ドイツ環境庁(UBA)は、259ページにわたるHFOの環境への影響に関する調査報告書を発表。報告書内にて、HFOを自然冷媒などより持続可能なソリューションに置き換えるべきであると結論づけ た。
HFOの将来的な影響に言及
報告書「Persistent degradation products of halogenated refrigerants and blowing agents in the environment: type, environmental concentrations, and fate with particular regard to new halogenated substitutes with low global warming potential」では、HFOの分解生成物に焦点を当てており、特にHFO-1234yfが大気中でトリフルオロ酢酸(TFA)に変換されることを指摘。
大気中のTFAは降雨によって地上に降りるが、報告書では雨水に含まれるTFAの濃度が高いと説明する。TFAは環境中に残留し、地下水や飲料水からの除去が困難である。UBAは報告書の中で、HFOをHFCの代替品として使用することは、問題があると考えなければならないと結論づけた。HFO冷媒、発泡剤、エアゾール噴射剤はハロゲンフリーの持続可能なソリューションに置き換えるべきであり、自然冷媒を用いた代替品を促進するべきであるとした。
本研究では、2050年までのHFOの「将来の最大使用量と排出量」をモデル化。その予測によると、将来、特に移動式および据置式エアコンからの冷媒HFO1234yfの排出が、大気中のTFAまたはトリフルオロアセテートの量に大きな影響を与えるとした。同モデルは、ドイツで初めて実施された2018年2月〜2020年3月までの2年間のTFA測定プログラムに基づく。
欧州の自然冷媒規制に対する動き
2021年5月初頭、ベルギーのブリュッセルを拠点とするNGO、ECOS(Environmental Coalition on Standards)は、欧州委員会(EC)に対して、HFC代替冷媒(HFOを含む)の直接的な地球温暖化効果、製造過程や大気中の分解生成物による気候への影響を考慮した「ライフサイクルGWP」を評価するよう求めた。
また、ドイツのカールスルーエに本社を置くコンサルティング会社Refolution Industriekälte GmbHが2月に発表したレポートによると、TFAの長期暴露は人間の肝臓や甲状腺機能にダメージを与える可能性があるという。Refolutionは欧州連合(EU)当局に対して、2022年から新規設備で使用する冷媒を、自然冷媒のみにすることを事実上認めるよう求める署名活動をchange.orgで開始した。
2018年、ノルウェー環境庁がTFAの環境への影響について委託した報告書は、TFAの環境への最終的な影響を判断できるようになるまでに、多くの「知識のギャップ」に対処する必要があると提言。一方、米国のHFOメーカー Chemoursの広報担当者は、2018年に「HFOの継続使用によるTFAの将来予測レベルは、水生生物や人間にとって無視できるリスクであると判断している」と述べ、HFOの使用を擁護している。