2021年7月14日、欧州委員会(EC)は2030年に欧州圏のCO2排出量を55%削減することを目的とした13の立法提案を発表。「Fit for 55」と名付けられたこのパッケージは、2019年末に発表される「欧州グリーンディール」の一部だが、その中には冷暖房業界に影響を与えるいくつかの提案が含まれている。「Fit for 55」に含まれるHVAC&R関連の提案には、以下の内容が盛り込まれている。
エネルギー効率指令の改定
2012年にEUは、2030年までにエネルギー効率を少なくとも32.5%向上させる目標を設定し、2020年までに20%の暫定目標を設定した。これらの目標には現在拘束力はないが、新提案では拘束力を持たせることとなる。
さらに、2019年に行われた評価にて、現在の計画では目標を達成できないことが判明している。今回の改定案では特に、エネルギー効率の高い地域冷暖房の定義について検討されている。
炭素調整メカニズム
新しい提案では、企業がより低い生産コストを求めて生産拠点を圏外に移転することによる環境ダンピング、すなわちカーボンリーケージを防ぐことを目的とする。この提案は電力、鉄鋼、鉄、アルミニウムなどの商品を対象している。
再生可能エネルギー指令の改正
建築物に使用する再生可能エネルギーの、最低レベルを引き上げることなどを目的とした提案。EUが2050年までに「ネット・ゼロ」の目標を達成するためには、エネルギーミックスにおける自然エネルギーの大幅な増加が必要である。現在、再生可能エネルギーは約20%だが、約38〜40%まで増やす必要があるとECは試算。
本改定案ではどのようなエネルギー源が自然エネルギーに該当するかについても検討されており、バイオマスからのエネルギーや、その生産による環境への影響が懸念されている。加えて廃熱やその他のカーボンニュートラルな燃料の使用を建物内で促進する方策も検討されている。
EUの排出権取引の改革
EUの排出権取引制度は、EUが排出できるCO2の総量に上限を設け、企業が排出許可証を売買する制度である。現在の上限は、旧来の40%の排出目標を達成するために設定されている。ECは新しい「55%」削減目標に合わせて総排出量を調整することを計画しており、これは排出許可証の数を減らすことを意味する。