新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各地に猛威を振るう結果を生んでいる。事業単位に目を向けてみれば、事業継続のためにオフラインからオンラインへ移行する動きが、活発に行われている。
HVAC&R業界もまた、国内外を代表する展示会の多くが、延期および中止を余儀なくされた。この激動の時代に、国内企業はどのような対策を行い、変化し成長しようとしているのか。
『アクセレレート・ジャパン』では、日本を代表する機器メーカーのトップにアンケートおよび取材を実施。彼らの回答から、業界が連携してこの危機をチャンスとするためのベストプラクティスを共有する連載をスタートさせた。
第9回は、三菱重工冷熱株式会社。営業活動への見直しや新たな生活様式への対応を迫られる中、同社は新製品の投入を中心に、新たな一手を打とうと奔走する。
設置工事への影響は少ないが、状況を見た営業戦略が必要
主に冷凍冷蔵分野の採用実績が多い三菱重工冷熱。コロナ禍で計画が延期になるなどの影響も見え隠れするが、エンジニアリング事業本部 低温食品営業部部長の平岡 禎明氏によれば、同分野での新設・増設・改修工事等には、大きな影響は出ていないと語る。
一方で、コロナ禍により大きな被害を被った食品分野への営業活動に対しては、難しい状況判断を迫られている。「以前のような営業活動は、依然として厳しい状況です。今後の情勢を見極め、対応していく必要があるでしょう」(平岡氏)
現在、顧客との打ち合わせはオンラインツールを活用。施工現場でも、タブレットを導入し円滑なコミュニケーションができる体制を整え始めている。新しいビジネスの形に、最初こそ戸惑いがあったが、従来業務の見直しによって生まれたコスト削減や生産性・効率性向上、在宅勤務・フレックスタイム制への移行など、メリットも少なくない。
変化による「デメリット」とどう向き合うか
平岡氏はコロナ禍による最大の変化は、コミュニケーションの変化と進化にあると考える。
セミナーをはじめとしたイベントは激減し、在宅勤務が推奨されることで、社内外での顔を合わせた会話が大幅に減少。
効率化・生産性向上で利する部分がある一方で、顧客と直接会えないがための推進力低下、決定の先送りといったデメリットがあることも否定できない。しかし、今後コロナ禍以前に戻ることはなく、進展していかなければならないだろうと平岡氏は話す。
「オンライン化への対応の一方で、対面によるオフラインのコミュニケーションは、以前よりもはるかに貴重かつ重要なこととなりました。社内外に関わらず、この数少ない機会を生かさねばなりません」(平岡氏)
オンライン活用、通信接続状況の改善等を進めつつ、現場対応が必要な営業職、技術者、現場管理者、サービスマンなどは、重要なオフラインの窓口とも言える。
三密回避、作業効率改善、円滑なコミュニケーション方法の推進を進めつつ、あらゆるものを柔軟に活用し、オンライン・オフライン両方に対応する。それこそが、三菱重工冷熱が顧客・社会のニーズに応えるために必要なことであると、平岡氏は話した。
小型・軽量化と大型化。両方の戦略でソリューション展開へ
社会の様々な環境の変化に対して、環境保全に重点を置いた世界最高水準の製品を提供する姿勢は変わらない。新たな一手として三菱重工冷熱が選んだのは、小型化・大型化両面におけるソリューションの拡大だ。
例えばCO2/NH3自然冷媒冷却システムの「C-LTSシリーズ」は、エレベーター搬入が可能な小型・軽量化ユニットを新たにラインナップに追加。加えて、同社はCO2冷媒 冷凍冷蔵コンデンシングユニット「C-puzzleシリーズ」の大容量化を図っており、40馬力ユニットと抱き合わせた提案も進める。また12/1には、同C-puzzleシリーズに80馬力「C-puzzle80(エイティ)」を追加するとプレス発表を行った。
あわせて、飲料・食品工場における省エネを実現するための熱ソリューションにも力をいれる。三菱重工グループでは、大から小までの多くのヒートポンプ関連商品を取り揃えており、工場全体の熱バランスを踏まえた省エネ機器の導入、ヒートポンプで排熱を有効利用する省エネに加え、作業場内気流の最適化による作業空調環境改善など、顧客の選択肢を広げる方法を常に模索し続ける。
いまできること、いましかできないことをお客様と向き合ってしっかりと対応していくことを念頭に、環境に配慮した自然冷媒システムの推進と省エネ・熱ソリューション提案を進めること。『世界を熱ですごしやすく』を信念に、三菱重工冷熱は冷熱製品を通じて、地球温暖化防止対策に貢献していきます。
三菱重工冷熱株式会社 エンジニアリング事業本部 低温食品営業部部長 平岡 禎明氏
新たな生活様式に対して、進化・成長を続ける三菱重工冷熱。その胸の内には、環境と社会への貢献の情「熱」がたぎっている。