隔年開催の国際会議「グスタフ・ローレンツェン会議」の第14回「GL2020」は、新型コロナウイルスの影響を受け、初のオンラインにて開催された。2020年12月7〜9日の3日程を無事終えた同会議を主催した公益社団法人 日本冷凍空調学会に、開催までの奮闘と手応えを聞いた。
オンラインという選択で困難に立ち向かう
「GL2020」では、合計204(前回:232)の研究概要が集まり、資料を元に105(前回:182)の発表を実施。24カ国(前回:45カ国)から合計198名(前回:299名)の登録者が参加した。前回開催時と比較すると、発表数・登録者数の減少は否めない。しかし、誰もが想像しなかった新型コロナウイルス感染症拡大という困難を思うと、これだけの規模を確保できたのは快挙と言えるだろう。
「GL2020」を支えたのは、同会議初となるオンライン開催である。2020年4月、日本冷凍空調学会はこの状況を鑑み、オンラインという選択肢を検討し始める。集客(登録者や発表者のキャンセル)や時差の問題など、課題は多かった。しかし、IIR事務局および国際委員会のメンバーが、精力的に会議を宣伝。
ライブ配信だけでなく、講演用ビデオの作成や基調講演・ワークショップの発表数を増加、参加登録費のディスカウントといった多くの協力・工夫が功を奏し、提出資料数・発表者数・登録者数者の激減を限りなく低減できたという。
実際の会議では、アメリカから深夜にも関わらずライブ発表に協力してくれる発表者がいたり、Web懇親会で多くの参加者と親睦を深めることができたりと、多くのメリットが合ったという。また、若手研究者の為に、IIR-EPEE Student Networking Eventを実施できたことも喜ばしい結果であった。
Zoomの接続トラブルも、会議全体で大きなトラブルはなかったという。その一方で、音声不良や接続不能になった発表者もいたり、対面よりも質問の数が少ないといった課題も残った。次回以降、「グスタフ・ローレンツェン会議」がどんな形態で開催されるかは未定だ。しかし、今回の挑戦で得られた知見は、未来の会議開催に大きな恩恵をもたらすだろう。
GL2026への意欲
「GL2020」では、いくつもの興味深い発表が見られた。その中でも、日本冷凍空調学会はペガ・アーニャク氏の自然冷媒に関する重要課題を示唆する講演、早稲田大学 基幹理工学部教務主任の齋藤 潔氏によるCO2性能計算実験、ノルウェー科学技術大学(NTNU)の小規模冷蔵庫の試算等に関心を寄せる。
会議全体を通じて、CO2を使ったサイクルが、低温側〜高温側まで幅広い温度範囲で利用が検討されており、多くの工夫がなされたシステムが提案されている実態が、非常に印象的だったという。
CO2の技術は大きく成長する一方、性能向上と比例してシステム自体が複雑化してもいる。今後、温暖な地域も含めてCO2技術が普及するには、サイクル性能向上と合わせ、シンプル化によるコストダウンもますます重要になるだろうと、学会は考える。
これからの自然冷媒技術の未来について、学会は「これからは炭化水素実用化の研究が焦点になるでしょう」と回答。特にサイクル性能技術の改良、安全対策等の技術研究に注目したいという。
今後の「グスタフ・ローレンツェン会議」について、来る「GL2026」では、改めて京都開催に挑戦したいと意欲を燃やす。その折には、対面での講演を中心としつつ、今回のノウハウを生かしネット上でも参加可能なハイブリッド会議を開催したいと学会は考えている。その上で、会議では空気、水といった冷媒システムを含め、新たな技術に関する研究が発表されることを期待すると話した。