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【ATMO APAC Summit 2022】前川、98年の歴史で積み上げた自然冷媒ソリューションの展開【業界リーダーセッション】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

「業界リーダーセッション」には、創業以来自然冷媒に取り組み続ける株式会社前川製作所より、ソリューション事業本部 食品部門 藤垣 則仁氏が登壇。前川製作所のこれまでの歩みとともに、フラッグシップモデルであるアンモニア/CO2冷凍機の「NewTon」と、省エネ・省スペースを両立した「COPEL」の最新情報が紹介された。

COPEL誕生

前川製作所は、CO2排出量削減、省スペース、安全に長く使えるをテーマに、次の時代を創る時代へ先に変化していけるよう、自然冷媒冷凍機の商品開発を心がけてきた。1924年に製氷会社として創業し、産業用冷凍機の販売を始めて以来、自然冷媒の開発に取り組み続けている。

 

創業当初より取り扱ってきたアンモニアはもちろん、1980年代には炭化水素系冷媒にも対応し、CO2も20年以上にわたり取り組んできたという歴史を持つ。冷凍機ユニットについても、アンモニアローチャージ型冷凍機エバコンユニット、業務⽤CO2給湯ヒートポンプ「ユニモ」、NH3⾼温ヒートポンプ「Plus+HEAT」とさまざまな機種を開発。

 

2008年の「NewTon」シリーズ販売開始も含め、創業以来98年、冷凍冷蔵に関する様々な分野に取り組み、自然冷媒に関するノウハウを蓄積してこられたことが、前川製作所の強みである。

 

そんな同社が、2019年に販売を開始したのがCO2直膨コンデンシングユニット「COPEL」だ。

 

前川製作所はこれまで、中型・大型機種での要望が多く答えてきた。一方で、空冷フロン冷凍機が多く導入されている産業用小型機種での代替としての自然冷媒冷凍機登場を、望む声も多かった問いう。

 

産業用冷凍機では、大型機種では水冷式のラインナップが多く、効率が高いものの冷却塔など付帯設備の設置スペースが必要だ。一方、小型機種では設置スペースを極限まで抑えた空冷式を採用するものの、効率面では水冷式に劣るという理解が当初は多かった。

 

現在では自然冷媒冷凍機の普及が進み、水冷式でも小型機種の開発が進み、空冷式でも中型以上の機種が増え、エンドユーザーの選択肢が増えている。

 

それに合わせて、前川製作所にも徐々に中型小型機種販売のリクエストが増えてきたと藤垣氏は話す。当初は水冷式小型機を考えていたが、エンドユーザーからは空冷式を望まれることが多かった。

 

同分野の先駆者であるパナソニック株式会社、日本熱源システム株式会社にて展開された空冷使用冷凍機が市場で評価されていることを受け、前川もより多くのエンドユーザーの要望を満たせるよう、小型空冷機種の商品開発を強化。そして、CO2冷凍機「COPEL」が誕生したのである。

 

CO2冷媒に関しては、前川製作所では2000年に300KWの製氷設備、600KWクラスの給湯用設備を使用した経験がある。この知見を活かして、2003年よりCO2ヒートポンプ「ユニモ」を開発し、1000台以上の実績を積み重ねてきた。こうしたノウハウをすべて注ぎ込み、「COPEL」を開発。2019年より販売開始し、出荷台数は2022年に100台を超える見込みだ。

 

気になる省エネ効果だが、F級冷蔵倉庫でR448A冷媒を採用した前川製作所製の水冷フロン冷凍機と比較して、設計ベースで11%以上の省エネを実現できるという見込みは立てています。

 

同社調べによると、既設フロン冷凍機と比べても実際の実績で20〜35%の省エネ効果が出たことを確認。空冷式CO2冷凍機でも、十分省エネ性が高いことを証明できた。

 

「COPEL」シリーズは、実際に下記のエンドユーザーに納入されている。(詳細は記事最後のスライドにて記載)

  • テーブルマーク株式会社グループ
  • マルハニチロ株式会社
  • 株式会社焼津冷凍
  • 株式会社三崎恵水産
  • 湘南東洋株式会社
  • 株式会社ダイレイ
  • 日水物流株式会社

CO2冷凍機の「大型化」にも着手

「COPEL」は、販売当初低温用で冷凍能力30kWクラスの「F30」、チルド保管倉庫向けの「C70」と2機種を販売開始した。ユニットクーラーは、「COPEL」にマッチした専用機を使用している。

 

2021年よりからは、かねてより要望のあったCO2冷凍機の大型機種で、庫内温度-25度に対して冷却能力140kWクラスの「F140」シリーズを販売開始した。

 

一般的に、CO2冷凍機は外気温度が43℃になると、30℃と比較してCOPが約25%低下してしまう。同社は間接散水式によって外気温に対応しつつ、コイルに直接散水しないことで熱交換器の負担を軽減させている。夏季・冬季いずれでも省エネを実現した。冷却水についても、夏季で1時間あたり140リットルと抑えられている点にも注目したい。

 

2021年度では、環境省の脱フロン加速化事業を申請された2件のエンドユーザーに、合計3台の「F140」シリーズを納品。今年度はテナント向けの冷蔵倉庫を中心に、食品工場のマーガリン管理やスパイラル冷却などで、15台以上の出荷を予定している。

 

2022年4月からは、F30とF140の中間「F70」シリーズの販売を開始した。6月に開催された「FOOMA JAPAN 2022」でも、同機種を公開。今年度ですでに1件、冷蔵倉庫に2台の出荷を見込んでいるという。

「NewTon」第4代の開発

「NewTon」は、アンモニア冷凍機とCO2の2次冷媒方式を組み合わせた、省エネルギー型の冷却装置である。2008年の販売開始から、一貫してアンモニア保有量の削減と、COP向上の両立を追求してきた。2022年内には、累計販売台数が3,000台に達する見込みが立っているという。

 

新規エンドユーザーからの問い合わせだけでなく、大手企業からのリピート採用の声も多い結果、これだけの販売実績を積み上げることができた。のお客様からの購入だけでなく、リピートでご採用いただく大手企業様が大きく関係している。

 

多くのリピートが証明しているように、省エネ性能への評価は非常に高い。実際に、前川製作所製の水冷スクリュー冷凍機と比べて、実績でも16〜41%の省エネを実現。食品工場の中には、約60%の省エネを達成されたという事例も耳に入っていると藤垣氏は話す。

 

そして今年度、「NewTon」シリーズは第4世代のモデルチェンジが行われ、4月より出荷開始されている。6月の「FOOMA JAPAN2022」で初めて公開された同機種は、従来よりも夏季のCOPをさらに5%向上させ、冬季も10%のCOP改善を実現。

 

アンモニア保有量を冷凍能力1kWあたり192gと極限まで削減、-3dBの騒音改善や12%の省スペース化など、今まで以上に扱いやすいレイアウトに再構築されている。

2つのラインナップでエンドユーザーのニーズに応える

現在、前川製作所は「NewTon」に「COPEL」を組み合わせて、どちらも紹介することでより幅広くお客様へのご要望やご意見をお聞きできるようになった。実際に、当初「NewTon」を要望していたユーザーが、設置スペースの問題と省エネ面で「COPEL」を選択したり、大規模設備のニーズを受けて、「COPEL」から「NewTon」に選択肢を変えたというケースは少なくないという。

  

今後は全機種のデマンドレスポンス対応、予兆管理、保全システム導入を目指しつつ、前川製作所の強みである冷蔵庫や食品工場全体への熱エネルギー提案と組み合わせて、未来の冷却設備の運用やサービスの構築にも取り組んでまいりたいと考えております。

株式会社前川製作所 ソリューション事業本部 食品部門 藤垣 則仁氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

株式会社前川製作所 ソリューション事業本部 食品部門 藤垣 則仁氏 発表資料