2020年12月7〜9日にて開催された「第14回グスタフ・ローレンツェン会議(GL2020)」。3日目、12月9日のプレゼンテーションに参加したノルウェー科学技術大学(NTNU)の冷媒を研究するアーミン・ハフナー教授は、CO2冷凍システム設計の重要性について発表した。
統合型ソリューションを念頭に置いた開発を
「CO2システムの技術の開発に勤しむエンジニア達は、過去の踏襲ではなく新しいシステム設計にに臨まねばなりません。CO2の持つ流体的特性は技術開発の問題点ではなく、活用すべき資産なのです」(ハフナー氏)
こう明言した上で、ハフナー氏はCO2の持つ有用な熱特性を余すことなく利用できるように、CO2冷凍システムを設計するプロセスについて言及する。「つまり、あらゆるCO 2蒸発器は過熱せずに運転される、ユニット付近に熱需要があえば熱回収ソリューションを採用されるべきなのです。特に家庭用の温水生産は、CO2システムに常備すべき機能と言えるでしょう」
本年の「GL2020」にとって、 HVAC&Rにおける (冷凍、加熱、冷却および温水生産を含む)すべての熱エネルギー需要を供給できる統合型冷却システムが、大きなテーマのひとつと言えただろう。
9日のプレゼンテーションでは、MultiPACKプロジェクトを代表する研究者達が、統合型CO2冷凍システムを備えたイタリアの2つのスーパーマーケットの年間比エネルギー消費量の数値を発表した(MultiPACKプロジェクトは、5年前にEUで主催された統合型CO2冷凍システムの導入支援を行うイニシアチブであり、EUの「Horizon 2020プログラム」により資金提供を受けている)。
別のプレゼンテーションでは、2019年1月1日〜12月31日まで行われた、スウェーデン・ストックホルム近郊のスーパーマーケットでのフィールドテストについて発表された。同小売店では、熱回収・地熱貯蔵の統合型ソリューションを盛り込んだトランスクリティカルCO2ブースターシステムを採用している。
「店舗には、それぞれ220mの深さの8つのボアホールが冷凍ユニットに接続されており、熱需要が完全にカバーされるよう設計されています」と、スウェーデン王立工科大学で熱力学・冷凍部門を専攻し、博士課程を持つソティリオス・タナスーラス氏は紹介。これらのボアホールは、熱需要のカバー以外に空調・冷凍サイクルの過冷却にも活用されていると説明した。
フィールドテストでは、冷媒の蒸発温度である中温帯(約0°C)でのCOPは、最大8.5を記録。また24〜26°Cの水戻り温度の暖房システムは、COPが最大7.5となった。