世界が新型コロナウイルスのワクチンの製造・流通に向けて動く中、創業5年のMirai Intexは、超低温(ULT)システムを新型コロナウイルスのワクチンの保管及び凍結乾燥試験と位置づけ開発を進める。
Mirai IntexのULTシステムは、大気からの空気(R729)を、いわゆるエアサイクル冷凍の冷媒として使用。同技術は空気の加熱および急速冷却により、圧縮と膨張プロセスを繰り返す。なお、プロセス間で相変化は発生しない。同社によれば、このサイクルを繰り返すことにより、温度を-110℃まで下がられるという。
新型コロナウイルスワクチンの製造・管理には、-70〜-80℃の超低温が必要です。私達の冷凍システムは、-40〜-110℃の範囲に対応します。
Mirai Intex 開発ディレクター ウラディスラフ・ツィプラコフ氏
同製品は、オーストリアのウィーン、およびチェコ共和国のブルノにある生産施設で製造中だ。ツィプラコフ氏は、秘密保持契約のため顧客名こそ挙げなかったものの、今後数か月で同製品に対しての複数社が関心を示しており、大きな需要を期待しているという。
凍結乾燥およびプロセス冷却の両方に対応した超低温機について、Mirai Intexは2021年の第1四半期か第2四半期に、「Mirai Cold 15 T」をリリースする予定だ。新しいモデルは-40〜-110℃の超低温を維持でき、冷却能力は最大10kWになる見込みである。同社は更に大容量の「Mirai Cold 23 T」も提供するほか、2021年には最大規模となる「Mirai Cold 80 T」をリリースする予定である。
ランニング低減に期待
Mirai Intexの機種は、同規模の他社製品よりも導入コストは高いものの、ランニングコストはメンテナンス、消費エネルギー共に大幅低減できる。「システムにオイルや潤滑油がなく、消耗品を補充する必要も、高度な訓練を受けたサービスも必要ありません」(ツィプラコフ氏)
ドイツのエンジニアリング会社、Refolutionは2020年10月、Mirai IntexのULTシステムの運転効率に関する比較研究を実施。比較対象には、液体窒素、HFCカスケードシステムなどが選ばれた。大規模に最適化されたカスケードシステムは、中型対応のMirai Intexのシステムより、全体負荷における最大COPは高くなるという結果になった。
-80℃の温度帯の場合の最大COP
・カスケードシステム:0.46
・Mirai Intex:0.36
・液体窒素:0.2
※ただし、今後新発売されるMirai Intexの最大COPは、同じ環境で0.5になると予想されている。
一方、部分負荷ではMirai Intexシステムはのほうが、従来の蒸気圧縮システムより「より効率的な操作でプロセスパラメーターの変更に適応」できると、Refolutionは報告している。
参考記事
Ultra-Low-Temperature Air-Cycle Machine Ready for COVID-19 Vaccine Storage and Tests