PARTNERS
日本

自然冷媒ケースのさらなる採用から店舗のリデザインへ。メトロ ジャパンが模索する「次の戦略」

メトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン 株式会社(以下、メトロ ジャパン)は2019〜20年、R290(プロパン)内蔵型ショーケースを3店舗に合計200台設置。アクセレレート・ジャパンが取材した川口安行店では65台ものショーケースが採用され、理想に近い値で高い省エネ効果を発揮している。

対前年比で40%の省エネ効果を発揮

ドイツに本社をおき、世界25カ国に670店舗以上を構える卸売企業グループ、メトロAG。その日本法人であるメトロ キャッシュアンド キャリー ジャパン株式会社(以下メトロジャパン)は、2002年に操業をスタートし、現在関東近県で10店舗を営業している。

 

2019〜20年は、川口安行店・千葉店・多摩店の3店舗で、AHT社製のR290内蔵ショーケースを200台設置。国内でも初と言える大規模導入は、業界でも大きな話題を呼んだ。

 

設置からの直近約8か月のデータについて、マネジメント本部 アセットマネジメント部マネージャーの船守 健司氏は川口安行店のデータを引用。対前年比で40%の省エネ効果を実現していると話す。

 

例えば、2019年12月のデータは導入前の消費電力量が8423.57kWhだったのに対して、導入時の数値は5527.57kWh。前年比で65.62%と、導入直後から消費電力量の削減に貢献していることが分かる。それ以降のデータについては、次の通りである。 

  • 2020年1月 67.91%(導入後:5427.83kWh 導入前:7992.32kWh)
  • 2020年2月 70.10%(導入後:5123.78kWh 導入前:7309.29kWh)
  • 2020年3月 65.97%(導入後:5642.92kWh 導入前:8553.82kWh)
  • 2020年4月 61.89%(導入後:5456.87kWh 導入前:8817.07kWh)
  • 2020年5月 55.39%(導入後:5941.21kWh 導入前:10726.51kWh)
  • 2020年6月 57.75%(導入後:5923.21kWh 導入前:10256.49kWh)
  • 2020年7月 56.05%(導入後:6256.61kWh 導入前:11163.25kWh)
  • 2020年8月 48.12%(導入後:6703.19kWh 導入前:13931.04kWh)

こうして見ると、消費電力量が冬場に比べ2倍に増える夏場でも、前年との消費電力量の差が大きく開いていることが分かる。川口安行店の導入前のショーケースは、既に島型かつ扉付きであり、気密性が高く冷気が外に逃げにくい。

 

一般的なオープンケースとの入れ替えでこのR290ケースを導入したなら、さらに大きな省エネ効果を得られるだろうと船守氏は考える。

 

「当初の省エネ効果の想定は、もう少し高いものでした。しかし、計画時以上の電気代の値上げや今夏の例年以上の高温といった外部状況を考慮すると、消費電力で示す数値以上の省エネ効果があったと思います」(船守氏)

店舗全体のリデザインも含め、長期的な計画を

船守氏は、R290内蔵ショーケースの導入を支えた日本熱源システム株式会社と連携し、次の計画を立てている最中だ。現在同社が運営する店舗の多くは、オープンから10年以上経過している。冷ケースの老朽化なども進むが、それだけを理由に機器を更新することは容易にできない。

 

R290内蔵ショーケースの事例のように、最新の機器に更新することでのベネフィットが生まれるビジネスケースを作りたい。船守氏はそう語り、日本熱源システムに対して多段ケースやオープンケースなど、自然冷媒ケースのバリエーションをさらに広げて提案してほしいと依頼。

 

短期的には内蔵ケースを中心とした入れ替え計画を模索しつつ、中長期的には店内の運営システム全体を、抜本的に見直すことも検討している。最終的に、自然冷媒システムの導入で会社の利益につながるか。この大前提を踏まえつつ、冷凍機やウォーターループシステムなどの採用も検討していきたいという。

 

船守氏は、2020年2月開催のユーロショップを訪問。日本と比べて、圧倒的にメーカー数が多く、欧州では自然冷媒の機器が既にスタンダードになっていることに驚いたという。

 

今選択した機器設備は今後15年、20年使われることになります。近視眼的な損得で判断することなく、15年、20年先の未来から見て何を選択すべきかを考えることが重要だと思います。

 

照明業界においても、今では当たり前になっているLED照明も、出始めの頃は蛍光灯に比べて暗い、演色性が低い、粗悪、そして高額と、全く太刀打ちできませんでした。製品はユーザーに広く普及されることによって、品質は高まり、製品価格が下がりさらに広がります。

 

コストが下がれば補助金に依存することもなくなるでしょう。日本国内でもこの良い循環を作ることが重要です。私達を含めたユーザーが使うことで、欧州のように『自然冷媒が当たり前』という認識を築いていきたいところです

メトロ キャッシュアンド キャリー ジャパン株式会社 アセットマネジメント部 船守 健司氏