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COP26で使用の冷蔵庫、HFC採用で議論

英国グラスゴーで開催された気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、過去2週間に渡って使用された業務用冷凍機に、高GWPの冷媒が使用されていたことが判明した。温室効果ガスの排出量を削減するという会議の使命と、開催国である英国政府のカーボンニュートラルの目標に反する行為として、議論を呼んでいる。

ブルーゾーンに設置されたHFC冷蔵庫

COP26の「ブルーゾーン」(主要会議場)に設置された移動式のガス冷蔵庫が発見されたことは、Gizmodo.comによって初めて報じられた。同サイトのレポートでは、COP26で撮影された冷蔵庫のラベルの写真が掲載されており、飲料やサンドイッチが陳列されているオープンショーケースにはR449A(100年GWP 1,400、20年GWP 3,100)が、冷蔵庫にはR452A(100年GWP 2,141)が使用されていたという。

 

どちらの冷媒も、約4分の1がR-1234yf(HFO-1234yf)で構成されている。同冷媒は大気中でトリフルオロ酢酸(TFA)に変化し、降雨によって地球上にもたらされるが、耐久性の高い化学物質であり、欧州では規制の対象となる可能性があると指摘されている。また、時間の経過とともに人の健康や環境に悪影響を及ぼす可能性があると考えられている。

 

ケースに貼られたラベルによると、2台の冷蔵庫は英国・ユートクセターのLowe Rental社が供給したもので、オープンショーケースはイタリアのDe Rigo Refrigeration社が製造したものだ。

 

米国環境調査エージェンシー(EIA)の気候変動担当、アビプサ・マハパトラ氏は、Gizmodo.comに対して次のように述べている。「気候変動に関する会議で温暖化係数の高い冷媒を使うことは、燃えている家にガソリンを注ぐようなものです。この行為は、英国政府が環境問題を前へ進めることを軽視していることを明らかにしており、二酸化炭素排出量削減をうたう同会議の信頼性を失墜させる行為です」

 

sheccoが運営する「Hydrocarbons21.com」では、COP26では市場で広く普及しているR290内蔵型ショーケースを代替として採用できたのではと、マハプトラ氏にメールで質問した。

 

「De Rigo Refrigeration社は、R290ユニットも製造しています。今回のCOP26では、Fガスの削減は主眼ではありませんでしたが、持続可能な冷房をテーマにした会議が多く開催されました。一部の国では、温室効果ガスの排出量を削減するための計画であるNDC(国家確定拠出金)にHFCの削減を盛り込んでいます。さらに、COP26に参加した多くの国は、今後25年間でHFCを全世界で段階的に削減することを定めたモントリオール議定書のキガリ修正案を批准しています。

 

COP26の期間中、内蔵型ショーケースであれば冷媒漏えいも最小限に抑えられるでしょう。しかし、HFCの場合、使用中はもちろん製造時や廃棄時にも、冷媒漏えいにリスクを負うこととなってしまいました」

 

同氏は明言こそなかったものの、HFCショーケースを選択した今回の会議の判断は、誤りであったことをにじませた。

COP26の「カーボンマネジメントプラン」

COP26における温室効果ガス排出を最小限に抑えるための取り組みは、英国政府の委託を受けたコンサルティング会社、Arup社が作成した「カーボンマネジメントプラン(CMP)」に記載されている。CMPでは、英国が「カーボンニュートラルなCOP26を実現することを約束する」とし、その目標を達成するための方法を説明している。

 

報告書によると、COP26会期中における温室効果ガス排出量の大部分は国際航空からのものであり、「ベースライン・フットプリントの約60%に相当する」と推定。それ以外には、以下のような項目で温室効果ガス排出が見られたとした。

 

  • 代表者や参加者の宿泊施設
  • イベント期間中の警察・警備
  • イベント期間中の会場への往復交通費
  • 会場のエネルギー、水、廃棄物の管理
  • 会場のエネルギー、水、廃棄物の管理
  • 仮設会場の建設と資材の輸送
  • 会場でのケータリング

 

冷蔵分野に関しては、CMPでは「会場のエネルギー、水、廃棄物、ケータリング、COP26期間中の冷媒排出量」に該当すると、ARUPの報告書では触れられている。報告書では、COP26は「実現可能な範囲でGHGの影響の規模を縮小する機会を革新、模索、特定、実施するために、デリバリーパートナーやサプライヤーと協力することを含めて、通常通りのアプローチで排出量を回避、削減する」ことになると言及。同社に対してHFC冷蔵ショーケース採用の見解を取材したが、コメントは現在まだ得られていない。

参考

Fridges Used at COP26 Incorporated High-GWP HFCs
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

 

原著者:マイケル・ギャリー

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