PARTNERS
日本

【ATMO APAC Summit 2022】日本冷蔵倉庫協会、着実に進む自然冷媒化【エンドユーザーパネル】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

エンドユーザーパネルに登壇した一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏は、同協会の自然冷媒化の進捗状況を発表。中小事業者を中心に採用が広がる、CO2冷媒の成長にも注目が集まった。

HCFC使用が5割を下回る

日本冷蔵倉庫協会は、冷蔵倉庫業者が各地で組織する46地区協会を正会員とする中央団体である。倉庫業法に基づき、国土交通省の登録を受けた冷蔵倉庫が集まり、冷蔵倉庫の適正運営を確保するため、冷蔵倉庫の機能維持・向上、経営基盤の安定・レベルアップを支援し、事業を高度化させ国民への食料・食品の安定供給への貢献を目指す。

 

地球環境保全のためのフロン規制が進む中、サプライチェーンとしての機能をまっとうするため、先んじて自然冷媒化を進めてきた。

 

日本冷蔵倉庫協会の会員は、90%を超える事業者が中小事業者であり、自然冷媒機器更新には大きな負担が伴う。小金丸氏は、2014年から継続されている環境省の「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型 自然冷媒機器導入加速化事業」が、大きな後押しとなっていると話す。

 

2021年度は、同事業の採択を受けた121事業所のうち、56事業所が日本冷蔵倉庫協会の会員だった。そのおかげもあり、2021年度には自然冷媒の対象設備トンの割合が40.2%(3,699,290トン)となり、4割の大台に乗った。一方、HCFC対象設備トンは前年の53.1%から4.1ポイント低下の49.0%となり、半数を下回った。

 

2022年度には、ようやく自然冷媒とHCFC冷媒の事業所容積が逆転するのではと考えております。

一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏

 

とはいえ、HCFCはまだ多くの事業所で活躍している現状がある。自然冷媒化の啓蒙は続けつつ、冷媒フロン類取扱知見者講習を実施。HCFCをはじめとしたFガス漏えいの危険性についての周知活動を続けている。

CO2の成長

自然冷媒の使用状況だが、現在もっとも多いのがアンモニア/CO2だ。大規模事業者から自然冷媒化が進む中、その規模に適したアンモニア/CO2の使用率が順調に伸びてきており、2020年度にはその割合が69.7%にまで増加した。アンモニア直膨は、冷媒充填量に伴う安全性の問題から、2012年度からの記録開始以来減少の一途をたどっている(2020年度の割合は25.6%)。

 

そんな中、徐々に使用率を伸ばしているのがCO2だ。2012年度から2017年度にかけては、0.0%〜0.4%の間を推移するに過ぎなかったが、2020年度には4.2%と急激に成長している。その背景には、中小規模の事業者が大規模型のアンモニア/CO2のセントラルシステムではなく、小型のR22システムからの更新設備としてCO2を選択している傾向がある。

 

2021年4月、政府は地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画として、温室効果ガスの排出量を2030年度に2013年度比46%削減するという目標を掲げた。それに伴い、日本冷蔵倉庫協会は独自のビジョンを策定した。

 

冷蔵倉庫業界は電力にほぼ100%依存しており、冷蔵倉庫エネルギー削減明瞭化の為、2013年度を基準年とした「CO2排出原単位(t-CO2/冷蔵倉庫設備トン)」を目標とし、2050年度までにカーボンニュートラルとなるための取組を推進する。また、CO2以外の温室効果ガス排出抑制として、冷凍機器を脱フロン化する。

 

また、カーボンニュートラルの主な取り組みとして、以下を掲げている。

  • 省人化機器の導入
  • 再生可能エネルギー設備の導入促進
  • 省エネ型自然冷媒機器への転換に係る取組を推進
  • CO2フリー電力の購入推進

 

日本冷蔵倉庫協会は、1設備トンに対する電力使用量(kWh)の推移を算出してきた。2020年度は、目標となる150kWhを下回る142.4kWhを達成。2030年度には、128.2kWhという目標を目指す。最終的に、電力業界との協力によって目標を実現できれば、2030年には冷凍冷蔵倉庫業界の課された「温室効果ガスを2013年度比で51%削減する」という目標を実現できるだろうと小金丸氏は説明する。

 

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 & 芳雄製氷冷蔵株式会社 代表取締役 小金丸 滋勝氏