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【ATMO Europe Summit 2022】独NGO、HFO使用を「負担の転嫁」と批判

2022年11月15日、16日とブリュッセルで開催された「ATMOsphere (ATMO) Europe Summit 2022」にて、ドイツNGO、Deutsche Umwelthilfeのフッ素化温室効果ガスプログラムマネージャー、クリスティン・ルーツケンドルフ氏は世界がFガスから環境配慮型の冷媒技術へと移行する中、HFOを選択することは「負担の転嫁」に過ぎないと批判した。

 

その上で、ルーツケンドルフ氏は、「一つの問題を次の問題に置き換えるようなことはやめるべきです。時間がありません。自然冷媒は唯一の未来志向の選択肢なのです」と付け加えた。

HFOの規制

ルーツケンドルフ氏によると、HFOが環境と健康に与える長期的な影響について懸念と証拠が高まっているにもかかわらず、新しい技術ではHFOが「非常に多く」使用されているという。こうした化学物質の研究開発には何百万ドルも費やされており、メーカーは顧客に将来性のある解決策を約束する一方で、リスクを軽視していると批判した。

 

ルーツケンドルフ氏は、HFOの使用は将来的に禁止されると確信する一方で、国際社会がそれを実現するのにどれだけの時間を必要とするか懸念している。

 

現在、HFOは欧州のFガス規制や段階的削減計画の対象になっていないため、欧州化学機関(ECHA)は2023年1月に、REACH(化学物質の登録、評価、認可、制限)の下で対処することを計画している。

 

特に、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンのEU加盟5カ国は、PFAS(パーフルオロアルキル物質)を化学グループとして制限するREACHの提案を準備しており、多くのHFCやHFO、HFO分解物のトリフルオロ酢酸(TFA)も対象となる予定だ。

 

「REACHは素晴らしい規制だが、膨大で時間がかかり、抜け穴も多いです。REACHを待っている時間はなく、予防原則を適用しなければなりません」(ルーツケンドルフ氏)

自然冷媒を支持するドイツ

ルーツケンドルフ氏によれば、強力なFガス規制は将来的な方向性は自然冷媒であるというシグナルを送ることに他ならないという。その上で、同氏はHFOを経由して回り道をしている時間はないと断言した。

 

ドイツでは、PFAS規制の提案に加えてEUのFガス規制案を支持し、環境庁(UBA)はTFAの暴露リスクに関する研究を行っているという。ドイツ政府は現在、ヒートポンプの導入を支援している効率的な建物への連邦政府助成金を改定している。

 

現在の補助金制度では、ヒートポンプを導入する際に40%の補助金が支給されるが、改正案では自然冷媒を使用したヒートポンプに5%のボーナスが追加される可能性がある。別の改定案では、2030年から自然冷媒を使用したヒートポンプにのみ補助金が支給され、エネルギー効率に関するいくつかの要件が設けられる可能性もあるという。

 

Deutsche Umwelthilfeは、欧州のヒートポンプにFガスが大量に蓄積されるのを避けるため、今のスピード感をさらに早めたい考えだ。ルーツケンドルフ氏は、自然冷媒の採用を支援する補助金に加え、Fガス使用技術への補助金を廃止する必要性を強調した。また、自然冷媒に関するトレーニング、規格の改訂、気候変動にやさしい技術を提唱する「勇敢なフロントランナー」の存在が重要だと述べた。

参考

German NGO Describes Use of HFOs as ‘Burden Shifting’
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

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