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【ATMO APAC Summit 2022】IEC、国際規制動向の行方を語る【政策動向セッション】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

政策動向セッションの最後に登壇したのは、国際電気標準会議(IEC) SC61C 小委員会委員長のマレック・ジグリチンスキ氏だ。新型コロナウイルス感染症の影響により、会議に出席できなかった同氏だが、会議に合わせ昨今の国際的な炭化水素使用における規格改正の動向や、本会議で度々話題となったHFC規制の大きな動きについて、動画で発表してくれた。

国際標準規格策定の流れ

現在132カ国がキガリ改正に批准しており、各国に定められたスケジュールにおいて、HFC削減に取り組んでいる。Fガス規制の先駆けである欧州では、キガリ改正よりさらに厳しい削減案が提案され、翌年1月か2月には、欧州Fガス規制改正案の最終決定がなされる予定だ。

 

CO2以外のほとんどの代替冷媒は、可燃性という特徴を持つ。業務用冷凍冷蔵分野において、これらの冷媒を使用する上での各種規定を改定し、安全性に関するマニュアルを各セクター向けに策定することが重要だ。国際基準における製品規格策定を、IECが実施。2019年6月20日に、IEC新規格「IEC60335-2-89」が発表された。

 

同規格では、1回路あたりの可燃性冷媒の最大充填量が150gからLFL(燃焼下限界)の13倍(上限1.2kg)まで引き上げられた。密閉式ショーケースの場合、R290は約500g、R1234yfは1.2kgとなる。その上で、150g充填量時と同レベルの安全性を確保するための遵守すべき要件が追加された。「IEC60335-2-89」が適用される製品は、以下の通りだ。このうち、アイスクリームメーカーを含む4製品は、それぞれ独自の規格が定められている。

各国の動向

IEC規格が公表された1年後、2020年7月にオーストラリア、ニュージーランドがIEC規格を採用。その後2021年3月に、日本も一般社団法人日本冷凍空調工業会(JRAIA)の委員会により国内版規格とガイドラインが発表された。

 

日本の規格(JIS 9335-2-89:2021)とIECの規格は、いくつか相違点がある。例えば、IEC規格の充填量上限1.2kgが定められていない(LFLの13倍という基準は変わらない)。そのため、JIS規格ではR32の最大充填量は3.991kgとなる。最大表面温度に関する規定も、IEC規格では発火温度(AIT)-100Kという規定を設けているが、JIS規格は最大表面温度700℃としている。漏えいテストのシミュレーションも、細かい点で異なる点が多い(詳細は資料を参照ください)。

 

米国・カナダは、昨年10月に規格が発表された(米国「UL 60335-2-89」、カナダ「CSA C22.2 We 60335-2-89)。業務用冷凍冷蔵設備のほとんどの規格が、これらに代替されつつある。しかし、これら規格の発効には米国環境保護庁(EPA)が受け入れを宣言し、Ashrae 15が一般規格として認定を出す必要がある。欧州版の規格(EN 60335-2-89:2021)は、2022年7月には公表されると予想されている。こちらは、IEC規格をほぼ踏襲した内容となる。

PFASへの懸念

昨年7月、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの5カ国がPFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)使用を禁止する提案を出した。各国はREACH規制に基づくPFAS規制の共同提案を、2022年7月までに欧州化学品庁(ECHA)に提出する意向を表明している。

 

本提案が承認されると、ほぼすべてのHFCがGWPの高い・低いに関わらず使用禁止になる。欧州でのFガス規制の厳格化の背景を鑑みても、提案の承認・実施が早いペースで行われると予測されている。マレック氏は、この提案が業界にとって新たなチャレンジの始まりになると話す。あらゆる冷凍冷蔵分野に影響する本提案の動向に注視しつつ、規制に影響されない炭化水素の普及に努めたいと語った。

  

我々は、IECが定めた最大充填量がすべての国で適用されるのを心待ちにしています。

国際電気標準会議(IEC) SC61C 小委員会委員長 マレック・ジグリチンスキ氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

国際電気標準会議(IEC) SC61C 小委員会委員長 マレック・ジグリチンスキ氏