国際エネルギー機関(IEA)の「Annex 58」プロジェクトは、供給温度が100℃を超える高温ヒートポンプシステムの現在の市場を調査。そのうち、少なくとも17のプロジェクトにて、自然冷媒(CO2、水、炭化水素、ヘリウム、アンモニアカスケードシステム)を使用したヒートポンプの開発が進められていると発表された。
高音ヒートポンプの技術を評価・研究
この情報は、プロジェクトを主導するデンマーク技術研究所(DTI)のコンサルタント、ベンジャミン・ズフルスドルフ氏とシニアスペシャリストのジョナス・ポールセン氏、ドイツPaderborn大学の博士研究員フロリアン・シュロッサー氏が、2022年3月29~30日にデンマークのコペンハーゲンで開催された「第3回高温ヒートポンプシンポジウム」で発表したものである。
このシンポジウムは、DTI、デンマーク工科大学(DTU)、SINTEF、欧州ヒートポンプ協会(EHPA)の主催で開催された。
「Annex 58」は、IEAのヒートポンプ技術に関する技術協力プログラムのプロジェクトのことで、技術の認識と開発、プロセスの統合、市場展開に着目し活動している。同プロジェクトの目的の一つに、供給温度が100℃を超えるヒートポンプ技術の概観を提供することがある。
このプロジェクトでの評価対象には、実証レベルにある技術や、2〜4年以内に市場に投入されるであろう準備レベルの低い技術も含まれる。性能としては、容量0.03~70MW、最高供給温度100~280℃といったシステムが対象だ。
「Annex58」のワーキンググループは、データ収集の中でいくつかの傾向を観察した。第一は、システムの容量が大きくなればなるほど、開発者はより高い供給温度を目指していることである。また容量が大きいほど、システムの寿命が長くなるとも推察されている。
もう一つの傾向は、温度上昇とCOPの間に強い逆相関があることだ。温度上昇が小さいほどCOPは高くなるが、これはアプリケーションに依存するというのが実態だ。
この高温ヒートポンプシステムの開発に取り組んでいるのは、株式会社前川製作所、エマソン、三菱重工業株式会社、MAN Energy Solutions社、Fenagy社といった大手自然冷媒メーカーである。
「Annex 58」は2021年初頭に開始され、2023年末に終了する予定だ。プロジェクトにはオーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、日本、オランダ、ノルウェー、スイスのパートナーが参加している。英国と米国からのパートナーもいずれ参加する可能性があるという。
「Annex58」は、高温ヒートポンププロジェクトについて、性能データ、容量範囲、最高温度、作動流体の種類、圧縮機の種類、比投資コスト、TRL、期待寿命、サイズ、フットプリントなどのデータを収集する。
開発中の各自然冷媒高温ヒートポンププロジェクトの詳細については、5月にプロジェクトウェブサイトで公開される予定だ。
参考
IEA Project Finds 17 NatRef High-Temperature Heat Pump Projects in Development
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
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