新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各地に猛威を振るう結果を生んでいる。事業単位に目を向けてみれば、事業継続のためにオフラインからオンラインへ移行する動きが、活発に行われている。
HVAC&R業界もまた、国内外を代表する展示会の多くが、延期および中止を余儀なくされた。この激動の時代に、国内企業はどのような対策を行い、変化し成長しようとしているのか。
『アクセレレート・ジャパン』では、日本を代表する機器メーカーのトップにアンケートおよび取材を実施。彼らの回答から、業界が連携してこの危機をチャンスとするためのベストプラクティスを共有する連載をスタートさせた。
第3回は、ebm-papst Japan株式会社。冷凍機の性能を大きく左右するファン開発を進める同社は、この危機を「成長の機会」と捉え前進し続ける。
サプライチェーン混乱からの脱却
2020年の過去半年に起きた、新型コロナウイルス感染症拡大は世界経済に前例のない影響を及ぼした。HVAC&R業界も例外ではありません。ドイツのファンメーカーであるebm-papstの日本法人、ebm-papst Japanもまた、事業運営に大きな衝撃を受けている。
代表取締役のアーミン・シュネル氏によれば、感染拡大が騒がれてからの2カ月間で、本社所在地であるドイツからのサプライチェーンを安定させることが非常に困難だったという。 航空貨物スペースが大幅に削減され、さらにそのコストが高騰したためである。
顧客もまた、納品物の確保に大きな不安を抱えていた。そこで同社は、サプライチェーンと配送状況について定期的にメールと電話を交わし、高頻度に情報を更新。そしてお客様とオープンなコミュニケーションをとることにしたのである。
「幸い、現在のサプライチェーンは安定に向かっており、流通での遅延は発生していません。 しかし今では、私達も含めて誰もが長期的な経済的影響と、その安定的な継続の重要性を痛感しています」(シュネル氏)
最初のサプライチェーンの混乱からしばらくして、製品の販売状況や会社全体の売上高へ影響が及ぼされ始めた。実際に6月以降、新規発注は全体的に減少傾向にある。
「この状況は今日まで続いており、いつ回復するかを正確に予測することはできません。 2020年の第4四半期中に、現状がより明確に把握できることでしょう」(シュネル氏)
柔軟なワークスタイルの扉を開く
こうした状況の一方で、職場環境の変化にも迅速に対応した。ebm-papst Japanは2020年2月松より、社内勤務・在宅勤務の2チームを構成し、オフィス・倉庫それぞれを常時稼働できるようにした。
「この体制は、私達のチームにプラスの効果をもたらすと知りました。誰もが『在宅で立ち往生』するのではなく、自分の作業環境を変更できるというオプションを持てたためです」(シュネル氏)
新たな内部コミュニケーションに対応するため、Microsoft TeamsやZoomなどのツールも採用。シュネル氏は今回の騒動をきっかけに、より柔軟なワークスタイルへの扉が開かれたと話す。「この事実は、チームのワークスタイルにとって長期的にプラスの影響を与えるだろうと考えています」(シュネル氏)
新たな変化に臨む強い覚悟
新型コロナウイルスの影響は、ebm-papst Japanのマーケティング活動にも及んだ。進行中あるいは進行予定だったプロジェクトの多くが、延期または中止。日本の建築市場向けに開発が進められていた、ECファンモーターシリーズは、3月に開催されるはずだったHVAC&R Japan 2020およびMACS2020に出展を予定していたという。この2つの中止は、同社にとって大きな痛手であった。
そこで、ebm-papst Japanは早急にオンラインマーケティングおよびプロモーションへと舵を切ることに。3月には新たな月刊メールマガジンの発行を始め、ECファンの技術や製品情報に関する、顧客向けのオンラインウェビナーも開催させる。
同社にとっての最優先事項は、この嵐を無事に乗り切ることができるよう、コストを最小限に抑え、顧客と緊密に連絡を取り合うことだという。現在与えられているわずかな猶予を、生産的かつ賢明に使用するため。同社はオンラインウェビナー開催に必要なチーム育成や、新入社員への研修に力を注ぐ。
今この時間を「停滞期」と捉えるのではなく、私達が成長するための機会と捉えています。いち早くこの変化に適応すれば、今まで以上に強い組織を作ることができると確信しています。。
しかしそれは、決して簡単なことではありません。勇気と努力が必要となります。前進して新しい解決策を見つけるために、社員全員の意見やアイデアをよりオープンに統合させていくことが重要でしょう。
ebm-papst Japan株式会社 代表取締役 アーミン・シュネル氏