメーカーFreorのショーケースおよびウォーターループシステムの採用にも力を入れていきたい考えだ。「同システムは、システム的にも非常にシンプルなものです。興味を示すお客様も少なくありません。2020年度はぜひ、このシステムでも実績を重ねたいところです」

CO2ブラインチラー

目指すは1歩先を行く技術開発

2019年度に応募した、全ての補助金利用の申請が下りたことも、同社にとって喜ばしいニュースだ。イニシャルコストの高さがつきまとう自然冷媒機器にとって、補助金の有無が回収率にも大きく左右される。CO2の排出削減量は無視できないものの、イニシャルコストに関わる補助金の活用は、エンドユーザーにも非常に重要な問題だ。その成否を支えているのは、正確な数値に基づく提案だと原田氏は話す。

 

「スーパーグリーン」の納入台数は累計で約170台に達し、蓄積されたデータから数値を算出し、その上で提案するという体制が、すでに確立されている。「2012年から始まった技術開発を通して、この運転データは私たちのもっとも誇るべき強みとなっています」。原田氏の言葉を裏付けるように、「スーパーグリーン」導入による効果を実感できないというエンドユーザーの声はほとんどないという。補助金を活用した案件は、追跡調査が続くなど、メーカーの姿勢がより顕著となる。その対応も含め、エンドユーザーへの安心材料となるだろうと原田氏は話してくれた。

44kW〜220kW対応のフリーザ用CO2冷凍機

順風満帆な事業活動にあって、さらなる技術開発と市場開拓にも余念はない。大手メーカーの動向も注視しながら、1歩でも2歩でも他社の先を行く技術を導入し、環境性と省エネ性を両立した開発を続ける姿勢は変わらない。猛暑などCO2の課題も、完全に克服しているという。「その上で、今後1年間はパラレルコンプレッションやエジェクター技術など、より高効率なシステムへの投資に力を傾けていきたいですね」と、原田氏は口にした。
 

2020年12月には、実験センターも新設する予定だという。目指すのは、さらなる省エネ性を追求したCO2冷凍機の開発だ。大手企業で進む設備更新に対応するための、機器の大型化も忘れていない。2020年度の目標販売台数を100台前後とする、日本熱源システム。質実剛健な事業活動の先には、海外への販路拡大も視野に入れる。

『アクセレレート・ジャパン』26号より

参考記事:

「第22回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」