2021年6月1日(火)〜4日(金)に開催された「FOOMA Japan 2021」(主催:一般社団法人 日本食品機械工業会)。愛知県開催で、4日間で合計22,420人(海外からは19人)が来場した。
株式会社前川製作所はCO2冷凍機ユニット「COPEL」の中型機を初展示し、CO2直膨でのソリューションの拡大をアピール。同社は冷凍機のラインナップ拡充とともに、さらなる分野の開拓にも力を注いでいる。今回は前川製作所 技術企画本部 執行役員の町田 明登氏に同社の自然冷媒機器の開発や今後の展開についてインタビューした。
満を持して発売の「COPEL」中型機
前川製作所のブースで初披露された、中型低温用空冷式CO2冷凍機ユニット「COPEL」。連続式冷却冷凍装置「Thermo-Jack Rey」と並べて展示することで、食品工場のフリーザー熱源機として使用可能なCO2冷凍機ユニットであることをPRした。
町田氏は「弊社は競合他社と比べ、CO2冷凍機ユニットの販売では後発に位置します。社内ではかなり早い段階から技術開発を進めつつ、設置環境における性能や市場の状況を注視していました。今年・来年にかけては、製品ラインナップの拡充、サービス体制の整備期間と捉えています」と語る。
「COPEL」中型機は、冷凍食品の連続凍結装置等にマッチングする冷却能力を想定して開発されている。もちろん、中規模の冷蔵倉庫への適用も可能である。
前川製作所といえば、主力製品のひとつにアンモニア/CO2の「NewTon」シリーズがある。製品ラインナップも豊富で年間200台以上と堅調に伸び続けているが、一方で工場、冷蔵倉庫の立地条件やエンドユーザーの希望により、CO2直膨を求める声も耳にするようになった。特に、フロン類から自然冷媒への切り替えを検討する中小規模のエンドユーザーは、「COPEL」か「NewTon」の2種を比較検討し、一方を導入する傾向が強いという。
前川製作所はCO2直膨を希望するエンドユーザーの要望に応え、製品ラインナップの横展開を進めている。今後のラインナップも、エンドユーザーからの声を反映して決定していく意向だ。前川製作所では「冷凍機はあくまで付帯設備であり、最終的に、何をどのように冷やすか」という視点に立ち、エンドユーザーが常に最適な冷却設備を選択できるよう社内でも活発な情報共有を行っているそうだ。
思わぬ猛暑で意図せず証明された機器の安定性
従来シリーズの「COPEL」の納入は、関東以北の比較的平均気温が低い地域が先行している。省エネ効果の本格的な実証はこれから進められるが、現状、CO2冷媒機器の導入を検討しているエンドユーザーのニーズとして、従来のR22・R404A機と同等の能力であることに加え、安定性・安全性の担保が優先されることも多いという。
安定性に関しては、偶然にも2020年のある出来事で証明することとなった。
前川製作所は、機器開発の過程で自社工場に用意した環境試験室にて、さまざまな機器設置環境を想定した運転試験を行っている。しかし、昨年8月は全国的な猛暑が続き、北海道でも広い範囲で30度以上を記録。36度以上にまで上昇した地域もあり、当初想定していた運転環境を上回る状況も見られたという。
北海道のエンドユーザーに納入した「COPEL」の運転状況が心配されたが、想定外の環境下でも、機器のトラブルは見られなかった。前川製作所は、全国各地にサービス拠点を展開することで、機器のトラブルが発生してもすぐに現場へ直行できる体制を整えている。しかし、開発時点であらゆる環境を想定しても、実地では気温・天候など思わぬ出来事に見舞われる。
町田氏は、開発時の前提として、過酷な温度環境でも安定稼働する機器であることが求められていると感じており、実地による経験から課題を見出すことで、製品の完成度はさらに高まると考える。実地で得られた課題、経験を踏まえ、さらなる効率改善や適用温度範囲・容量の拡大など、製品の改善・改良につなげていきたいという。
空調への挑戦と炭化水素の可能性
2020年10月、菅義偉内閣総理大臣による「2050年カーボンニュートラル」の宣言は、自然冷媒市場にも大きく注目された。前川製作所はその実現に向けて、自然冷媒化が進んでいない食品工場の加熱工程、工場用空調の分野に着目する。特に重視するのが、空調用機器の自然冷媒化だ。
空調温度帯の機器として、すでにアンモニアチラーやヒートポンプは一部で導入されている。一方で毒性や可燃性などの安全性への懸念から、アンモニア冷媒を空調機へ用いることを躊躇するエンドユーザーが大半なのが現状である。前川製作所には、エンドユーザーや関係各所から「空調温度帯で活用できるヒートポンプ」の開発を求める声が届くという。これを受け、工場用空調と加熱工程に対し、アンモニア、炭化水素等の自然冷媒ヒートポンプでの展開を考えている。
2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」にて、中外製薬株式会社は2030年までに空調を含むフロン全廃、自然冷媒化という自社目標について紹介。前川製作所はこうした事業方針を掲げる企業に対して、多くの選択肢を用意・提供していきたいという。
現状はCO2採用の「ユニモ」シリーズが主体となるが、前川製作所では、10年以上にわたり炭化水素採用のヒートポンプ開発を進めている。可燃性ガスに対する法的規制が緩和されれば、より低コスト・高効率の炭化水素製品を供給していきたい考えだ。
自然冷媒機器開発を進める一方で、メーカーの責任として、安全性、省エネ効率、CO2削減効果にも気を配る必要があるという。
町田氏は「省エネ効率や安全性の担保は、冷凍機単体で達成できるわけではありません。前川製作所の強みは、冷蔵倉庫・工場全体といったシステムの最適化を実現する、エンジニアリングにあります。前川製作所は、これからも冷凍機に加え、クーラーやフリーザーといった機器との組み合わせも踏まえ、お客様によりよい製品提供を進めていきたいと考えています」と話した。