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【ATMO APAC Summit 2022】前川製作所、自然冷媒の「選択肢拡大」の重要性を強調【技術ケーススタディ】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

技術ケーススタディでは、株式会社前川製作所 ソリューション事業本部 産業熱エネルギー部門 部長 江原 誠氏が登壇。同社が進める空調・プロセス分野における、自然冷媒技術の現在地を発表してくれた。

空調用途での自然冷媒の選択肢

SDGs、ESG投資の普及、2030年にCO2排出量46%削減という流れにより、CO2排出量削減が社会常識となってきた。その影響で、温室効果ガスを所有していることが、ビジネス上のリスクになりつつあると江原氏は説明。特に、「突発漏えいリスク」「入手リスク」「回収リスク」「価格高騰リスク」「法規制リスク」という大きな5つをはらんでいるという。

 

これらのリスクを回避する打開策こそが、脱フロンおよび自然冷媒への切り替えであり、産業用冷凍冷蔵分野だけではなく、空調分野でも自然冷媒の普及が求められるのだと、江原氏は話す。

 

空調用途における自然冷媒の選択肢について、前川製作所においてはアンモニア、炭化水素、CO2の3種が主なターゲットとなる。チラー、ブラインクーラーではアンモニアが多くの実績を有する。炭化水素も化学工場向けに、年2〜3台が出荷されているという。荷捌き室、低温空調用途で、CO2が活用されているという状態だ。今後、江原氏は「どの冷媒を選ぶのか」よりも「いかにして冷媒の選択肢を広げるか」のほうが重要だと話す。

空調・プロセス分野での実績

2022年6月時点で、前川製作所では以下のエンドユーザーの空調・プロセス空調にて、自然冷媒が活用されている。

  • 石油・ガス・化学工場(アンモニア、炭化水素)
  • 製薬会社(アンモニア、炭化水素、空気)
  • 飲料工場(アンモニア)およびビール・アルコール工場(アンモニア、CO2
  • 乳業・アイスクリーム工場(アンモニア)
  • 食鳥・食肉加工工場(アンモニア)
  • 給湯・加熱設備(アンモニア、CO2
  • 融雪設備(CO2
  • 荷捌き室空調(CO2
  • 工場空調(アンモニア)

 

現在、全設備を自然冷媒にしてほしいというエンドユーザー様からの要望が非常に増えている。空調をどう自然冷媒化するかについて、多くのアイディアを考えなければいけない状況にあると、江原氏は話す。

 

COPからみた空調分野での自然冷媒の特性についても、前川製作所のデータを用いて紹介された。3冷媒(アンモニア、炭化水素、CO2)のうち、もっともCOPに優れているのはアンモニア(4.45)で、炭化水素(4.41)、CO2(2.20)と続く。とはいえ、諸々の事情でアンモニアを忌避するエンドユーザーは少なくない。CO2を選択するエンドユーザーもいる中で、重要なのは「選択肢があること」だと、江原氏は強調した。

冷媒の選択肢・多様性を支える製品たち

空調用途にて、前川製作所が取り扱う製品群も紹介された。

 

まずは、アンモニアを使用する「スマートチラー」だ。600kWの冷凍能力を持つ冷水チラーで、冷媒充填量を65kg(冷凍能力1kWあたり105g)と、極力抑えている。もう一つは、同じくアンモニアを使用する高温ヒートポンプ「PLUS HEAT」である。180〜570kWの加熱容量を持ち、60〜85℃と非常に高温の温水出口温度を実現している。

 

過冷却製氷システム「SLEET」(アンモニア使用)は、工場全体のプロセス冷却をメインに使用されている。ユニット内で氷を蓄積し、氷を溶かしながら冷却を実施する。乳業会社に多く使用されており、30℃前後の水も1℃前後まで急速冷却できるのが特徴だ。氷は夜間に蓄積することで、効率的な運転を実現している。

 

炭化水素(R290)を使用したブランチラーも、化学工場向けに開発され展開されている。防爆エリアのある工場へ主に出荷されているが、安全装置を設けているので非防爆エリアにも設置可能だ。据付・施工・運転・保守が容易とメンテナンス性も高い。

 

様々な選択肢を持つことによって、社会の中に多くの自然冷媒機器が普及できると考えております

株式会社前川製作所 ソリューション事業本部 産業熱エネルギー部門 部長 江原 誠氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

株式会社前川製作所 ソリューション事業本部 産業熱エネルギー部門 部長 江原 誠氏