ドイツの大手卸売業者、Metro AGは2030年までにCO2排出量を、2011年比で50%削減するという非常に野心的な目標を掲げている。2020年、同社は2011年比でCO2排出量34%を削減することに成功。目標へ向けて順調に前進している。
5つの戦略で積極投資
この喜ばしいニュースは、Metro AGのエネルギー管理担当ディレクターであるオラフ・シュルツ氏が、shecco主催のバーチャル自然冷媒トレードショー「ATMO VTS 2.0」にて語ったものである。「残り16%は、簡単には達成できないと考えています。腕立て伏せ50回を達成するのも、最後の15回は辛いでしょう。それと同じです」(シュルツ氏)
メトロの2030年目標は、5つの戦略から成り立つ。
- エネルギー効率の高い対策に投資し、従業員の行動変革に取り組む
- F-Gas Exit Program(FEP)に則り、すべての新規および改装された店舗では、自然冷媒のみを使用する。
- The Smaragd projectにより、店舗屋根に太陽光発電パネルを設置し、再生可能エネルギー供給を基本とする(Smaragdはドイツ語で「エメラルド」を示す)。
- HEP(Heat Exit Program)の推進。
- The Greenstore + Zeus initiatives (Zero emission store)により、新店舗、改装店舗すべてがゼロ・エミッションであることを目指す。
現在、Metroは新しい冷蔵システムについて、エジェクターと熱回収を備えたトランスクリティカルCO2を標準的なソリューションとする。小規模な修理や通路の改装には、プロペン(R1270)内蔵型システムを採用する。
FEPプロジェクトは、順調に進んでいるとシュルツ氏は言う。Metroは現在、トランスクリティカルCO2冷蔵システムを導入する店舗が121店あり、うち30店舗がエジェクター技術を採用。2021年には、最低でも20店舗を追加する予定である。店舗はロシアを含むヨーロッパ各地にあり、サブクリティカルCO2(R134とカスケード接続)、アンモニア、R1270を導入した74の店舗・施設も別に有しているという。
次にどの店舗で自然冷媒転換を行うか決定する際、Metroはシステムの使用年数、過去2年間の冷媒の平均充填量、現地市場でのHFCの価格、投資回収期間などを考慮。その上で、短期的な法的義務によって冷媒転換が必要となる国を優先する。省エネルギーの面でもMetroは前進しており、100万ユーロ(約130万円)以上の投資を実施。2020年度は、オープンキャビネットへの扉設置に100万ユーロ以上を投資した。
新型コロナウイルスの影響
Metroは卸売業であり、ホテルやケータリング業者などが顧客の大半を占めるため、他の食品小売業ほど新型コロナウイルスの影響は受けていない。2020年の自然冷媒転換はやや減速したものの、Metroは「再び攻めるための準備」をしているとシュルツ氏は話した。
「問題は冷媒そのものよりも、どの程度漏えいが起きたかです」(シュルツ氏)。そう語った同氏は月次レベルでの測定データにおいて、Metro AGは重要なパフォーマンス指標を漏えい率で考えていると付け加えた。国によって漏えい率は異なり、オーストリアでは1.2%と非常に低い一方、ウクライナは過去12ヵ月間で26%の漏えい率を記録している。
メトロ社は、24カ国以上で「Metro」および「Makro」のブランド名で食品および非食品を販売。ヨーロッパを中心に、インド、日本、その他のアジア地域にも進出している。各国の法規制とデータに基づき、残り16%分の「腕立て伏せ」の完遂に、Metroは引き続き挑戦を続ける構えだ。