2020年7月に竣工した、株式会社キョーワの福岡センターⅦ。同社にとって初となる冷凍冷蔵設備の参入であり、ノウハウはほぼゼロに近い状態で同社が選択したのは、日本熱源システム株式会社のCO2冷凍機「スーパーグリーン」であった。キョーワに、自然冷媒の導入計画とこの1年の実績を聞いた。
2度の説明でCO2採用を決断
福岡県下を中心に総合物流サービス業を展開するキョーワ。一部事業部で冷凍冷蔵施設を持ってはいるものの、昨年7月竣工の福岡センターⅦ(敷地面積:9,340㎡)は、同社にとって初となる一般的な冷凍冷蔵部門への参入となった。ノウハウも実績もゼロに近い状態で、当初はフロン類の冷媒設備の採用を予定していたと、取締役 部長の清水 康彦氏は説明する。
そんななか、福岡エリアの冷凍冷蔵倉庫を見学する機会があり、日本熱源システムのCO2冷凍機「スーパーグリーン」を採用していた近隣の河合製氷冷蔵株式会社を訪問。2017年5月、8月と合計2回、日本熱源システムからシステムの説明も受けたという。国内外を問わずフロン規制が進む段階で、新築の冷凍冷蔵倉庫にフロン類を採用することを懸念し、2度目の説明でCO2冷媒の採用を決断した。

キョーワへのプレゼンテーションに際して、日本熱源システムはトータルコストでのCO2のメリットをアピールしたという。国内市場では、未だに新設冷蔵庫にフロンを採用するエンドユーザーも多い。R22はさすがに減少傾向にあるが、大半はR410Aを採用している設備だ。
しかし、キガリ改正により日本は2036年までにHFCを85%削減するというハードルが設けられている。国内では近い未来で、冷媒の供給が非常に難しくなる。イニシャルコストではまだHFCに軍配が上がるものの、冷媒確保もふくめ、ランニングコストではCO2に利点が多い。省エネ率でも、R410A空冷式システムとの比較で約15〜20%、R22との比較では約25〜40%の省エネが見込める。こうした数字が、CO2採用への大きな後押しとなった。
2年目の飛躍なるか
福岡センターⅦは、1、2階に2,300tの冷蔵庫を6室持つ。そのいずれもが、F級・C級の切り替えが可能だ(温度帯:-25℃〜+5℃)。全室を単独制御できるように管理されているという、非常にユニークな倉庫となっている。これには、将来的にあらゆるニーズに答えられる汎用性を持たせたいという、キョーワのこだわりがあった。
こうした倉庫の性質上、隣室との温度差があるほど、冷却負荷は大きくなる。負荷軽減のために断熱材を採用するほか、日本熱源システムも6月に試験運転で綿密な設定調整を実施。その甲斐もあり、2021年6月までの消費電力は、平均67.8kWだった。倉庫で100kW以下であれば省エネといえる水準を、大きく下回る数字だ。これは前室を含む数字であるため、冷蔵庫のみで見るとさらに消費電力は少ないという。
日本熱源システム 東京営業部 部長の岩尾 良雄氏によれば、福岡センターⅦの省エネ効果は最初期の段階から、制御コントロール部分を緻密な設計で作り上げたことが成功の要因であるという。またデフロストについても、いわゆるタイマー設計ではなくファンの運転時間を基準としたため、冬場の低負荷時に、強制的にデフロストが働かないようコントロールした。設備自体もシンプルな仕組みであるため、安全面やメンテナンスなど、現場の負担はほぼなかったと清水氏は説明する。

キョーワでは、温ブラインシステムによる排熱回収システムも採用されている。同システムは、芳雄製氷冷蔵株式会社にも昨年冬に導入されており、うまく機能すればトータル消費電力がさらに大きく削減可能だ。同社は今後、F級冷凍庫には排熱回収も標準提案していきたいとする。今後得られるキョーワの数値は、それを後押しするものとなるだろう。
福岡センターⅦは約1年の冷凍機の運転を経て、庫内が十分に冷えた状態での2年目を迎える。両社はここからの1年、さらに優れた消費電力量を計測できるだろうと期待をのぞかせる。