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【ATMO APAC Summit 2022】三崎恵水産、エネルギーのサステナビリティ戦略【エンドユーザーパネル】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

エンドユーザーパネルでは、株式会社三崎恵水産 代表取締役社長 石橋 匡光氏が登壇。冷凍マグロを取り扱う同社は、サステナビリティ戦略の一環として株式会社前川製作所の自然冷媒機器導入を決断した。

2012年よりサステナビリティ戦略を展開

三崎恵水産は、神奈川県三浦三崎港で冷凍マグロを取り扱っている。50年以上の歴史を持ち、販売先の70%以上がホテル、外食、旅館だ。同社の特徴として、卸しだけではなく飲食事業も営む。東京・横浜・沖縄で国内11店舗、シンガポールに4店舗の他、オンラインでのマグロ販売も行う。横浜本場市場では、仲買業を持ち生鮮マグロを出荷している。

 

同社は『50年後にもしっかりと旨いまぐろを!!』をミッションに抱え、未来の世代にも美味しいマグロを届けることを重要なテーマとして経営している。そのためのサステナビリティ戦略として、2012年からさまざまな施策を展開してきた。

 

  • 10kg未満の小型マグロ(メジマグロ)の取り扱いの廃止
  • 巻き網船によるマグロ漁を行わず、漁獲枠で割り当てられたマグロのみ仕入れる
  • 2020年、サステナビリティ認証のMSCを扱うためのCoC認証を取得

 

また、マグロという資源をムダにしないよう、マグロの加工残渣を使用した「マグロ肥料」を開発し、地元農家に提供するといった活動も続ける。

 

マグロはその鮮度を維持するのに、-60℃という超低温が必要となる。ここにかかる膨大なエネルギーを賄うため、2012年から太陽光発電(10kW)を設置するところから、エネルギー・環境問題にも取り組みはじめた。そして2022年、フロン冷凍機から自然冷媒冷凍機へと転換。現在は自社工場に、200kW規模の太陽光発電設備を増設しているところだ(2022年6月時点)。

 

冷凍機の老朽化をきっかけに行われた機器更新は、2020年より調査が開始された。直面したのは新設冷凍機の設置スペース問題だったが、自社工場の屋根上に設置することで解決した。

 

同計画は、2021年の環境省『脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業』に採択。2022年にはR&Iより「環境省グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2020 年版」の「グリーンローンに期待される事項」に適合の認定を受け、横浜銀行の「SDGsグリーンローン」第1号となる他、りそな銀行「SXフレームワークローン」に適合し資金を調達した。

年間232.9トンのCO2削減を試算

三崎恵水産は、冷凍まぐろの品質を維持する超低温(-50°C以下)の保管が実現できる、省エネルギー性の高い自然冷媒機器を選定。選ばれたのは、株式会社 前川製作所が提供する各種冷凍機だった。実際の更新は、以下のように進められた。

 

◎冷蔵室(-55°C)
レシプロ式圧縮機×3台(R22使用)
→空気冷凍システム「PascalAir R30」×2台

 

◎前室(-25°C)
コンデンシングユニット×1台(R22使用)
→CO2冷媒採用ノンフロン冷凍機システム×1台

 

◎冷蔵室(-35°C)
レシプロ式圧縮機×3台(R22使用)
→CO2コンデンシングユニット「COPEL F30-20」×1台

 

機器更新の結果、CO2削減効果(試算)は年間232.9トンを実現できるという。

 

石橋氏は、今後も中小企業が自然冷媒機器を導入しやすくなるよう、メーカーに対して技術開発のさらなる進歩(高効率、高安全性機器の開発、コストダウン、工期短縮など)を期待すると述べた。さらに、国や地方自治体による補助事業の推進にも期待を寄せた。

 

冷凍マグロは、鮮度と引き換えに圧倒的なエネルギーを要する産業です。これからこの産業を発展させるため、我々も種の保存だけのサステナビリティだけではなく、エネルギーのサステナビリティも考えていきたいと思っています。それが今後、我々が50年後も冷凍マグロ業を続けられる道だと考えております。

株式会社三崎恵水産 代表取締役社長 石橋 匡光氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

株式会社三崎恵水産 代表取締役社長 石橋 匡光氏