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豪州&ニュージーランド

オーストラリアに「NewTon」が初上陸

株式会社前川製作所のアンモニア/CO2冷凍機「NewTon」が、2019年7月にオーストラリアの冷凍冷蔵倉庫に設置された。同社にとって初となるオーストラリアでの機器設置は、現地業者との連携による綿密な計画によって、実現したのである。

 

文: デビン・ヨシモト、キャロライン・ラム

3 社連携による初の「NewTon」設置

7月、プロジェクトの設置請負業者であるTri Tech Refrigeration Australia は、オーストラリア・シドニー西部に新設された冷蔵倉庫と物流センターに、株式会社前川製作所の主力製品である二次冷媒式アンモニア/CO2産業用冷凍機「NewTon」を設置した。オーストラリアで「NewTon」が設置されるのは、今回が初めてとなる。

 

Tri Tech Refrigeration Australiaのエンジニアであるマック・ハジャール氏によると、顧客は会員制の多国籍小売業者の大手で、直売店に搬入する冷蔵・常温製品を、第三者の倉庫で管理してきた。しかし今後、既存の直売店をさらに拡大する計画のため、自社の物流センターの建設に踏み切った。同プロジェクトでは、産業用冷凍冷蔵分野のコンサルタント企業、Basil McKinley Consultingが熱負荷の計算や仕様書の作成を担当。前川製作所がコンセプトデザインと機器選択を行い、Tri Tech Refrigeration Australiaが詳細な設計や設置、および委託業務を担った。

 

シドニー西部に新しく建設された冷凍冷蔵倉庫と物流拠点

設置されたのは、中温対応型の「NewTon-C」3台と低温装置「NewTon R6000」2台。「NewTon-C」は倉庫内に設けられた約28,975m3 の冷蔵エリアを、708kWの冷却能力で2℃に保ち、「NewTon R6000」は約15,119m3の冷凍エリアを、198kWの冷却能力で-24℃に保つ設計となっている。ハジャール氏は「NewTon」を選んだ理由に、顧客の求める2つのニーズー安全性とシステム冗長性ーを満たしていたからと明かした。

 

「NewTon」は二次冷媒にCO2を使用。アンモニアの充填量が少量で済むのに加え、半密閉コンプレッサーを採用することで、アンモニアの漏えいリスクを大きく軽減できる。「この先進的なコンプレッサーには、軸封装置や滑り弁がついておらず、完全な速度制御を可能とする他、永久磁石が埋め込まれたIPMモーターを採用しています。このような新技術のオーストラリア市場参入は、非常に喜ばしいことです」と、ハジャール氏は語った。

 

緻密な設計で高い省エネ性能を発揮

「NewTon」の設計には高度な冗長性が組み込まれていると、プロジェクトの冷凍冷蔵主任コンサルタント、バジル・マッキンリー氏は説明する。「『NewTon』はR6000ユニット1台で、低温装置の冗長性を100% 確保できるうえ、必要に応じて熱交換器を介して、中温装置のバックアップも可能です。また、停電時は冷凍機の熱質量を利用して、中温装置内のCO2の圧力上昇を抑制します」

 

マッキンリー氏はさらに続ける。「もしも停電が長引いた場合は、予備のディーゼル発電機が低温側のCO2ポンプと冷凍機用蒸発器のファンの1 つを稼働させることで、両システムを設計圧力以下に保てるのです」。設置および委託には、「NewTon」とCO2ポンプステーションの間に勾配を設けるなど、いくつかの課題があったとハジャール氏は振り返る。「試運転およびプログラミングを通じて、熱放出効率を最適化するための水流バランスと、解凍に必要な温度維持を可能とした構造設計を実現できました」

 

2019年5月にメルボルンで開催された、自然冷媒国際会議「ATMOsphere Australia」にて、前川製作所オーストラリアの販売部長、ピーター・オニール氏は次のように語った。「冷凍貯蔵エリアで使用される2台の『NewTon R6000』は、従来のポンプ式アンモニア循環型装置と比べて、アンモニアの使用量を1,900kgから100kgまで減少できます」

 

なお、CO2の充填量は1,300kg である。プロジェクトが最初に提案されたのは2年以上前。6月にいよいよ最終設置の段階に入り、日本の前川製作所からサポートを受け、7月末に委託が完了した。想定される省エネ性能について、ハジャール氏は次のように話す。「エネルギー使用データから算出すると、コンプレッサーの平均消費量は、同規模の産業用冷蔵倉庫で採用されている従来の2 段ポンプ式アンモニアプラントよりも、大幅に抑えられるでしょう」。

 

ハジャール氏は、定期的な保守・整備とメーカーの提供サービスにより、今後25年間は想定通りのパフォーマンスを発揮するだろうと見込んでいる。

『アクセレレート・ジャパン』27号より

参考記事

前川製作所、守谷工場でのインタビュー