新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各地に猛威を振るう結果を生んでいる。事業単位に目を向けてみれば、事業継続のためにオフラインからオンラインへ移行する動きが、活発に行われている。
HVAC&R業界もまた、国内外を代表する展示会の多くが、延期および中止を余儀なくされた。この激動の時代に、国内企業はどのような対策を行い、変化し成長しようとしているのか。
『アクセレレート・ジャパン』では、日本を代表する機器メーカーのトップにアンケートおよび取材を実施。彼らの回答から、業界が連携してこの危機をチャンスとするためのベストプラクティスを共有する連載をスタートさせた。
第7回は、CAREL Japan株式会社。少人数で困難に立ち向かう同社は、国内で培った「信頼」でこの激動を進む。
予測できない状況下で得た教訓
電子膨張弁、および冷凍装置用の制御装置の性能で、業界から厚い信頼が寄せられているCAREL Japan。新型コロナウイルス感染拡大は、同社事業に大きな衝撃を与えた。
影響予測が難しい中、顧客やエンドユーザーはプロジェクトを年内に実行するか、延期するかを判断しかねていることもあり、具体的な予測はできない状況が続く。
2020年4月および5月は、東京本社を閉鎖。代表取締役の関口氏は、在庫を自宅に移動して入荷、出荷を行っていたという。8月に入ってからは、3人交代制で事務所勤務へと移行した。在宅勤務を基本としつつも、今まで以上に営業活動の重要性を関口氏は実感。現在も感染予防を徹底しつつ、顧客訪問を続ける。
「感染拡大が懸念された直後、中国工場が閉鎖。イタリア本社工場も、3〜4カ月に渡り閉鎖の影響が続きました。過去にない事態に直面し、複数の供給ルート確保が、事業継続では必須だと痛感しました」(関口氏)
停滞する日本市場でも光る「CARELへの期待」
2020年2月に開催された自然冷媒国際会議ATMOsphere Japan 2020にて、同社は中国国内にてCO2エジェクターの試験運転を実施していると発表。本プロジェクトは現在、順調に進行しているという。
一方で日本のプロジェクトに関しては、具体的な導入プロジェクトは動いていないものの、メーカー各社からの相談は断続的に寄せられているという。新製品発売や、大型機にも対応できる電子膨張弁の打診。長らく国内で培われてきた信頼が、激動の時代でも変わらずにあることを伺わせる話である。
自然冷媒に関する問合せも同様だ。「CO2冷媒の各種部品に関しては、制御装置およびバルブといった組み合わせで提供できるのは、国内で私達しかいないというのが現状です」(関口氏)
CAREL Japanは日本国内のみならず、欧州など海外市場への導入でも活躍する。7月には新たに技術の専門家がメンバーとして加わったが、信頼からじわじわと広がる市場シェアに対して、嬉しい悲鳴が続いている状況である
時代のニーズを満たすソリューション提案を
コロナ禍による現場オペレーションの変化は、製品への興味の変化にもつながっている。具体的には、冷凍空調システムの遠隔監視ソリューション、「boss」への関心の高まりである。
「CO2は非常に緻密な冷媒回路であり、大手メーカーでも扱いに苦労する存在です。bossを現場に設置すれば、ネット経由でイタリア本社の技術者がアクセスし、設定上の問題点を発見、解決策を提示できます」(関口氏)
これまでも、CO2を扱うならコントローラーとモニタリング装置、両方が必要という評価が広く存在していた。コロナ禍を契機に、その重要性がさらに向上したと言えるだろう。
「つい先日、来年度の販売予算を立てました。メーカー各社も現在は、テーマを絞り込んで開発に勤しんでいます。私達も少数精鋭で、あれもこれもできるわけではありません。タイムリーに生まれるお客様からの期待に応え、新製品・ソリューションを提案できる分野を模索し挑戦していきます」
(CAREL Japan株式会社 代表取締役 関口 忠夫氏)