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独・フラウンホーファー研究機構、低充填R290ヒートポンプの効率記録を更新

ドイツ・フライブルクにあるフラウンホーファー研究機構の太陽エネルギーシステム研究所(ISE)は、124gのプロパン(R290)、すなわち9.7g/kWだけで12.8kWの能力を発揮するヒートポンプを実現。効率の新記録と呼ぶにふさわしい結果を残したと発表した。

 

この記録は、低充填R290ヒートポンプの効率と能力を向上させることを目的とした「LC150(Low Charge 150g)プロジェクト」と呼ばれる、複数の関係者が参加する取り組みの結果得られたものである。10月にドイツ・ニュルンベルクで開催された見本市「Chillventa 2022」のブースで、このプロジェクトの成果と冷凍回路が公開された。

 

「LC150プロジェクト」の目標は、R290ヒートポンプで15〜30g/kWの加熱能力を達成することだったが、実際に達成された記録値は、これよりさらに低いものとなった。プロジェクトでは、これまでに26台の試作機が作られた。試作機は1日24時間、2週間にわたってテストスタンドで測定を実施。このうち14台が、測定テストを通過した。最適な部品配置を行った装置は、12.8kWの暖房能力をわずか124gのR290充填量で達成したという。

市場投入はまだ先

この記録的な冷凍回路は、自動車用の半密閉式コンプレッサーを使用したため、このままでは市場には出せない、とISEは説明する。最終的には冷媒量を少し増やし、熱交換器もわずかに大きくして、よりバランスの取れたシステムを実現する予定だ。「研究チームは、『LC150プロジェクト』の目標である出力8~10kW、冷媒最大充填量150gの冷凍回路が、実際の運転条件下でも達成できると確信しています」(ISE)

 

これまでの試験で2番目に優れた冷凍回路も、164gのR290で加熱能力8.1kWを記録。このユニットのコンプレッサーは、従来の完全密閉型コンプレッサーが使用されている。

 

2020年12月の発表会で、ISEの暖房・冷房技術部部長レナ・シュナベル氏は「このプロジェクトを通じて、とメーカーや我々、部品メーカー間のネットワークが強化され、欧州市場の低充填自然冷媒ヒートポンプの生産を加速させる一助になれば幸いです」と述べている。

冷媒を削減するための部品の最適化

研究チームは、冷媒量を減らすために、コンプレッサー以外の部品も調整した。熱交換器は、内部容積や必要なオイルの量を削減。センサーなどの追加部品も、最小限に抑えている。配管もできるだけ短くし、内部容積を小さくしている。

 

「LC150プロジェクト」は、ドイツ連邦経済・気候保護省の資金援助を受けており、2023年3月まで実施される。研究者たちは、将来的により少ない労力で冷媒削減型ヒートポンプを設計することを目指す。このため、スペインのバレンシア工科大学では、シミュレーションによる予測のためのツールを開発している。

参考

Fraunhofer Researchers Say Low-Charge Propane Heat Pump Sets Efficiency Record
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

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