新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各地に猛威を振るう結果を生んでいる。事業単位に目を向けてみれば、事業継続のためにオフラインからオンラインへ移行する動きが、活発に行われている。
HVAC&R業界もまた、国内外を代表する展示会の多くが、延期および中止を余儀なくされた。この激動の時代に、国内企業はどのような対策を行い、変化し成長しようとしているのか。
『アクセレレート・ジャパン』では、日本を代表する機器メーカーのトップにアンケートおよび取材を実施。彼らの回答から、業界が連携してこの危機をチャンスとするためのベストプラクティスを共有する連載をスタートさせた。
第2回は、CO2冷凍機開発で他社を牽引してきた、パナソニック株式会社アプライアンス社。川上から川下までの戦略を徹底する、同社の奮闘を取材した。
事業への甚大な影響。リモートワークへの課題
コロナ禍により店舗改装需要の投資減少、新規案件の凍結など、国内の小売業界向けの冷凍冷蔵設備の需要は、過去に類を見ないほどの衝撃を生んでいる。パナソニクは欧州アジア、オセアニアといった海外市場にも進出するが、その状況は日本と同様だ。
それ以外にも、出張不可による顧客への提案活動停滞、展示会等のイベント中止、海外調達部品の納期遅延、海外への渡航自粛による海外会社とのプロジェクト活動停滞など、多方面に新型コロナウイルスの影響が散見される。
緊急事態宣言、外出自粛も相まって、社内ではいち早く在宅勤務およびリモート会議の導入体制が整えられていった。オンラインでのアクセスが集中しても回線がストップしないよう、大規模な組織ならではの創意工夫もあったという。
「最初に直面した課題は、大容量データのやり取りでした。オンラインによる通信では処理が困難なデータも少なくなかったので、社内で作業するデータと、リモートで作業するデータを整理するなどして、順次対応していったのです」(コールドチェーン事業部 経営企画部部長 棚井 健仁氏)
従業員、派遣社員や協力会社の間で感染が拡大し、生産、販売活動に支障をきたさないための工夫は細部に渡る。
具体的には出社時の検温や体調管理、事務所や食堂でのソーシャルディスタンスを取った座席配置、毎日の消毒実施、在宅勤務の推奨など感染防止策の撤退と社内連絡網、情報共有化の推進などである。
そして海外施工業者へのトレーニングについても、現地に赴いての指導からオンライン教材の活用へと切り替えた。研修者の反応が見られない、資料が膨大になりやすいといった課題に対して、今も最善の方法を模索中だ。
新たな技術開発・サービス創出にも挑戦し続ける
社内や社外とのやり取りで新たに生まれた「オンライン化」のニーズは、小売業を中心に進んでいくと棚井氏は話す。特に注目されるのは、非接触及ぶキャッシュレス決済型サービスへの移行である。
「コロナ禍による外出自粛は、eコマースやデリバリーサービスの需要を大きく伸ばすきっかけとなりました。私達も新たなコールドチェーンビジネスとして、低温物流分野及び、冷凍冷蔵商品受け取り分野に向けた新規商材や新規ビジネスの展開等を進めていきたいと考えています」(棚井氏)
冷凍冷蔵機器の分野においても、2つの動きをさらに前進させる。日本国内では、2020年度下期にラック式の大型CO2冷凍機を投入。そして欧州では、欧州では、2021年よりFガス規制強化という局面を迎え、自然冷媒機器の需要がさらに増すと予測。従来の2馬力・10馬力という冷凍機ラインナップの隙間を埋める、4馬力冷凍機を欧州向けで先行して販売する予定だ。
80馬力相当の大型CO2ラック式冷凍機に、強化された2馬力~30馬力のCO2冷凍機ラインナップ。これにより、倉庫、物流センター、小売店と幅広いニーズに応えられることとなるだろう。
「食品流通の川下と川上への事業を強化していくという事業戦略の変更や方針は変わりません。既存領域での販売に頼らない、事業体質強化を推進していきます」
棚井氏
