新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各地に猛威を振るう結果を生んでいる。事業単位に目を向けてみれば、事業継続のためにオフラインからオンラインへ移行する動きが、活発に行われている。
HVAC&R業界もまた、国内外を代表する展示会の多くが、延期および中止を余儀なくされた。この激動の時代に、国内企業はどのような対策を行い、変化し成長しようとしているのか。
『アクセレレート・ジャパン』では、日本を代表する機器メーカーのトップにアンケートおよび取材を実施。彼らの回答から、業界が連携してこの危機をチャンスとするためのベストプラクティスを共有する連載をスタートさせた。
第4回は、有限会社柴田熔接工作所。顧客ニーズに合わせて柔軟な開発を続けてきた同社は、コロナ禍でもその姿勢を貫く。
アイスショー中止による衝撃
顧客の要望に応える製品開発を。1963年創業の柴田熔接工作所は、その思いから汎用品だけに留まらず、顧客のニーズに応じて冷凍冷蔵空調製品の開発・製造を続けてきた。-80℃の超低温から空調まで、幅広い温度帯に対応できる技術力。フリーザー、チラー、冷凍機と各ジャンルに強いメーカーが存在するなか、同社の強みはそこにある。
15年前の2005年から、製氷機、急速凍結庫、ブラインチラー、冷凍冷蔵ユニット、コンデンシングユニットなどで自社製品のラインナップ拡充をスタート。8年前の2012年より、CO2冷凍機開発にも携わってきた。
製氷機、製氷ユニットに長所を持つ柴田熔接工作所。国内を代表するエンターテーメントアイスショーはアメリカ某社より許認可を受け、国内公演のスケートリンク製造を担ってきた。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により、こうしたアイスショーが中止に。年間を通じて行われるイベントの中断は、同社にとっても大きな打撃になったという。
オンラインとオフラインを効率的に棲み分け事業継続を
一方で、高い技術力を生かして続けられてきた各種プロジェクトは、堅調な伸びを見せていると代表取締役社長 柴田 勝紀氏は語る。中でもCO2、アンモニア等の自然冷媒製品が好調だ。外出自粛要請に伴う中食需要の増加のためか、冷凍食品等の食品メーカーからの問合せが増加した。
特に大手冷蔵倉庫等では、R22冷媒を使用している企業も多い。冷媒の備蓄はあるものの、一部では設備入れ替えのタイミングで、全てを自然冷媒機器でまとめたいとする相談も多い。
顧客とのやり取りは、基本的にメールである。しかし特殊な製品を扱う以上、現場に足を運ぶことは必須だ。
「既存施設での機器入れ替えの場合、現状把握が確実に必要です。運転状態を見ながら、お客様の求めるスペックを満たす機器設計に反映させないといけません」(柴田氏)。日本全国にいる顧客と会うため、移動にはレンタカーを活用するなどなるべく第三者との接触を避ける方策を練る。
オンラインとオフラインの棲み分けをしながら、同社はより良い事業運営体制を模索中だ。
CO2と炭化水素を活用した2つの新展開
2020年3月は、業界にとって非常に重要な展示会「HVAC&R JAPAN 2020」が中止に。実はこの展示会に合わせ、柴田熔接工作所は新製品発表会を行う予定であったという。
「展示会、業界でHVACが中止。うちも合わせて製品発表会、ホテルでやる予定。全部中止にせざるを得なくなった。展示会アピール、来年戻ってくるかも分からない。ウェブサイトを活用して、幅広いお客様に製品を告知していきます」(柴田氏)
中でも注目すべきは、2つの大きな事業だ。1つは現在同社が持つCO2冷凍機を活用し、製品バリエーションを拡大していくこと。冷凍冷蔵倉庫に限らず、フリーザー、ブラインクーラー、空調、製氷機などがその対象だ。

もう1つは、R290(プロパン)を採用した小型製氷機である。同製品は柴田熔接工作所が輸入販売を務めている、ドイツのMAJA社を協力会社に迎えて開発している。
いずれも来年度、顧客に対して広く販売できるよう準備を進めているところだ。現在はこれらの情報や、顧客の声をオンラインでも確認できるよう、公式HPの充実に努める。
「コロナの中でも、私達がすべきことは変わりません。柴田熔接工作所の良さは、いい意味で『こだわりがない』点にあります。お客様のニーズや用途に合わせ、あらゆる選択肢を用意して最適な提案をし続けていきます」
有限会社柴田熔接工作所 代表取締役社長 柴田 勝紀氏