ワシントンD.C.に拠点を置く環境調査エージェンシー(EIA)は、米国環境保護庁(EPA)に対しHFC許容量規則案が業界の反対者によって水増しされないようにすることで、米国内にHFCの闇市場が作られるのを防ぐよう求めていることを、同局ウェブサイトのブログ記事にて公開した。
一握りの企業への批判を明言
同記事は、オバマ政権下のEPA執行・コンプライアンス保証局のシンシア・ジャイルズ副局長と、米国EIAのアレクサンダー・フォン・ビスマルク専務理事が執筆したものある。EPAは2021年5月19日、HFCの排出枠などを対象としたルール案を発表。今月中に最終決定される予定であるこの規則は、HFCの生産と消費を2036年までに85%段階的に削減することをEPAに許可した、米国革新製造法(AIM)を実施するためのEPAの第一歩となる。
ブログ内にて、著者は国境でのリアルタイムチェック、使い捨て容器やQRコードの禁止など、提案されているルールは「課題に見合ったもの」と捉えていることを綴り、「不正行為を行うことをはるかに困難にし、不正行為者を発見してその責任を追及することをはるかに容易にする」ものと評価する。
一方で、EIAは企業名こそを明記しなかったものの、「一握りの企業」がこの規則に反発していることに言及。反対派は目先のコストを理由に、規制強化に反対しているという。ジャイルズ氏とフォン・ビスマルク氏は、「今、数ドルを節約しようとする彼らの近視眼的な考えは、この待ったなしの規制による気候上の利点を押し流してしまうような、闇市場への水門を開いてしまうだろう」と記事で批判する。
フロン類市場との比較
両氏はHFCの大規模な違法取引の可能性を、1990年代のCFCの状況と比較。米国における違法CFCの末端価格がコカインの価格にほぼ匹敵していたことを指摘する。
EIAによると、ヨーロッパの市場では違法なHFCの輸入量が、すでに合法的な供給量の約30%に達していると推測する。この状況は、規制が強化されればされるほど悪化することが予想されるとし、もし米国がEUに追随するとすれば、米国の道路に少なくとも1,200万台の自動車を追加することに相当する量のHFCが、市場に出回ると指摘する。
両氏は記事を通じて、「EPAはHFC規制を堅持しなければならない」と強調。
もし最終規則が一部の人たちの短期的な好みに合わせて遵守強制規定を弱められれば、我が国は間違いなくヨーロッパが現在直面しているのと同じ、CFCの再来のごとき失敗に直面することになるでしょう。
そうなれば、闇市場の暴走した気候への影響を抑制することは不可能となります。EPAは正しい規則案を提示しました。これを堅持することを望みます。
シンシア・ジャイルズ氏、アレクサンダー・フォン・ビスマルク氏
EIAは4月、EPAのマイケル・S・リーガン長官に書簡を送っている。HFCの使用を禁止するために「最も野心的で効果的な方法」で、AIM法の下で与えられた新しい権限を使用するよう、EPAに要請するといった内容だ。この意見は、9月の最終決定でどう反映されるだろうか。
参考
EIA Calls On U.S. EPA to Prevent Black Market in HFCs By Holding to Proposed Rule
原著者:タイン・スタウホルム
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