ドイツ政府の国際協力事業実施機関であるGIZ(Gesellschaft für Internationale Zusammenarbeit)が発表した研究によると、スプリットエアコン(AC)でHFCから炭化水素などの低GWP冷媒への切り替えに関する技術およびコスト差は、非常に少ないということが判明した。
英国を拠点とするコンサルタント会社、Re-phridgeの共同経営者であるダニエル・コルボーン博士による研究「Can refrigerants with a GWP below 150 be used for split air conditioners in Europe?(ヨーロッパでGWP150以下の冷媒を分割型エアコンに使用できるか)」による、低GWP冷媒を使用した家庭用可逆式空調システム(RACS)のコストに関する主な調査結果は以下の通りだ。
- R410Aからプロパン(R290)への切り替えは、コスト差がほぼない可能性が高い。
- R32からR290への切り替えは、材料費の増加が少ない(10ユーロ=約1,447円未満)
- R410Aからプロピレン(R1270)への切替は、費用便益をもたらすと思われる。
- R32からR1270への切り替えは、材料費の増加はごくわずかであると思われる(5ユーロ=約723円未満)。
「すべての場合において、その変動はRACSの小売価格の1%未満」と本研究は結論付けている。Green Cooling Initiativeの出版セクションで入手できるこのレポートは、低GWP冷媒の使用に焦点を当て、特にR1270とR290などを対象に調査している。
スプリットACは、R410Aのような高GWP冷媒やR32のような中GWP冷媒から移行し、自然代替品の使用を増やす方向に向かっている。スプリットシステムに、R32の代わりにR290を採用することで、最大0.12℃の地球温暖化を回避することができるという。

さらに、報告書では次のように強調する。
- すべての代替冷媒は、改訂されたIEC規格の充填量制限内で、RACSの全容量範囲と12までのすべての季節エネルギー効率比(SEER)、さらに平均的~非常に高い熱負荷に対して使用可能である。
- R1270とR290の両方が代替可能で、前者はLFL(低燃焼性レベル)が高いため、10kW以上の容量に優先される。
- R32と比較して、R1270とR290は追加材料が必要だが、このコストは比較的小さく抑えられる。R1270とR290の安全機能追加にかかるコストも、特に高効率の製品を考慮した場合、決して高くはない。
- 追加材料の使用に伴う温室効果ガス排出量、特にGWP150を超える冷媒の生涯排出と比較するとごくわずかだ。
- R1234yfは、材料の質量が大きく価格も高いため、R32と比較して総合コストは高い。欧州炭素取引スキームのコストよりも高く、実現可能性に疑問があることが示唆される。
この結果は、欧州委員会が行ったスプリットACにおけるフッ素系ガスの代替品に関する分析を発展させたもので、各国の建築基準法がこの分野における低GWP天然代替品の展開を阻害していることが明らかになった。「R290ユニットは優れたエネルギー効率を提供し、大規模に生産・販売されればなくなる可能性の高い、非常に緩やかな価格上昇で利用できる」と、欧州委員会の分析は結論づけている。
Haierは「Chillventa 2022」において、2023年時点で欧州で販売される予定のR290ベースシステムを発表した。このシステムは、欧州ですでに同技術を販売しているMideaとClivetの両社と競合することになる。また、ドイツのフラウンホーファー研究機構(ISE)では、わずか124gのプロパンで最大12.8kWの暖房を可能にするヒートポンプシステムを開発中だ。
参考
GIZ Study Finds Minimal Cost Difference Between Use of Hydrocarbons and F-Gases in Split ACs
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
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