2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。
自然冷媒技術を牽引するメーカーたちの、技術動向の最新事例を知れる「技術ケーススタディ」では、三菱重工冷熱株式会社 エンジニアリング事業本部 プラント統括技術部 主席 田代 英史氏が登壇。自然冷媒促進のため、同社が進める「ハイブリッドシステム」について発表した。
製品拡充の歴史と今
自然冷媒への転換が加速する中、三菱重工冷熱は地球環境保全・温暖化防止の観点で自然冷媒化を推進。エンドユーザーが自然冷媒へスムーズに移行できるよう、自然冷媒製品のラインナップ強化と容量別製品群の拡充に取り組んできた。
同社はアンモニア冷媒機器を中心に、自然冷媒化を進めてきた。
2005年からはアンモニア/CO2の「C-LTS」シリーズをはじめ、2017年にはCO2冷凍機の「C-puzzle」シリーズを順次リリース。2021年には超低音域での自然冷媒化ニーズを実現するため、空気冷媒冷凍機をラインナップに追加した。
こうした機器開発と平行して、三菱重工冷熱は容量別製品群の拡充も強化してきた。
CO2冷凍機「C-puzzle」シリーズは、2017年に10馬力機を市場へ投入後、2018年に20馬力、2020年に40馬力と容量を拡大し販売。2021年には大容量化ニーズに応えるべく、80馬力冷凍機「C-puzzle80」を追加した。
「C-puzzle80」は過去の「C-puzzle」シリーズの特長を踏襲。高効率なスクロータリーコンプレッサーの大容量化を実現し、あらゆる設置環境に対応するため、軽容量化と100mの長配管と20mの高低差にも耐えうる設計となっている。設備能力維持、設備保全への対応も兼ねて、遠隔データ収集機能も搭載している。
アンモニア/CO2冷凍機「C-LTS」シリーズも、定格出力24kW〜125kWと幅広いニーズに対応している。水冷式を標準としつつ、冷却塔が不要な「エバコン型」「空冷エバコン型」なども用意。2021年にはエレベーターに搬入可能なユニット「C-LTS E-nr(イーノル)」を発売。従来機と比較して設置面積を31%、重量を27%軽減している。
ハイブリッドシステムの提案
田代氏は、こうした二つの冷凍機をエンドユーザーの用途に応じて提案していると話す。住宅地に近いのでアンモニアの導入は避けたい、設置場所に制限があって困っている等の要望に対しては、CO2機器を提案。大容量の冷蔵庫で効率よく冷やしたい、COPが高い機械が良い等の要望に対しては、アンモニア/CO2機器を提案するといった形だ。
そして、三菱重工冷熱はあらゆる設置環境に耐えられるCO2冷凍機と、高効率となるアンモニア/CO2冷凍機を組み合わせた「ハイブリッドシステム」の提案を進める。田代氏は、同システムはF級が主の冷凍冷蔵倉庫において、部分的に温度帯が高い冷蔵室があり、かつ冷凍機の設置スペースに制限がある場合に有効だと説明する。
実際にハイブリッドシステムを採用する際は、-F級冷蔵室に対して、は「C-LTS」シリーズによるセントラル方式を採用し、C級には「C-puzzle」シリーズを個別分散で設置するといった形が一般的になるという。
ハイブリッドシステムのメリットは、高効率なアンモニア/CO2冷凍機を主冷凍機として採用しつつ、高い温度帯であるC級冷蔵室に別途CO2冷凍機を個別設置することで、冷凍機の負担を軽減しつつ高効率運転を実現できる点にあるという。大型機が置けない設置スペースにも対応可能であることや、冬場の高効率運転も大きなメリットであると、田代氏は話す。
ハイブリッドシステムの事例として、田代氏は31,095トンの収容能力を持つ冷凍冷蔵倉庫の事例を紹介。この倉庫には「C-LTS 125kW」3台と「Cpuzzle20」12台が採用された。同システムの採用により、年間使用電力量を14%削減できると三菱重工冷熱は試算している。
こうした取り組みにより、CO2冷凍機は累計1,000台以上を出荷。アンモニア/CO2冷凍機も、累計200台以上の出荷実績を実現している(いずれも2021年までの数字)。
多種多様な製品群を今後もそろえていき、皆様の自然冷媒化の移行の一助になれればと考えております。
三菱重工冷熱株式会社 エンジニアリング事業本部 プラント統括技術部 主席 田代 英史氏
参考
「ATMO APAC Summit 2022」
三菱重工冷熱株式会社 エンジニアリング事業本部 プラント統括技術部 主席 田代 英史氏
