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EU、Fガス規制案を発表。アンモニアに門戸を開く

欧州委員会(EC)は2022年4月5日、EUにおけるHFCの使用をさらに抑制し、アンモニアなどの自然冷媒にチャンスを与える方策を盛り込んだ、待望のFガス規制の更新案を発表した。

より精力的にFガス削減を目指す

本案の主要部分には、2024年以降のHFCの段階的削減の加速(2048年までにHFC使用量を2015年基準の2.4%まで削減)および施行と実施の改善が含まれている。Fガス規制の提案は、特定の適用除外を廃止し、EUのHFCの段階的削減をモントリオール議定書のキガリ改正に完全に一致させるものとなっている。

 

本規制案では、GWP750以上のFガスを使用する12kW以上の能力を持つスプリットエアコンやヒートポンプ機器の使用が禁止される。この禁止事項には、アンモニア冷媒システムに置き換える可能な産業用システムも含まれている。

 

ヒートポンプに関しては、現在稼働しているFガス使用のヒートポンプ機器は、漏えいリスクや機器整備、機器廃棄時のFガス排出などにより、将来にわたって直接GHG(温室効果ガス)排出につながると警告する。こうした各種機器を可能な限り避けるべきという観点から、本提案では特定製品の禁止が提案されているのである。

 

Fガス規制案は、いわゆる「2014年版」のFガス規制を廃止する形で試行されることとなる。ECは提案の策定にあたり、外部コンサルタントによる提案を考慮し、評価結果が2021年5月に発表された。Fガス規制案と同時に、ECはオゾン層破壊物質(ODS)規制の更新案も発表した。両案は、今後欧州連合理事会、欧州議会およびECによって、約1年半のプロセスで交渉が行われる予定である。

 

「欧州連合(EU)は数十年にわたり、フッ素系ガスとオゾン層破壊物質に関して世界で最も野心的な政策をとってきたました」と、ECのフランズ・ティマーマンス副総裁(欧州グリーンディール担当)は声明で述べている。

 

ティマーマンス氏は、自然冷媒システムにも言及。環境配慮型の技術をより広く利用できるようにすることは、EUの長期気候目標達成に貢献し、欧州以外の国々にもFガス、オゾン層破壊物質の使用削減を促すだろうと話した。

EIAの批評

しかし、ロンドンに拠点を置く環境調査機関(EIA)は、新提案が重要な気候変動目標の達成には不十分であることを明らかにした。

 

EIAの気候キャンペーンリーダーであるクレア・ペリー氏は、声明の中で「この提案は、HFCsの使用を廃止するには十分ではありません。提案を大幅に修正されない限り、気候変動対策がまた遅れ、失われる10年となってしまうでしょう」と述べている。

 

特に、HFCを使用した新しい冷凍機、ヒートポンプ、空調機器の使用禁止に関して、この規制案は十分に積極的ではないとEIAは考えている。10年前のECの調査によれば、「これらの部門は、すでに気候変動にやさしい代替品に移行できるはずだ」とEIAは述べている。

 

この問題は、ロシアのウクライナ侵攻により、新たな緊急性を帯びてきた。ECは、ロシアからのガス依存を減らすために、2030年までに3,000万台の新しいヒートポンプを導入することを計画している。

 

「改正Fガス規制には、これらのヒートポンプがHFC冷媒の使用を固定化し、気候変動に関する法律と別の法律を事実上戦わせることがないようにするための強固な措置が含まれていることが重要です。気候変動に優しい自然冷媒は、ヒートポンプ市場のかなりの割合を占めるので、議会と理事会がそれを実現するビジョンを持っていれば、気候変動にも対応可能でしょう。2027年での禁止令の発効を待つ必要はないのです」(ペリー氏)

 

EUのFガス規制を受けて、デンマークでは多くの地域暖房プラントに、化石燃料の代わりにアンモニアヒートポンプを採用している。

 

ブリュッセルに拠点を置くECOS(Environmental Coalition on Standards)は、改正規則が2031年までに六フッ化硫黄(SF6)を廃止することを歓迎しつつも、より迅速な廃止を支持している。中電圧スイッチギアにおけるSF6の代替物質は、2022年2月にSchneider Electric社と開催したATMOsphereのイベントにて既に発表されており、ECの外部コンサルタントからもその使用が提案されていた。

CO2e排出量のさらなる削減

Fガスは現在、EUの温室効果ガス総排出量の2.5%を占めている。ECは、提案されているFガス規制によって、現行法で予想される削減量を超えて、2030年までに4,000万トン相当のCO2e排出量を削減し、2050年までに3億1,000万トン相当の追加削減に到達すると述べている。フッ素系物質を使用するシステムは、アンモニアや炭化水素などの自然冷媒で稼働するシステムに置き換える可能だ。

 

これを実現するために、本提案はHFCの段階的削減のための割り当て制度を強化し、2015~2050年の間にEU市場に新たに投入されるHFCの潜在的な気候への影響を、98%削減するとECは述べる。

 

ECは、この提案により税関や監視当局が輸出入を管理しやすくなり、違法なFガスや機器の取引を取り締まることができるようになると述べている。また、罰則もより厳しく、より標準化されるとする。割当制度は、より厳しい登録規則と固定割当価格の導入により、本物のガス取引業者に限定される。

 

さらに、対象となる物質や活動の範囲が広がり、データの報告や検証の手順も改善される。

 

EU Fガス規制案とともに、ODSに関するECの新しい規則案もまた、EUの気候目標に貢献することが期待されている。この改正版で、ECは2050年までに1億8,000万トンのCO2eと3万2,000トンのオゾン破壊係数(ODP)相当の排出を防ぎたいと考えている。より高い目標、近代的な管理システム、監視と執行の改善などが、この文書に示された主な修正点である。

参考

EU Releases Proposed F-Gas Regulation, Opening Doors for Ammonia
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

 

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