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続々と新製品を投入する日本熱源システム。補助金採択数が昨年比1.5倍に迫る

環境省 令和2年度「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」の第1次公募にて、合計20の案件が採択された日本熱源システム株式会社。第2次公募でも3件が採択され、昨年を大きく上回る実績を残す。

 

この好調からさらに前進するため、代表取締役社長の原田 克彦氏は、さらなる技術開発に向けた動きを加速させると語った

主力機「スーパーグリーン」の大型機が飛躍

第1次公募の補助金では、同社が手がけた案件が20件(冷凍冷蔵倉庫14件、食品製造工場6件)採択され、第2次公募についても、3件(冷凍冷蔵倉庫1件、食品製造工場2件)採択されたという。令和元年度の通算採択数は16件だったため、現時点で約1.5倍増の実績で、申請した案件が100%採択されたという。

 

昨年12月6日に、弊社の滋賀工場にて行った製品発表会では、検討中のエンドユーザー様と直接のコミュニケーションができました。それぞれの製品を目の当たりにして、『機は熟した』と判断し、CO2採用に踏み切った方もいました」(原田氏)

 

第1次公募では、20案件で50台以上のCO2単独冷媒冷凍機「スーパーグリーン」を納入する予定。注目は、昨年新製品として販売を開始した大型機のF3(冷却能力:102kW)が、これまでの主力機であったF2(冷却能力:68kW)を上回る台数まで伸びているという点である。

 

冷却能力が約1.5倍に上がることで、トータルの台数も2/3に減らすことができる。冷凍機だけでなく配管工事等も含め、トータルでのイニシャルコスト削減に寄与することが主な要因だと原田氏は言う。かねてからエンドユーザーの要望に多かった大型化へのニーズに、見事応えた形だ。

「ユニットのサイズが、エンドユーザー様の工場への搬入の課題がクリアできればという前提はありますが、技術的にはいわゆる『F4タイプ』のような、さらなる大型化も視野に入れて開発を進めています」(原田氏)

 

本年度の「スーパーグリーン」の販売台数は、約80台を予定。これを達成できれば、CO2冷凍機の累計出荷台数は約250台になる見通しだ。

 

日本熱源システムの納入実績は国内が中心だったかが、製品発表会では東南アジアを中心に海外の来訪者も目立った。現在はマレーシア、フィリピンの2カ国の冷凍冷蔵倉庫にて、具体的な商談が進む。

「HFC、HFOではなく自然冷媒」という選択を着実に確立していきたい

同社が製造・販売する大型機の活躍は、アンモニアチラー「ブルーアストラム」にも見ることができる。製氷工場、食品工場、化学会社などに納入実績を持ち、400kW〜1,800kWと、現在CO2ではまかないきれない大容量にも対応。今後、製薬会社への納入も決まっている。

各事業者は機器の新設・更新にあたり、R1234等のHFOも検討材料に入るが、「HFOではダメだ」とNoを突きつける事業者も増えている。

 

「環境配慮だけでなく、HFOは安定稼働・制御といったコントロール面でも、決して万能ではありません。その点、アンモニア冷媒は長い歴史によって確立した技術です。安心面・コスト面でのメリットを押し出しながら、じっくり販売台数を増やしていくつもりです」

日本熱源システム株式会社 代表取締役社長 原田 克彦氏

狙うは「日本独自の新システムの開発」

今後の開発では、目指すのは、パラレルコンプレッションやエジェクターシステムを導入したCO2冷凍機の開発だ。いずれもヨーロッパでは確立されているシステムだが、日本国内で開発できる体制をつくり、最終的には「日本独自の新システム開発」を目指す。

 

また、より高い温度帯に対応した冷却設備にも、挑戦の手を広げていく考えだ。「15℃以上の温度帯にも対応し設備を開発できれば、さらにCO2の用途が広がり市場も拡大することでしょう」(原田氏)

 

2021年12月には、同社の滋賀工場にて新たな製品開発センターの開設を予定している。コロナ禍だが受注状況が好調ないま、10年先を見据え、より前進するための積極的な投資を貫く。

2022年度で事業の節目を迎える補助金制度に対しても、2つの姿勢で臨む。1つはさらなる補助金制度継続のため、大手企業と連携しながら政府へ働きかけていくこと。もう1つは、「補助金なしでも取り組む」と声を上げてくれるエンドユーザーを、どれだけ生み出せるかだ。

 

「補助金を使用しない納入事例は、年々増えています。私達も『冷凍機をCO2化することで、25%〜30%の省エネになる』という点を、強調して伝えているのです。環境配慮だけではなく、経済面のメリットもあること。それを実感してもらうためにも、結果を出すことに注力していきます」(原田氏)

 

目指すは、「CO2なら日本熱源システム」という市場の声を確立した地位を築くこと。この2、3年が勝負と語る原田氏の挑戦は、まだまだ続く。