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マエカワの「パスカルエア」医療分野から注目集める

株式会社前川製作所の空気冷凍システム「パスカルエア」は、空気または窒素を冷媒とした、-50〜-90℃に対応した超低温専用システムである。日本食の象徴的な存在であるマグロの凍結保管で大いに活躍する同システムは、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、医療分野にその活躍を広げようとしている。

人にもマグロにも優しい冷凍システム

「パスカルエア」は超低温冷蔵庫内の空気を直接循環させる、開放型の冷却システムである。GWP0の空気を冷媒とし、圧縮機と膨張機を一体にしたターボ型膨張機一体型圧縮機をはじめとした独自技術により、-50℃以下の超低温での食品凍結・保管を可能とした。

 

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構)のプロジェクト「エネルギー使用合理化技術戦略的開発事業」で開発が進められた「パスカルエア」はモントリオール議定書および京都議定書により、HCFC、HFCの段階的削減という深刻な問題を抱えていた超低温冷蔵倉庫(特にマグロ冷蔵倉庫)に対して、現状を打破する大きな一手となったのである。

 

2020年11月時点で、「パスカルエア」は上記冷蔵倉庫を中心に、国内外含め100台以上を納入。納入先には製薬メーカーや化学メーカーも含まれている。環境配慮だけでなく高い省エネ効果も実現し、年間消費電力を最大50%削減可能だ。

自然冷媒と省エネルギーを両立した技術で「医療分野」への貢献を

2020年、終わりの見えない新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に対して、同年1月に米製薬会社大手のPfizerは、世界に先駆けてワクチンの製造を発表。そこからわずか10か月という驚異のスピードで、臨床試験で確かな予防効果があるという結果も発表されている。

 

こうした業界の動きに呼応するように、前川製作所にも、医療分野の企業から「パスカルエア」に関する問合せが大幅増加しているという。

 

2008年に発売された「パスカルエア」だが、2010年には超低温の環境が必要な医療・医薬品製造・理化学分野でも、応用展開が可能とされた。翌年2011年には同分野への納入も果たしており、着々と実績を重ねてきたという。

 

その成果と信頼を携え、前川製作所は医療分野からの要望に応えていく構えだ。「地球規模で安全と安心を担保する」を理念とする、前川製作所らしい挑戦と言えるだろう。

 

「ワクチンの完全性を守るうえで、コールドチェーン構築は欠かせない要素です。そして、人命に関わるものは同時に、自然環境にも優しいものであるべき」と前川製作所は考えている。

参考記事

【連載:変化に立ち向かうHVAC&R業界のリーダーたち】第8回 前川製作所〜変わらぬ姿勢貫く〜