ベルギーのブリュッセルに拠点を置くNGO、ECOS(Environmental Coalition on Standards)は、新たな報告にて欧州委員会(EC)に対し、HFCの代替となる冷媒の冷媒の、直接的な地球温暖化効果に加え、製造プロセス、大気中の分解生成物が気候に与える影響などを考慮した「ライフサイクルGWP」を再評価するよう求めている。
低GWPの新冷媒の「気候変動への懸念」
本報告「One step forward, two steps back: A deep dive into the climate impact of modern fluorinated refrigerants」は、EUにおけるHFCの段階的削減を整理した、欧州連合のF-Gas規則の改定案を準備するECを対象としたものである。
ECOSの報告が対象としている冷媒は、HFO、HCO(ヒドロクロロオレフィン)、HCFO(ヒドロクロロフルオロオレフィン)などの「最新のフッ素系冷媒」と、低GWPのHFCおよびそれらの混合物だ。これらは、「製造時のカーボンフットプリントと、大気中に放出された後の劣化の両方を通じて、気候変動に寄与している」という。
ECOSの報告書によると、高GWPのHFCに代わる有効な代替品として宣伝されている、低GWPのHFCやHFOの中には、R23(100年GWP 14,800)のように「代替するはずだったものと同じ物質に分解される」ものがある。HFCとHFOは、主にフッ化カルボニルとトリフルオロアセトアルデヒドに分解され、後者はさらにR23に分解される。
またECOSは、GWPを従来の100年値ではなく、20年値にするようECに求めている。 20年間のGWPは、「個々の物質が地球温暖化に与える深刻な影響をより短い期間で明らかにし、HFCsに対する迅速な行動がもたらす短期的な気候変動への恩恵を、政策立案者や一般市民に正確に伝えることができる」と、報告書では説明されている。
さらにECOSは、政策に用いられる具体的な手段や閾値は、「これらのガスのGWP値に関する知識の発展に合わせて適応する必要がある」と主張。それには、継続的かつダイナミックな見直しプロセスが必要だと結論付けている。報告書には文献調査と利用可能な公開データが含まれているが、そのなかで「メーカーによる情報開示の不足」を指摘する
自然冷媒の選択
欧州をはじめとする世界中でHFCの段階的削減が行われていることを踏まえ、ECOSは企業に対し「自然冷媒や、特に炭化水素など、真に将来性のある代替品の採用」を推奨する。ECOSは報告書にて、自然冷媒は「低GWPであるだけでなく、製造時のカーボンフットプリントも非常に小さい」と評価している。