PARTNERS
日本

【ATMO APAC Summit 2022】環境省、次年度以降の補助事業の注目集まる【政策動向セッション】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

政策動向セッションには、環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏が登壇。同省がすすめる代替フロン削減に向けた取り組みが紹介された。特に、2022年度で区切りを迎える省エネ型自然冷媒機器の導入補助事業の行方に注目が集まった。

代替フロン削減の重要性を再確認

2020年度の温室効果ガスの総排出量は、11億5,000万トンとなった。2013年度から減少傾向を維持しており、1990年に観測開始された排出等の算定が開始されてから最少を記録している。一方で、代替フロンの排出量は近年大きく増加傾向にある。2020年の排出量は5,170万トンCO2であり、日本全体の温室効果ガス排出量の4.5%を占めるまでに至る。

 

代替フロンの用途については、冷媒用途が9割以上を占める。代替フロンの排出量の内訳だが、業務用の冷凍空調機器が7割を占めているため、対策が非常に重要だ。

 

代替フロンの増加傾向の要因となっているのが、いわゆる特定フロン=CFCからHFCへの転換だ。特定フロンが全廃された今、今後の取り組みはHFC対策となることは間違いない。今後は、代替フロンから自然冷媒に転換を進めていく必要があると、豊住氏は強調する。

 

2020年10月、菅義偉前総理大臣の宣言によって、我が国は2050年のカーボンニュートラルに向けて大きく舵を切った。昨年10月には地球温暖化対策計画、そしてパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略が閣議決定されている。

 

地球温暖化対策計画の中では、平成28年に閣議決定された以前の計画に比べて削減目標を大きく強化。2030年度において2013年度比で46%削減を目指す。同計画内において、代替フロン削減目標も2013年度比で-55%という削減目標が定められている。「この2030年の目標に向けた、勝負の10年であるとに考えております」(豊住氏)

 

環境省によるフロン類対策の全体像としては、主に二つの政策から成り立つ。一つはモントリオール議定書に基づく特定フロン・代替フロンの生産量・消費量の削減のため、フロンの製造及び輸入の規制措置を講ずるオゾン層保護法。もう一つはフロン類の排出抑制を目的として、業務用冷凍空調機器からの廃棄時のフロン回収義務など、フロン類のライフサイクル全般にわたる排出抑制対策を規定するフロン排出抑制法だ。

 

特にフロン排出抑制法は令和元年に改正(令和2年4月に施行)された。法改正の周知のためにさまざまなPRを実施したが、効果はもう少し様子を見る必要があるだろう。フロン廃棄時時回収率は2020年に微増の41%(前年は38%)となっているが、2030年の目標75%回収率には、まだ心細いと言わざるを得ない。令和3年度以降の回収率上昇に期待したいところである。

補助事業の気になる行方

代替フロン削減において、フロンを「使わない」ということが根本的解決において重要だ。環境省では2005年より、フロンを使用しない自然冷媒採用の省エネ機器の導入促進を、形を変えながら支援してきた。導入が確定した件数は、累計2,700件にものぼる。

 

冷凍冷蔵機器は、一度導入されると非常に長い期間使用される。従って、より早く低GWP冷媒機器を導入していくということが重要だ。順次GWP値の低い冷媒を対象とするという方法もあるが、環境省は一気に自然冷媒と一足飛びに環境対策を進めてきた。

 

どうしてもフロン冷媒から別の自然冷媒に変えるとき、機器の効率が下がるのではという懸念もエンドユーザーには存在する。同事業は、フロンよりも高効率の機器を支援するということで、省エネ性能を高めるという一石二鳥を狙った事業として成立してきた。

 

現在実施している「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」事業は2017年から開始され、今年度が区切りとなる。多くの関係者が関心を寄せる今後だが、環境省では2022年に入り、中央環境審議会に炭素中立型経済社会変革小委員会を設置して議論を交わしてきた。

 

フロン対策については、暮らしに欠かせない食を支える冷凍冷蔵分野において、自然冷媒機器の導入、IoTの導入などにより、温室効果の高い代替フロンの排出抑制、および省エネ化による脱フロン・脱炭素化を進めていくことの必要性が明記された。

 

6月7日に閣議決定された「新しい資本主義」のグランドデザインおよび実行計画のフォローアップにおいても、代替フロン排出量の早期削減に向けて、冷凍冷蔵機器の自然冷媒への転換、次世代冷媒機器の開発の集中的な支援が行われるよう、2022年度中に措置を講ずることとされている。

  

冷凍冷蔵機器の自然冷媒への転換が改めて明記されたことをしっかりと受けとめ、より効果的な形にしたいと考えているところでございます。

環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏