国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年8月9日に発表した「Climate Change 2021 – The Physical Science Basis(気候変動2021 物理科学の基礎)」の報告書内で、炭化水素(R290)の地球温暖化係数(GWP)を初めて公式に発表した。公表されたR290の20年GWPは0.072と、従来の想定よりもはるかに低い値とされている。
R290、R32の数値が変更
報告書によると、R290の20年GWPは0.072、100年GWPは0.02という数字となった。なお、R600の20年GWPは0.022、100年GWPは0.006である。従来、R290のGWPは化学式に3つの炭素原子(C)が含まれていることから、「3」とされてきた。今回発表された数値は、従来の想定値よりもはるかに低い。
報告書で見られた変化は、炭化水素にとどまらない。炭化水素と競合するHFCの1つであるR32は、従来100年GWPが約675とされていた。これはEUで2025年1月1日から施行される新しい単式スプリット型空調システムのGWP制限値750を下回っている。しかし、IPCCの新しい報告書ではR32の100年GWPは「771」に変更。2025年以降、R32採用の同システムが使用できなくなる可能性が濃厚となった。IPCCの報告書では、R32の20年GWPは2690とされている(20年GWPと100年GWPの議論について)
同報告書では、人間活動による温室効果ガスの排出は、1850年から1900年にかけて約1.1℃の温暖化に関与していることが示されている。今後20年間で、地球の平均気温は1.5℃以上上昇すると予想された。温室効果ガスの排出量を直ちに、迅速かつ大規模に削減しない限り、温暖化を1.5℃近く、あるいは2℃までに抑えることは不可能である」と述べています。
参考
IPCC Includes GWPs for Hydrocarbons in New Report
原著者:タイン・スタウスホルム
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