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EU、Fガス増加も「削減は順調」と発表

2020年までの5年間で、EU全体ではFガス供給量が年間1%増加し、HFCの消費量も7%増加。にもかかわらず、EUのHFCの供給量はFガス規制の割当量を4%、モントリオール議定書キガリ改正で定められた最大消費量を52%下回っていると発表された。

低GWPへのシフトは順調と報告

この発表は、欧州環境機関(EEA)が2021年12月2日に発表した2021年版フッ素系温室効果ガス報告書の、主要な調査結果のひとつである。同報告書には、2007〜2020年までのフッ素系温室効果ガス分野を分析した、エグゼクティブブリーフィングとデータセットおよび数値の附属書が含まれる。報告書では、代替冷媒の需要は依然として高いものの、「地球温暖化係数(GWP)の低い代替品へのシフトが進んでいる」とされている。

 

報告書のデータによると、EU市場に供給されるFガスの量は、78,307tから78,825tへ約1%増加している。モントリオール議定書の削減対象であるHFCのEUでの総消費量は、7,440万トンCO2eから約7%増の7,940万トンCO2eだった。本報告書では、EUにおけるFガス排出量の90%以上がHFCであり、HFCの主な用途は冷凍・空調であるとしている。

 

このような供給と消費の増加にもかかわらず、HFCの供給量が2020年の総割当量を4%下回ったという結果は、「EUはEU Fガス規制のHFC段階的削減の下で軌道に乗っている」ことを意味すると報告書は述べる。さらに、「数少ない割当量超過が見られた輸入業者に関しては、割当量以下の使用にとどまった企業とで相殺されている」と付け加えている。

 

さらに、報告書では利用可能なHFC割当量が需要を十分にカバーできていないため、HFC段階的削減に基づく冷凍・空調・ヒートポンプ機器の輸入をカバーできる割当許可の予備が増え続けていることに言及。現在の予備軍の規模は、2020年に輸入される当該機器の約7倍、または2021年のEUにおけるHFCの最大数量の111%を占めているという。

 

注目すべきは、GWPが非常に低いHFOとHCFCの供給量が5%減少し、HFC供給量の約30%と2018年のレベルに近い状態で安定していることである。

 

EUにおけるHFCの価格は、世界市場よりも大幅に高い状態が続いており、需要の抑制に役立っている。しかし報告書では、Fガスの供給量を完全に把握する上で大きな障害となっている、安価なHFCのEU内への密輸は考慮されていない。報告書によると、こうしたHFCを定量化することは現時点では不可能であるため、データには含まれていないとされている。

再生・破壊HFCの数量も報告

「再生Fガス」として報告された数量は、2019年と比較して2020年には約6%増加。そのうち再生HFCは約7.5%増加した。再生HFCは現在、EUでのHFC生産量の11%、かつEUのHFC供給量の3%を占めている。一方で、破壊されたFガスの量は、前年(2019年)に2倍以上と増加した後、2020年にはそこから約24%減少した。

 

全体として報告されている、再生Fガス利用に関する2015〜2020年までのデータによると、再生利用されているFガスは比較的少量だ。(2015年:約70万t→2020年:約160万t)。これは、同期間に市場へ供給されたFガスの平均1.6%に過ぎない。一方で、破壊されたと報告されたHFCの量も少なく、2015年以降、破壊されたFガスの量が180万tを超えた年はない(EU市場のHFC供給量は年間約7,700万tである)

参考

Despite Growth in F-Gases, EU Says It’s Meeting Quota and Kigali
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

 

原著者:トマス・トレビザン

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