2020年10月19日、株式会社前川製作所は⾷品⼯場のエネルギー消費量削減、CO2排出量削減に向けた事業戦略のひとつとして、CO2等の低GWP冷媒を⽤いたヒートポンプ(HP)によるエネルギー有効利⽤ソリューション事業を強化すると発表した。
食品工場の課題改善へ
本事業強化の背景として、食品工場の熱利用効率化に関する課題がある。同分野は自動化・IoTが急速に普及する一方で、加熱調理、殺菌、乾燥、冷却、凍結等、⽣産⼯程による冷熱・温熱の効率化は、あまり議論されてこなかった。
現在の食品工場の加熱・乾燥工程は、ガス焚もしくはA重油焚ボイラーを熱源に、蒸気や温水を供給するものが主流である。蒸気は非常に使いやすい反面、供給過程で多くのロスが発生。その有効利用率は平均54%(工場によっては3割程度)と試算されている。
食品工場の現状において、同社は低GWPヒートポンプを軸とする熱利用の効率化で、30%以上の消費エネルギー削減が可能であると見込んでいる。新事業計画の発足に合わせ、工業製品製造分野でエネルギー有効利用ソリューションに携わってきた社員と、食品加工の生産過程に精通している社員による食品熱エネルギーチームを新たに立ち上げ、食品工場の生産ラインに特化したHPによる熱の有効利用ソリューションの提供を強化する。
既存シリーズを生かしつつ、機器の改良改善も実施
同事業計画は2019年後半より、同事業強化の検討を開始。2020年3月末に組織を結成したものの、新型コロナウイルスの影響もあり6月1日より本格的に活動を開始した。
事業計画では、次の3点が重点施策として挙げられている。
・冷温水同時供給による加熱と冷却の合理化
・乾燥工程における供給熱源の省エネルギー
・低温環境下における除湿
これらの施策に対して、同社は多彩な熱源に対応した「ユニモ」シリーズをはじめ、既存商品をベースにソリューション提案を図る。一方で「ユニモ」シリーズも発売から年数が経っており、現在では使いにくい場面もある点から、食品工場での使用に適したサニタリー性、および低コスト化を目指してシステムが組めるよう機器の改良改善も行う予定だ。
同事業計画において、前川製作所は冷凍や凍結、冷凍冷蔵庫以外の食品分野に対して展開していきたい考えである。2020年12月時点では、紛体乾燥の給気空気の加熱をヒートポンプで行うことによる省エネ実現、デシカント除湿での大幅な省エネと結露対策、茹で麺システムでの冷水温水の同時供給など、複数の実績を重ねている。
これ以外にも、ノンフライ麺の乾燥機に対しての省エネ提案や、袋もの製品の殺菌・冷却におけるヒートポンプ利用において、検討を進めている段階だ。各種実績を積み重ねるのと並行して、低GWPの高温水循環ヒートポンプの実用化を目指す。